2:8あたりが支援の一番いいバランスだと思う
この前「現場の支援って何なんだろう」ということについて書かせてもらいました。
そこからもう少し踏み込んで、どんな風に支援へのスタンスを考えていくのか、ということについて書いてみようと思います。
僕が自分の事業所の支援の方針として大事にしているのは、語弊があるんですが「たくさん失敗させてあげられる」ことと、「たくさん悩ませてあげられる」ことです。
要は、いいことも悪いことも含めてできるだけ多くの経験を積んでもらうことです。
前回も書いたとおり、僕が支援の柱にしているのは「アセスメント」です。
つまりほとんどが分析と観察で、その目的はもっとも効果的な「手出し」を見出すことです。
そのために利用者さんのことをとことん知らなければならないわけです。
「できるだけ多くの経験を積んでもらう」というのは、利用者さんの視野や見識を広げるための支援のひとつであると同時に、経験の種類が多ければ多いほどいろんな側面を見ることができるので、僕らはいろんな仮説や検証を立てながらご本人を深く知ることを並行して行う支援になります。
僕ら支援者がしなければいけないことは、「支援者が」本人の人生や将来の道筋を立てたり牽引するのではなく、「本人が」自分の人生や将来の道筋を自身で見出して歩いていくことができるようになるためのサポートをすることです。
だから本質的には僕ら支援者が手を出してしまうことって、往々にして本人のための支援にはなっていないかも知れないことを、僕らは自覚しておかないといけないと思っています。
そのバランスを『2:8』くらいで考えるようにしています。
例えば・・・
支援者が手を出すのは支援全体の2割、アセスメントとして観察や分析をする割合が8割というバランスだったり、
自分が話すのが2割、利用者さんに聴く8割というバランスだったり、
取り返しがつかなくなるリスクだけ汲んでおく2割、軽い失敗なら経験として積んでもらう8割、みたいな感じです。
これはあくまで就労移行、というステージだから言えることかも知れないけど、ご本人が体験を通じながら考えて悩んで、身体を通すからこそ乗り越えられる「失敗」や「挑戦」を取り上げるのは、支援ではなく「制限」や「管理」です。
本当に僕らが手を出して支えなければならない「直接支援」って、本当に全体の2割だと思います。
本当に取り返しがつかないこと、経験があまりにも不足していてさすがに導入のサポートが必要な場合でもない限りは、僕らが本人の挑戦の権利を奪うことも、失敗という経験を積む権利を奪うことも絶対にやってはいけないことです。
むしろ僕らは、8割のエネルギーをかけてご本人を理解して、先の見通しも想定したうえで、残り2割の手でその経験の活かし方を伝えていくことや、リカバリーをフォローすることのほうがよっぽどか前に進む支援のはずなんです。
手を出すのって簡単なんです。だから使うエネルギーは2割なんです。でも、失敗しないように手を出すのは多分本人の成長を妨げ、1人でやったら失敗したり厄介なことになるからって「管理」したり挑戦をコントロールしようとすることは、本人の意思決定や思考を停止させることにしか繋がりません。
利用者さんのことを深く知ることはそんなに簡単じゃありません。
どんなに毎日接していて話をしていても、「分かった」と言い切れる瞬間はそうそう来ないと思います。だから8割のエネルギーをかけないと追いつかないんです。
だから、2:8という配合が、支援をしていくための割と最適なエネルギーバランスなんじゃないか、という話でした。