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make it count / meet me at the clockの英語表現上の特徴 ━映画『タイタニック』より

上のnoteの続きになります。

船内でのディナーのシーンの終わりに、ジャック(レオナルド・ディカプリオ)はローズ(ケイト・ウィンスレット)に紙切れに書いたメモをこっそり手渡します。

make it count
meet me at the clock

ここでのitは文脈上、直前にジャックが言っていた'To make each day count'のeach day、そこからひいては「今この時」のことを指していると思われます。そしてcountは自動詞で「大切である」という意味。なので、

今この時を大切に
時計のところで会おう

くらいの意味になります。「時計」というのはタイタニック船内で階段のそばにある大きな時計のこと。

初見の時はなんてロマンチックな相引きのお誘いかしら、くらいにしか思っていなかったのですが、今回、改めてこのメモ書きの「英語表現」に注目してみると、makeとmeet、countとclockで頭韻を踏んでいるんですね!

頭韻(alliteration)というのは対応する語句の最初の子音をそろえる表現技法。英語だとdo or die「やるかやられるか」とかthe more the merrier「多ければ多いほど楽しい」といった慣用表現とか、Micky MouseやKing Kongのような固有名にも見られます。スピルバーグ監督で映画化もされた"Ready Player One"の主人公はWade Wattsと言いますが、小説版では、その名前の由来をPeter ParkerやClark Kentのようなスーパーヒーローの頭韻を意識して父につけられたと説明する件が出てきます。

My mom once told me that my dad had given me an alliterative name, Wade Watts, because he thought it sounded like the secret identity of a superhero. Like Peter Parker or Clark Kent. Knowing that made me think he must have been a cool guy, despite how he’d died.

—『Ready Player One』Ernest Cline著

さらににいうと、ここでcount「大切である」という語は「(数を)数える」という意味もあり、clockの「時計」と合わせてどちらも「時」に関連するイメージの語を選んでいるとも思われます。「大切である」だけならmatterなどでも良いのですから。

これは日本語の古文で言うところの「縁語」のような表現効果があると思います。

縁語とは、例えば、小式部内侍の、

大江山いく野のの遠ければまだふみもみず天の

といった和歌において、「道」「踏(ふ)み」「橋」が関連する意味領域(semantic field)を共有しているのでのある語句で「縁語」というわけです。

このように、頭韻や縁語といった表現技巧を駆使してロマンチックに舞台を盛り上げているのですが、それでいて使われている語句はすべて中学英語レベルで、それは婚約者のキャルがimpugnのようは難語を用いて鼻持ちならない感じになってしまっているのと対照的とも言えるかもしれません。

久しぶりに鑑賞した映画自体の感想はFilmarksに投稿したので良ければ合わせてどうぞ!

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