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Monochrome Diary 2024.4.8~2024.4.14

2024.4.8

最近、少しずつ生活がパターン化している。乱れがちだった生活リズムが、少し自分に合った形になって安定してきている。朝はそんなに早く起きるわけじゃないし、夜は相変わらず遅めに布団に入るけれど、そのくらいが1番リラックスして1日を過ごせる。決して胸を張って自慢できる訳じゃないけれど、少し前のグダグダな生活よりも1歩前進したかなと思える。少し前に観た映画「Perfect Days」が心の支えになっている。自分がやっていることが社会のためになっているのかは分からない。けれど、確実に自分のためにはなっている。今、大切にしていること、楽しみにしていることは、存分に楽しめている。自分なりに生きられている気がする。もしかしたら数年後、いや、もっと近い将来、今のままではいられなくなるかもしれない。けれど、今この時点で日々の生活に満足出来ているのは、ここ数年では自分にとっては大きなことだ。
今日は、職場でトイレ掃除をした。潔癖なところがあるので、少し前まで苦手だった。だけど、「Perfect Days」を観てからトイレ掃除が好きになっている。多くの人はやりたがらない。でも、自分がやることによってなにか報われるんじゃないかと思える。DVDが出たら事ある毎に観てしまうような自分にとって大事な作品になっていた。上映中にもう1回観れるかな?


2024.4.9

「素晴らしき世界」を観る。長期間服役していた男が、久々に社会に出る。規則に縛られた生活を送っていた人間が、自由を得た時、どういう気持ちなんだろう。これからは自分の責任で生きていかなければならない。また罪を起こさないか。間違えそうになった時叱責する存在もいない。そんなことで不安でいっぱいなのだろうか。それとも、ようやく得た自由に、羽を伸ばせるという落ち着いた心持ちなのだろうか。作中では、世間が動いていく中で、自分の立場を考えると頭が真っ白になった、という。
「長年刑務所にいた男が幼い頃に別れた母親と会う」というTV番組の制作のスタッフ津乃田との関係を始め、身元引受人の弁護士とその奥さん、スーパーの店長など、社会に出る上で身寄りがなかった三上は徐々に人に支えられていく。途中、三上はその性格と社会生活との不和が生じ、元のヤクザ者の生活に戻ろうとするものの、三上のことを思い、手を取る人々に助けられていく。

ふと立ち止まり、周りに目を向けてみる。意外と、自分の支えになってくれる人は多いのかもしれない。社会で生きることは、我慢の連続だ。それでも明るく生きようとする人がいる。不器用でも、理解されなくても、その人なりに生きていく。好機を周りの支えでようやく掴むことができ、これからというのに、無念で終わる三上。最後くらいは幸せな気持ちだったんだろうか。


2024.4.10

「Takeshis'」を観る。今まで見た映画の中で、一番目まぐるしくカットが変わり、物語が掴めない作品だった。これまで観た北野武映画は、ストーリーは割とストレートでわかりやすい。その中で、それぞれのキャラクターが立ち、展開していく。しかし、「Takeshis'」はその作品の特性上、そもそもキャラクターの色が出にくい。というのは、基本的に多くの役者が一人二役で演じる。だから、シーンが進んでいくと、どのキャラクターがどう絡んでいるのか掴みにくい。ようやく話が見えてきたと思ったら、知らぬ間に夢の中の話になっている。乱雑なおもちゃ箱の中身が散らばったような、色々なものが乱立している印象だった。少し調べてみると、監督自身も気に入ってはおらず、これまで世間で積み上げられた北野武監督作品像というものに対するアンチテーゼか迷いみたいなものが伺える。どの芸術においてもそうだけれど、孤高の作品像を持っているアーティストが1度その既成概念を崩す時、常人には理解できないものが出来てしまうのかもしれない。

2024.4.11

久しぶりに自転車で近所を走る。春の匂いがしてきた。街中に行くには河原を通るので、自然が楽しめる。青々と茂る河原の草花と緩やかに流れる川の水がとても綺麗だった。花粉症があるので、少しむずむずと気になりつつも、自転車を走らせる。もう数日で桜が満開になる。ある程度人気がる花見の場所は、人が多くて結局桜が楽しめないことが多いけど、こうやって、自転車で河原の桜を眺めながら走ることは、季節の空気を感じられていいかもしれない。


2024.4.12

思いつきで、マサラチャイを作る。ずっと前からスパイスには興味があった。小さな粒の一つが、料理や飲み物の味や風味をガラリと変えてしまう。「スパイス」というと何か難しい調合のように思えてしまう。けれど、少し調べてみると、その組み合わせ方は意外と簡単だった。考えてみれば、普段使っているわさびやからしも味や風味を変える薬味として「スパイス」の一部だ。たまに名前を聞くような「カルダモン」や「シナモン」などは、あまり馴染みがないだけで、うまく日常に組み合わせればいろんなアレンジができそうだ。


2024.4.13

「菊次郎の夏」を見る。これまでの殺伐とした北野武映画とは少し色合いが異なり明るい物語だ。今の時代では通用しないダメ男、その時代でビートたけしがコントでやっていたような無茶苦茶な発想(子供はほったらかし、ギャンブルやキャバクラに連れていく、タクシーを運転しガタガタにしてしまう、泳げると言って浮き輪をして泳ぎ溺れる)そのくせ、恩着せがましいが子供っぽくて憎めない菊次郎は、どこか「こち亀」の両さんを見ているようだった。その菊次郎と、写真でしか知らない母親を探す少年正男の夏休みの物語だ。北野武作品としての根本的な、少し織り交ぜられる「笑い」はそのままだ。競輪場で正男に番号を当てさせる場面では、立ち位置もあって漫才を彷彿とする。それから各所にいわゆるバラエティ番組のようなシーンが入り込むが、他の北野武作品のブラックジョークとは違い、明るい笑いで満ち溢れている。旅の途中、ヒッチハイクをしてカップルや陽気なバイク乗り二人、ふらふらと旅をする男と出会う。正男はこれまで経験したことのない家族とのふれあいを感じただろう。これまであまり見せなかった子供らしい笑顔を時折見せるようになっていく。
この一夏の思い出。そもそも正男は冒頭で、夏休みにいろいろなところへ出かける同級生たちを見て羨ましく思っていた。それが、菊次郎によって無茶苦茶ではありつつも叶えられていく。通してみれば、「正男の夏」だが、この映画のタイトルは「菊次郎の夏」。菊次郎自身も、正男との旅を経て何かを得たのかもしれない。
この曲が大好きだが、そういえば「菊次郎の夏」のテーマだった。あまりにも世界観が共鳴しているから、こんなにも夏を思わせる、夏といえばの代表曲になるんだなぁ。


2024.4.14

「オッドタクシー イン・ザ・ウッズ」を観る。元々、半年くらい前にシリーズ版を見た。ちょうど眠れない夜に、ちょっとした興味でとりあえず一話だけ見てみようくらいで見始めた。動物のゆったりとした雰囲気に少し刺激のあるストーリーで、夜中に見るにはぴったりでのめり込むように結局全話見てしまった。インザウッズはシリーズ版の総集編にはなるが、ストーリーの語られ方、視点が違う。芥川龍之介の「藪の中」のような、ストーリーに関わる人物からの証言を中心に語られていく。ただのアニマルセラピー的な作品だったらここまでしっかりと見なかった。けれど、そもそもなぜキャラクターは動物なのか。ただのタクシードライバーが次第に事件に関わっていく巧みな構成のストーリーが面白い。
昨日の「Summer」もそうだけど、作品に寄り添うような曲は、丸ごと好きになれる。ゆったりと時間を刻んでいくようなこの曲は。「オッドタクシー」によく合わさる。


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