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うちのアボカドが日の目を見た日

子どもが生まれたら何が必要なんだろう?

どのタイミングで何を買えばいいのか、なかなかイメージがわかなくて。たまひよの雑誌を読んだり、友人たちにアドバイスをもらったりしながら大きなお腹を抱えつつ、手探りで準備していたことを思い出す。

そんな私が唯一、絶対に買うと決めていたもの。

それがJELLY CATのぬいぐるみ。

イギリス・ロンドンで生まれたブランドで、ロイヤルファミリー御用達。日本でも子どもがいる人にはもちろん、出産祝いとしても大人気のぬいぐるみだ。

私も子どものためとかではなく、シンプルにそのかわいさにやられてしまって。妊娠前から自分用に購入を検討していたほど、ずっと気になっていた。

妊娠後しばらくして友人にマタニティフォトを撮ってもらうことになり、何かおもちゃなど小道具があれば一緒に撮ってもらえる……と言ってもらって。

小道具らしいものはまだ何もなかったけれど、これはもう、買いに行くしかない。

さっそくまだ行き慣れない、デパートの子ども服&おもちゃ売り場に向かった。


お目当てのJELLY CATコーナーに向かうと、そこには山積みになったぬいぐるみたち!うさぎに犬、猫、ライオン……梨や目玉焼きといった食べものまである。どれもふわふわでなんとも言えない愛くるしい表情をしていて、たまらない。

あまりの種類の多さに唖然としていたら、出産祝いを探しに来ていたのか、フロアで一際目立つ男子学生集団も近くにいて。

自分の方がアウェイに感じるくらい、彼らはホーム感を出してどのJELLY CATにしようかと、山積みになったぬいぐるみを物色していた。男子学生なのにセンスがいいな!?と感心しつつ、(私から言われても何も嬉しくないと思うけれど)彼らに負けないくらいお気に入りの1匹を連れて帰ろうと、より真剣になった。

しかし、その日は結局誰も連れて帰ることができないまま帰宅することに。

どれもかわいかったのだけれど、なんとなく自分らしさに欠けるというか。王道の動物たちではなく、せっかくなら少し変わったものに出会いたい……そんな漠然とした思いがあった。


せっかくデパートまで足を運んだというのに、オンラインストアであらためて全種類に目を通す。

……これだ。

デパートでは見かけなかった仲間たちがたくさんいる中で、私の目にとまったのは丸っこいフォルムをした、緑色のあいつ。

アボカド。

お臍のような茶色いタネも、アボカドなのにクリクリとした目やぷらぷらとした足がついているところも、なんとも言えないかわいさがある。

子どもの初めての友達になるかもしれないぬいぐるみがアボカドでいいのか?普通はもっとオーソドックスな動物なのでは?と、問いかけてくる自分もいたが、もう関係ない。私はアボカドくんにすっかり心を撃ち抜かれていた。

しかし、やっとお気に入りが見つかったというのにまさかのSmallサイズが売り切れで。

もうここまで来たら引き返せない!!!と、思い切ってHugeサイズを購入することに。そのお値段、なんと13,200円。ずいぶん高級な仲間を見つけてしまったもんだ……と怖気付きつつもポチっと購入ボタンを押して。こんな高価なぬいぐるみを買うのは初めてで、しばらくドキドキが止まらなかった。


ここまで思い入れのあるアボカドくん。さぞかし到着してすぐに我が家の主役になるであろう!と期待していたら……残念ながら、なかなか日の目を浴びることがなく。

マタニティフォトではもう一つ用意していた、うさぎのぬいぐるみの大活躍により、とうとうアボカドくんの出番はなく(そもそも大きすぎて写真には向かなかったし、うさぎも初期のスヌーピーに出てくるレアキャラで大のお気に入り)しばらく部屋の片隅でたたずむ日々が続いた。

サイズ感もちょうどよく大活躍のうさぎさん


その後数ヶ月が経って、ついに娘がこの世に誕生。しかし、生まれてまもない娘がおもちゃで遊ぶはずもなく。せいぜいカシャカシャ音が出るものに反応するくらいで、「何かを見て認識する」までには意外と時間がかかった。

変化が見え始めたのは3ヶ月になるかならないかくらいの頃。今まで無視されていたおもちゃたちを、明らかに目で追うようになっている。こ、これは……ついに彼の出番がやってきたのでは……

「でんでんでんでんでんでんでんでん……でーん!」

部屋の片隅でたたずんでいた彼を召喚し、オリジナルの効果音と共に娘の顔に少しずつ近づける。

「きゃっきゃっ」

「でんでんでんでんでんでんでんでん……でーん!」

「へへへっ」

聞いたことのないご機嫌な声と、満面の笑みで彼を見つめる娘。

夢にまで見た光景があまりにも嬉しくて、しつこいくらいに同じ動きを繰り返した。さすがに飽きたのか、最後の方は無表情だったけれど(しつこい母でごめんなさい)やっとやっと、アボカドくんが日の目を見た。

今では彼を目の前に差し出すだけで、笑顔を見せてくれるときもある。いつのまに仲良しになったんだろう……


紆余曲折を経て、我が家にやってきたアボカドくん。ただただ私の趣味で迎え入れた仲間だけれど、Hugeだったおかげで娘と同じサイズ感なところもお友達感が増して愛おしいし……全て運命だったのでは、とも思ってしまう。

今は仮称で「アボちゃん」と呼んだりもしているけれど、そもそも彼なのか彼女なのかもわからないし、名前も正式に決められていない。

いつか娘に正式に命名してもらい、いろんな思い出を一緒にたくさんつくってもらおう。

これからも末長くよろしくね、アボちゃん。



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