【ブックレビュー】『マザーグース 愛される唄70選』谷川俊太郎(訳)、渡辺茂(解説)
どうしても受験や資格勉強を通じて英語を学習している場合、難しい抽象的な単語は分かるのに、ネイティブだったら子どもでもお馴染みの語句を知らなかったりする。例えば、最近でも、poach「密猟する」は分かるのに、stoat「イタチ(オコジョ)」は知らなかったりといった英検準1級の学生を見かけた。
そういったギャップを埋める方法としては、児童書を読んだり、ここで紹介する『マザー・グース』を楽しんだすることがあげられるだろう。私自身も昨年の一時期集中的に取り組んでみて、英語力の底上げを実感できたので強くおすすめします!
マザー・グースはイギリス中心に英語圏で伝わる口頭伝承を集めたもの。聖書やシェイクスピアと並んでもっとも影響力のある基礎教養の一つと言える。「ロンドン橋落ちた」'London bridge is falling down' とか「きらきら星」'Twinkle Twinkle Little Star'は日本語訳の方でも人口に膾炙している。
マザー・グースにもさまざまなバージョンがあるが、講談社バイリンガル・ブックスの本書は、70の有名詩とそれぞれに詩人・谷川俊太郎の日本語訳、英語学者・渡辺茂の解説が付いている。
例えば、冒頭の'Pease Porridge Hot'。
「おかゆ」のporridgeなど試験にはあまり出ない語彙だから、馴染みのない学習者も多いのではないだろうか。
またSome like hot porridgeではなく、likeをSVOCの第5文型で使い、Some like it hot.という語順になるのは文法の良い勉強。
ちなみにこのフレーズはビリー・ワイルダー監督、マリリン・モンロー主演の有名映画タイトル『お熱いのがお好き』"Some Like It Hot"(1959)の元ネタともなっている。
さらにこういったマザー・グースの詩をYouTubeで検索すると、
といった風に、Nursery Rhymeの動画がたくさん出てくる。基本子ども向けだから聴き取りやすい発声であることが多く、韻が多用された詩でリスニングや発音の感覚を磨くことができる。
またこの動画で言えば豆のpeaseが現代英語のpeasになっていたりするが、そういった新旧の改変点に着目すれば英語に対する見識も広がるだろう。
『鏡の国のアリス』のハンプティ・ダンプティ(Humpty Dumpty)、『トイ・ストーリー』のボー・ピープ(Bo-Peep)、ビートルズや伊坂幸太郎のゴールデン・スランバー(Golden Slumbers)などなどいろんなネタ元がマザー・グースの中にはちりばめられているので、あ、これもマザー・グースだったのか!という発見ができるのもまたマザー・グース学習法ならではの悦びと言えるだろう。
童心を楽しみつつ、英語圏で育てば自然に触れられているが日本人学習者としては抜けがちな
「基礎」からの英語力を強化するにはうってつけの学習法なので、機会があれば是非お試しあれ!