昨日のこちらのnoteに関してなのですが、なんと『英文解体新書』の著者の北村一真先生からX(twitter)でmentionいただきました!
わー、すみません、1の方は何度も読んでいるのですが、続編2の方は積読状態だったので、慌ててその該当箇所を確認致しました。。
ある大手企業のテレビCMでモハメド・アリ選手のImpossible is nothing.という言葉がキャッチフレーズに用いられた際のことです。Nothing is impossible.でないと文法的におかしい、とか、CVSの倒置ではないか、といったようなやや的外れの議論がなされていたように思いますが、文脈を見ると、アリ選手はこの一文が含まれる一節を、Impossible is just a big word ...と、はっきりとimpossibleがどういう言葉かということを説明する形で始めており、続く全ての文も「impossibleという言葉(概念)」を主語としたものとなっていることが明白です。したがって、問題の文のimpossibleも、この言葉自体をmentionしたものであり、「「不可能」という言葉なんて、取るに足りないものだ」と言おうとしているわけです。
ということで、前回の私のnoteは屋上屋を架すところがあったわけですが💦、ネット上ではこちらの正しい解釈がまだ行き渡ってはいないようだったし、その後コメント欄でのやりとりも通じて情報構造への理解も深まった のでまとめる意味はあったとさせていただいて。。
ところで、上記の引用のImpossible is nothingの文脈は、私が前回のnoteで分析したadidasの広告からのものではなく、オリジナルのモハメド・アリの発言 からのもので、そちらも以下に全文を紹介します。
Impossible is just a big word thrown around by small men who find it easier to live in the world they've been given than to explore the power they have to change it. Impossible is not a fact. It's an opinion. Impossible is not a declaration. It's a dare. Impossible is potential. Impossible is temporary. Impossible is nothing. (不可能というのは、与えられた世界を変えるために自らの持つ力を探求するよりも、そこで生きる方が楽だと考える器の小さな者が投げかける大仰な文句に過ぎない。不可能は事実ではない。ただの意見だ。不可能は宣告ではない。挑戦だ。不可能は可能性である。不可能は一時的なものだ。不可能なんて言葉は何ほどのこともないのだ。)
こちらのオリジナルの全文を見ても、また私が前回挙げたadidasの広告の文脈を見ても、いずれにしてもimossibleがメタ的にmention された名詞 であることは明らかですね。
また興味深いことに、北村先生の著書の中で言及されているのですが、このuseとmentionに相当する区別自体はかなり古くから気付かれていたようで、細江逸記(1926)著の学習英文法書の古典『英文法汎論』ですでに紹介されているとのこと。シェイクスピアの『お気に召すまま』から"Was is not is."(「だった」というのは「だ」というのとは違う。)といった引用符なしmentionの用例が挙げられたりしています。
細江逸記先生がこのCMを見ていれば、ネットの議論もすぐに解決したかもしれませんね。
ということで、名前は聞いたことあるけど、どんな本なのかなあと思って、Amazonで大正時代の泰文堂の方の本を探してみたのですが、
2024年9月8日現在、古書のお値段なんと44,980円 也! 流石にこれは私には手が出ません。。 後の篠崎書林の改訂版の方でもかなりの額がついていているようです。
最後に、北村先生は英文解体新書の3を現在準備されているとのことなので、
その前に私は2を読んでおかなくては...!
【追記の追記】 ここまで書いて投稿する予定だったのですが、そのまえにいつものようにちょっと『大学入試 飛躍のフレーズIDIOMATIC 300』の音声を聴いていると、
154: Students are quick to embrace new technologies, but educators are not. They know from experience that new doen't necessarily equate with good . (生徒たちはすぐに新しい技術を受け入れるが、教育者はそうではない。彼らは経験から新しいことが必ずしも良いということと等しいわけではないと知っているからだ。)
という課題文があって、このnew とかgood って、今まさに問題にしてるImpossible is Nothing.とかEasy does it.と同じ系のやつじゃん!と気付いて驚きました。PDF特典の解説では、
これは形容詞の持つ性質に焦点の当たった言い方で、being new doesn't necesssarily equate with being goodと実質的に同じことを言っている。"new" doesn't necessarily equate with "good"のように語を引用している、というイメージでも構わない。
とあります。こんなところまでカバーしてるのか。。IDIOMATIC、おそろしい子。