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【ブックレビュー】『ネイティブの真意がわかる 日本人が誤解する英語 juiceは「ジュース」じゃない?!』Mystery Parrot

以前、発売前にこちらの投稿でも気になる本として紹介していたMystery Parrot(ミスパロ)さんの新刊フレーズ集ですが、

購入して読み終えました!ということで、以下にブックレビューしていきたいと思います。


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内容としては、「日本人がよく誤解するフレーズ」「思いがけないスラングフレーズ」「日常会話で大活躍フレーズ」「アメリカ人頻用フレーズ」「人を形容するフレーズ」「微妙な感情を表すフレーズ」「ビジネスお役立ちフレーズ」の7章100表現で構成されていて、ノンネイティブにはニュアンスの理解しにくい言い回しを例文・解説付きで知れるものとなっています。表現の語源・由来まで遡り文化背景まで含めて丹念に説明されているものも多く、読み物としても楽しく学びの多い作り。語学エッセイ好きの私としては大いに堪能しました。

また私は映画鑑賞も趣味なので、ああ、このフレーズよく作品の中で出てくるな〜、これはそういうニュアンスだったのか!といった気付き・発見もたくさんありました。

一例を挙げると、最近劇場で観てきた『ジョーカー: フォリ・ア・ドゥ』の中で、監獄に収容されているジョーカー(ホアキン・フェニックス)に面会にきたリー(レディ・ガガ)が話かける第一声が、

How are you holding up?

だったのですが、一つ一つは簡単な単語の組み合わせながら、知らないとノンネイティブにはなかなか使えない表現ですよね。これは本書042に紹介されていて、逆境やきつい状況にある人に対して、「なんとか頑張ってる?」「どうにか踏ん張ってる?」と尋ねるフレーズ。この映画の場面にまさにぴったりでした。

こういった100個のフレーズ集とはまた別にコミュニケーションに役立つコラムもあって、個人的に印象深かった箇所を挙げると、「言葉に詰まったとき使いたいfiller word」の中で、

最近はAIと会話練習ができて便利ですが、AIとの会話がまだ少し機械的な印象を与えるのは、一つにはつなぎ言葉がないからでしょう。Well(まあ)、basically(実は)、I guess(思うに)、I wanted to say(私が言いたいのはね)、believe me(信じてよ)といったフィラーが全く入らない文というのは、聞き手に文語の棒読みを聞かされているような苦痛を感じさせ、興味を損なわせるのです。

といった考察があり、私も使ったことのあるAIとの会話で何となく感じていた違和感が言語化されていて、なるほどなfood for thought(本書097)でした。

また表紙にも見られるようなアメコミ風の楽しいイラストも各フレーズ毎に付いていて、こちらはカケハタリョウさんによるものとのこと。

このように基本的に美質の多い本なのですが、読んでいて気になった点にも少し言及しておきます。

冒頭「はじめに」の中でfall guyという「身代わり」を意味するフレーズを導入する際、大谷翔平選手の元通訳・水原一平氏の例の騒動に触れて、

Ippei is the fall guy for Ohtani.
(一平は大谷のfall guyだ)

とありました。

確かにこれは当時なされていた推測の一つなので用例としては問題ないのですが、その後、結果的にこれは憶測に過ぎなかったと否定されているのが現状なので、その事実は補記しておいてほしかったかなと。今後もおそらく読み継がれていく本だと思うからです。

あとできればフレーズと例文に音声と索引があればとてもありがたかったのですが、それは望蜀の類かもしれません。

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以上が私のレビューになりますが、まとめると、日常会話・映画・海外ドラマなどで使われている簡単な語の組み合わせながらネイティブらしいフレーズに関心があり、語源・文化背景まで含めた語学エッセイがお好きな方には強くおすすめできる上質な本だと思います!

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