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真・女神転生V Vengeanceをクリアして考えることいろいろ

新ルートである復讐の女神篇の2つのエンドを合計60時間でクリア。2周目は全引き継ぎ&難易度カジュアルで4時間で。オリジナル版の真Vも2年前の当時クリアしているので比較的スムーズに進めた。

引き続きゲームの遊び心地は良いと思う一方、オリジナル版と比べてあまり代わり映えしなかったし、却って悪くなったと感じる部分も。全体的に期待していたことからは尽く外れていた。


復讐の女神篇でのキャラクターについて

オリジナル版のルートを「創世の女神篇」として新たに追加された「復讐の女神篇」。ゲームシステムの方に大きな変更がない以上、最大のウリである新規ストーリーなのだが、あまりおもしろくはなかった。

創世篇と登場人物もほとんど同じなのだが、その扱いは全体的にかなり悪くなっていたと思う。

ユヅルは唐突に「世界は不平等だ」と言い出すし(創世篇でも唐突に「多様性がー」と言い出してたが)助けに行った妹には突っぱねられるし唐突に友人(?)に裏切られて殺される。正直、主人公の新しい姿を出すためにアオガミともども退場させられたとしか・・・。

太宰は本編以上に支離滅裂になって正面からぶつかり合うならまだしも裏切って友人を殺すし結局何がしたいのかよくわからないままイキリまくって主人公に返り討ちにされるし、相方のアブディエルに至っては創世篇同様に堕天すれどセリフも禄に話さないので本当によくわからない立ち位置のまま主人公と戦って殺される。CV(朴璐美さん)的にたくさんセリフを追加する予算がなかったんだろうか・・・?

ミヤズは創世篇では大人しめな立ち位置なのもあって却ってヒロイン感が強かったのだが、復讐篇では死んだユヅルの復讐としてコンスと共に主人公に立ちはだかってくる羽目に。しかもユヅルの蘇生手段があると騙してパワーアップアイテムを主人公から貰った上でこれなので始末が悪い。パワーアップアイテムはコンス用なのでコンスのアイデアかもしれないが、なまじ本人が復讐の意思を示して協力的なのでコンスのせいにもしきれない。

サホリは復讐の女神篇なんて一番スポットライトが当てられそうなルート名だったのに創世篇よりも早々に退場するし、親友だったタオは新キャラのヨーコとガッツリ絡んでマブダチ感を出してくる。創世篇でも主人公と対になりそうな赤い長髪に最初に主人公以外でナホビノになりそうな流れだったので、また肩透かしを食らった形だ。

八雲とジョカもティアマト復活の巻き添えで死んで退場してるし、カデシュトゥを追ってたようだが最後まで助言役程度での出番で終わっていた。

こうしてまとめて振り返ると本当に皆が皆、碌な活躍させられていないな。戦わんでもいいだろ!という場面で積極的にバトりにいくことも多く「頼むから俺に説得させてくれ・・・・」と思うことしばしば。全体的にキャラがストーリーを動かしてるのでなくストーリーにキャラが動かされているとひしひしと感じてしまい、のめり込めなかった。

どうしてこうなった

新たな2つのエンドについて

復讐篇での2つのエンドは「角の生えた女神のタオと共に世界を今のルールのまま創り直す」「蛇に連なる女神のヨーコと共に世界をルールごと壊してリセットする」か、と捉えられた。最初に普通に遊んだらタオエンドに。

この世界の前提のひとつとして「支配と被支配という関係自体が今の世界を創った角のある神」のせいなので、それを壊せば支配関係はなくなり誰もが自由な世界になる、ということなのだが・・・正直かなり無理のある話に感じた。実際にヨーコエンドでどんな世界になったかは具体的には描かれない。エンディングではリセットされた世界で主人公とヨーコが新たなアダムとイヴとなったような描写のみ。もし本当に支配関係が無い世界があり得るとしたら、それは他者との関わりが一切絶たれた世界とかだろうか?人は孤立された空間で自然発生しそのまま生涯を終えてまた新しい人が発生するのを繰り返す・・・それなら確かに誰もが自由で支配関係もないだろうし、エンディングの描写もそんな世界になったと取れなくもないが・・・いずれにせよ今の世を生きる人間からは突飛なものになるのだろう。本当にそんな世界でいいのか?

もうひとつの前提が「過去に蛇の神が角の神を貶めて創世のルールで勝てないようにされている」ので蛇の神に連なる悪魔達がその復讐に世界のルールを破壊しようとしている・・・というのが復讐篇たる所以なのだが、最終的にはヨーコ自身にはそのつもりは無くなくなり自由な世界の創世に意識が向いている。

今作の主な敵悪魔であるカディシュトゥは正にその復讐を目的としてるのだが、ティアマト復活以降の出番はないので終わってみると意外と印象が薄かった。創世篇では逆に魔王城以降の終盤にベテルの各国代表悪魔が勢揃いするし台東区では強敵として立ちはだかるので出番の少なさの割に印象に残ってる。実際カディシュトゥ戦はどれも苦戦した記憶は無い。

そして両エンド共にラスボスはまさかの自称ルシファーが創世篇から続投。創世篇各エンドも合わせると何回戦ったんだ・・・。前作時点でデザインのガッカリ感がすごかったが、ここは一切手を加えられていなかった。前後の演出も戦闘内容もまったく一緒なので新ルートの方には必要だったか・・・?却って目新しさを無くしてたと思う。

疑問やツッコミの多い中、タオエンドの実質ラスボスである虚大霊テホム(SJラスボスのメムアレフと同種だ)だけはデザイン的にもゲームとしての強さ的にも演出的にも神話設定的にもよかったと思う。今作新要素で一番ワクワクしたバトルになった。ただ、それだけに対となるヨーコエンドでの実質ラスボスがまさかのマンセマットだったときにはものすごいガッカリしたものだが・・・何ならその前のティアマトもエンド別のボスが出ると思ってたので、続けざまに期待を裏切られた形に。

復讐篇のマンセマットに関しては本当に出てくるシーン全てでツッコミどころだらけだった。一般人や太宰を塩に変えて何のお咎めも無いままだし、戻せますと言われてあっさり信じて太宰置いていくし、終いには一般人含む妖精の里を塩から戻すのを条件にクエストを依頼してくる始末。しかもヨーコエンドでマンセマットを倒したあとでも普通にクエスト依頼をしてくる。先に遊んだタオエンドではこの依頼で蛇側の神サマエルと戦ったので、ヨーコエンドでは逆にこいつを直にぶん殴れるんだろうな、と期待してたらラスボスだったしサマエルも普通に倒すよう依頼してくる・・・人気のある悪魔とはいえ、ちょっと今作での使われ方はなぁ。あと、どうせならメガテン的にマンセマットと同期のバガブーも3Dで出してほしかった。

両エンド共通のティアマトにトドメを刺すシーンはカッコよかったとは思う一方で、ツクヨミ長官が無言であっさり退場させられて「おい」となったり、急に演出がヒロイックになり過ぎてちょっと戸惑ったり、バトルの流用でもいいから主人公の叫びくらい入れてもよかったのではとも思ったりもした。アオガミが帰ってきた!とかやっぱりこの姿がしっくりくる!という気持ちも無いでも無かったが。

こうして道中の気分が乗らなかったのでもあり、どちらの結末もあまりスッキリとはしなかった。特に万古の神殿以降はけっこう作業感が出てたし、ティアマト戦で初見コラプスレイで全滅して更にその後に仕切り直しにクエストのサマエルに挑んだらまた負けてしまったので、面倒になって難易度をノーマルからカジュアルに下げた。テホム戦で気分が盛り上がるも再三のルシファー戦&飛ばせないスタッフロールでまた最後にテンションが戻った。

ルシファーやマンセマットと比較してラスボス感もりもりなテホム。見上げるボスは良い
前作にもいたがこちらも巨大化が似合い過ぎなスルト。照り返す炎剣も良い絵面に

新たなゲームシステムについて

オリジナル版同様に広大なダアトの探索、シリーズおなじみの悪魔会話や合体、戦闘はバランスが良く楽しいのだが、悪く言えば慣れるとほぼ安定して遊べてしまい、それ以上のものにはなっていなかった。

すべての悪魔に固有スキルが追加されたのだが、その性能はピンキリでありつつ、高性能なものも条件が厳しかったりしてほとんど有効利用できなかった。推し悪魔のヴィーヴルなんかは「魅了時に正常行動を取れることが多くなる」程度で確実に無効化するものではない。他も大半は意識するほどのものでなく、一番印象に残ってるのはザコ敵のアンズーの「稀に物理無効化」くらい。通常、攻撃する時に弱点か無効化されるかは表示されるがこれには表示されないのでタチが悪かった。そもそもアンズーが登場時点では物理攻撃力と素早さの高さでかなり強敵だったのもある。より多様化したマガツヒスキルも発動条件が特殊なものが多かったり結局は「禍時:会心」が一番使い勝手がよかったりであまり利用しなかった。

新マップの新宿区ダアトもやることは変わらない。マップを埋め、クエストをクリアし、ミマンを探す。未開のマップを探索するワクワク感はあるのだが、それも最初だけでプレイ全体で見ればほんとうに一時。ケルプやマーラなどの新しい悪魔も出てくるが、新しいと言ってもシリーズおなじみの悪魔なので前作に出てたか出てないかは正直あまり覚えがなかった。そして新宿区と至聖所以降は再び創世編と同じ台東区と万古の神殿が舞台になる。終わってみれば探索自由度も難易度も高い台東区エリアの方が印象が強く残ってしまってる。ルシファーもだが半端に創世篇の要素を組み込むくらいなら多少ボリュームが減っても新規要素の濃度を上げてほしかった。

もう一つの目玉である悪魔の裏庭も好感度・ストーリー進捗・現在地といった条件でかなりのパターンの会話が楽しめる一方で、けっこうな頻度で更新が入るために進めるテンポが少し悪くなったとも感じた。また一部のエリアでは利用できないため、そのエリアで会話が発生した場合は見るために長めのロードが入るエリア移動をしなくてはいけない。どうせなら至高天や寮の屋上も裏庭としてアクセスできたらよかった。

ゲーム部分の追加要素もけっこうあったが面白さとしてはいまひとつ物足りなかった。エリア移動時のロード時間なども特に早くなってない(Switch版)し、連続ダメージの合計値は出ないし、相変わらずアイテムの所持制限は厳し目だし、新要素の追加以外の快適性に関してはほぼ未着手だった。

禍時「会心」の使い勝手が良すぎてあまり使わなかった他の新スキル

ヴェンジェンス、総じて

オリジナル版同様にRPGとしての面白さや音楽はよかったし新規悪魔たちのデザインもよかった。だが正直DLCレベルの追加要素・・・というかDLCだったとしても若干弱めに感じた。別会社だがゼノブレイド2や3のDLCと比較すると・・・だが価格的にはそれくらいの新シナリオを期待していた。同じメガテンとしても真3→マニアクスのような追加コラボキャラのダンテとかアマラ深界のような驚きもなく、真4→Fのような実質続編という追加・改修ぶりでもなかった。ペルソナ3→Fesのようにアペンド版でも出してくれればよかったのだが。なお、P3RがFes部分を追加DLCとして出す模様。

悪魔デザインも良い一方で女魔4体もほぼ人間の延長のようなデザインに感じたし、アブディエルやジョカも合わせてコスプレグラビア集団のような印象だった。

また本作のテーマカラーが金+黒であることや蛇の神という設定もあるだろうが「金+黒+蛇」という要素の組わ合わせの悪魔がヒュドラ、ジョカ(ナホビノ)、ティアマトと3体もいるのは被りすぎでは?と思った。色だけならグラシャラボラスもだが。前作の時点でヒュドラとジョカ被ってね?と思ってたのだがティアマトで更に追加されてしまった。

音楽も前作同様に全体的に良いのだが、新ルート特有の曲というとあまり印象がない。一番のメインテーマ&イベント戦曲「Battle -humans, demons, and...-」がダントツで好みだし真Vといえばコレだと言える。

何よりやっぱり、ストーリー内の理屈や哲学に共感できないのが一番大きい残念な部分。創世篇の「事象を超えることで人は真に自由になれる」、復讐篇ヨーコエンドの「支配関係を無くすことで人は真の中を得る」。どちらも強いていうなら「今の時代の閉塞感を打ち破りたい」という強い願望、叫びのようなものは感じた。だが現実問題、人が人である限り、同じ地球上で過ごすうちは今の時代以上の進歩や大きな変化は齎されることはないのだろう。それ故にあまり共感できなかったのかもしれない。もし実現するとしたら人体改造とか仮想現実への移住とか宇宙や深海の開拓とか、そういうレベルの革命が必要なんだろう。

ぶっちゃけた言い方すると「真の自由」とか「事象の先」とか大層な物言いが長引くと胡乱になる


以下、本作の感想というより、そこから派生した考え事。

アトラスに求めるべきは過去作の続編・リメイク・リマスターばかりなのか

2021年に真Vが出て早3年。その間にメガテンもアトラスもいろいろあった。2021年はアトラス(設立)35周年だったし、2022年は真・女神転生30周年だったし、今年2024年はアトラス(ブランド)35周年。そして今年の春には真・女神転生とそれに連なるシリーズ・デザインを手掛けてきた金子一馬さんがコロプラに転職していたし、真3やペルソナシリーズの音楽を手掛けてきた目黒将司さんは2021年に退職されて今も単独でインディーズゲームを開発されている。

まさに転換期であり、真・女神転生やアトラスにも世代交代を求められているのではないだろうか?

ちょうどアトラス代表作品が真・女神転生からペルソナへとの世代交代されたように、キャラクターデザインは金子さんから副島さんへ、音楽は増子さんから目黒さんへ。初代ペルソナから関わっていられるが、P3でそれは果たされたと思う。

真・女神転生シリーズはもともと派生作品が多く、デザインや悪魔会話・合体などを主軸としつつも作品の方向性やターゲットに応じてタイトルを変えて展開してきた。ライト層に向けジュブナイルのペルソナ(その達成は3になって為されたが)、オリジナルファンタジーのラストバイブル、仏系ポストアポカリプスのアバチュ、裏社会を舞台にしたデビルサマナー、大正浪漫+アクション要素を加えたライドウ、シミュレーションの魔神転生デビサバ、子ども向け()のデビチル・・・。

そう考えると、必ずしも真・女神転生としてナンバリングを重ねていく意味はあまり無いのではないか。真Vではたくさんの新規悪魔がデザインされており、その多くは過去作の金子さんの悪魔デザインを如何に踏襲するかを研究されているようにみえる。だがやはり金子さんを踏襲してメガテンを今の時代で作ろうとしてもうまくいかないんじゃないかなと。正直な話、真Vに関してはなまじ真3の続編的な作り方をしてるので、公式なのに二次創作のように感じていた。

土居さんの絵を見始めたのはDSのカドゥケウスのリメイクであるWiiのカドゥケウスZあたりからだが、その後のカドケ2も含めてこの元イラストからの変化はあまり好きでなかった。一方、同じ土居さんによるカドケシリーズのNEW BLOODHOSPITALのキャラデザは好きだった。真4Fの個性的な仲間たちも「あまりメガテンらしくない」と思いつつもデザイン自体は良いとは思っていた。ものすごく個人的で勝手な想像だが、他者の作風を無理に真似るやり方が合わないのかもしれない。

そういう意味でも、今のアトラスには今のメインのスタッフによるキャラデザ土居さん、音楽土屋さんといった風な、完全な新規の作品を出してほしいと思う。

土居さんデザインはもっとヒロイックな作風の方が似合いそうな気はする

新しいものを創り出すのがより難しくなった時代

ナンバリングシリーズについて課題を抱えてるのはアトラスだけではない。FF、ドラクエ、ロックマン・・・強力なIPはゲーム会社にとって重要な資産である一方でユーザーからはそればかりを期待されるし、開発はそれ以上のものを作り出せずに苦悩するという負債にもなりうる。だからといってそうそう完全新規のIPが売れるとも限らないのは、まさにスクエニがハーヴェステラとかトライアングルストラテジーとかいろいろ出していてもあまり話題になってないあたりで証明されているのだが・・・。

ゲーム開発は本当に難しい。予算があるかないか、予算があっても使いこなせるか否か、予算を使いこなせても独創性があるのか凡庸なのか、独創性があってもメジャーに受け入れられなかったり作家性・属人性が強すぎて企業的には再現性や量産・継続に問題を抱えたり・・・。

アトラスにしても35年もやってると過去作のリメイク・リマスター・続編を望む声はめちゃくちゃ多いだろうし自分自身もそう思っていたが、ソウルハッカーズ2や真Vなどを実際に遊んでみると、必ずしも好きなシリーズ作品が発売されて両手を上げて喜べるとは限らないと思ってきた。

ちょうど今年は完全新作の「メタファー:リファンタジオ」が10月に発売するの。(これは副島さん・目黒さんとペルソナスタッフがメインになっているので世代交代とは言えないが)プロジェクト・リファンタジーとして始まってしばらくしてからはよくわからないプロモーション番組を何度か挟んだりしていて一時期不安にもなったが、タイトル公開後の情報を見るにアトラス35周年作品としてすべてを掛ける勢いを感じるのでおおいに期待している。35thエディションは予約済み。

そしてもうすぐ発売のメタファー以降、アトラスから果たしてどんな作品が出てくるのか。

真3HDを遊んだときは今でも色褪せない内容で遊びやすさも改善されていてよかったのでアバチュもこの形式で今リメイクされて欲しいと思うし、世界樹の迷宮もSwitchで出ることだけは予告されているがなかなか出てこないし、新・世界樹の迷宮もリマスターや3は欲しいし。

新規作品が欲しいと宣っても、こういった願望は捨てがたい。とはいえ実際メタファーがでてしばらくは大きな新規タイトルは来ない気もする。小さくてもいいだけど。寧ろインディーズレベルでないと実験的なタイトルや個性の強いのは出しづらいだろうし。

なんだかんだ言っても、来年以降のアトラスの新作は期待して待っている。新規でも続編でもリメイク・リマスターでも、たぶん買う。

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