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実はいろいろtake care of〜! ━『パルプ・フィクション』と『大学入試 飛躍のフレーズ IDIOMATIC 300』より

今話題の新刊学習参考書『大学入試 飛躍のフレーズ IDIOMATIC 300』を読み進めているのですが、

その中の072の課題文でtake care of Xが取り上げられていました。昔の話で恐縮ですが、私が田舎の公立中学校ではじめて「熟語」(「イディオム」といっていたかも)なるものを知ったのがこのtake care of 〜「〜を世話する」でした。今でもそうなのかな?

ただ、その日本語訳に固執していると、もっと広く使われているこのフレーズのニュアンスをつかみそこねてしまう。実際、本書では次のような文脈の課題文で紹介されていました。

Sanae: Masato, could you do me a favor? I have to leave right away, so I want you to make a copy of these letters.
(Masato、ちょっとお願いがあるんだけど。私すぐに出なくてはいけないので、これらの手紙のコピーを取っておいてほしいの。)

Masato: Yes, OK, I'll take care of it.
(はい、分かりました。やっておきます。)

これを「世話をする」では伝わらない。そこで以下のような解説がなされています。

take care of Xには「Xの世話をする、手入れをする」の他に「Xを引き受ける、処理する」などの意味があり、I'll take care of it.はその定型パターンである。なお、受験では関係ないが、アクション映画などではI'll take care of X.は「X(敵など消したい人物)を始末しておきます」の意味でよく使われる。

ここで私が想起したのが、このtake care of Xの複数のニュアンスが印象的に使われている映画『パルプ・フィクション』(1994)。つい先日までNetflixでも配信されていましたね。

以下は、Vincent(ジョン・トラボルタ)とJules(サミュエル・L・ジャクソン)が、取引で不正を働いた若者たちの部屋にカチコミをかける直前に与太話をしているいかにもタランティーノ的な場面から。

Vincent: What's her name again?

Jules: Mia.

Vincent: Mia.

Jules: Why you so interested in big man's wife?
(どうしてそんなにボスの女房のことを気にするんだ?)

Vincent: Well, he's goin' outta town to Florida and he asked me if I'd take care of her while he's gone.
(じつは、奴はフロリダに出かけるんだが、それで留守の間、彼女の面倒を見てくれって頼まれたんだ。)

Jules: Take care of her?
(女をヤッチマウってか?)

Vincent: No, man, just take her out. You know, show her a good time. Make sure she don't get lonely.
(いや、そうじゃなくて、ただ連れ出すだけだ。楽しい思いをさせて、寂しくならねえようにな。)

take care of Xの「面倒をみる」と「始末する」のニュアンスのすれ違いが対話の中に織り込まれていて、Julesの銃の仕草なんかもあり印象に残ります。

また本作では、ボクシングの試合で約束の八百長をすっぽかし逃亡したButch(ブルース・ウィリス)の処遇を巡ってMarsellusとPaulの間でかわされる会話の最後にもtake care of Xが出てきます。

Marsellus: I'm prepared to scour the earth for that motherfucker. If Butch goes to Indochina, I want a nigger hidin' in a bowl of rice, ready to pop a cap in his ass.
(あの野郎は地の果てまでも追いかけてやる。もしブッチの奴がインドシナに逃げたとしたら飯茶碗の中に殺し屋を潜ませて、蜂の巣にしてやろうじゃねえか。)

Paul: I will take care of it.
(そのせんでやってみましょう。)

こちらもタランティーノ作品らしいスラング満載のMarsellusの節回しが最高ですが、それを受けてPaulの"I will take care of it."は「世話」どころかずいぶんと物騒な文脈に収まってますね。

またPaulの台詞には、take care of Xを「ビジネスをする」といった意味で使っているシーンもあります。

Vincent: Where's the big man?
(ボスはどこだ?)
Paul: Big man's right over there, takin' care of some business....
(ボスならあそこだ、ちょっとした仕事をやっているとこよ。)

ここではtakin'と分詞構文の形で文末についています。

『パルプ・フィクション』(1994)はタランティーノ監督の代表作の一つで映画として最高に面白いだけでなく、英語表現としても学びの宝庫。スクリーンプレイ出版の脚本は現在は古本でしか手に入らないようですが(?)、メルカリを覗いてみてもけっこう良いお値段がついていますね。当時の定価は1200円でしたから。。

また、『IDIOMATIC 300』の方も頁をめくるたびに気付きと学びのある凄い本ですが、こちらについては、後日、全部読み終えた上で改めてブックレビューとしてnote投稿したいと思っています!

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