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利用者さん同士がコミュニティをつくって支え合う支援事業所の話

新しい年度だからなのでしょうか、それとも新しい仲間が増えたからでしょうか。
この時期はとても興味深いことがうちの事業所では起こります。
 
 
もともとうちの事業所は、支援学校を卒業したての方など割とお若くて社会経験がない方の利用が多いもので、平均年齢が若い事業所です。
 
 
ちょっとだけ「学校」みたいな側面をもった空間なのですが、新しい利用者さんが入られると先輩利用者さんが『変わる』んです。
 
 
自分に後輩ができる、ということで、面倒を見なきゃいけないという気持ちが芽生え始めるみたいなんです。
 
 
 
どういう事が起きているかというと、自分から新しい仲間の相談役を引き受けよう、という方が出てきます。そして、不思議なくらいにみんなが彼らを気にかけるようになります。
事業所の活動の流れだったり、作業だったりを教える人が出てきます。そして僕ら支援者以上に彼らの様子を気にかけるようになる人が出てきます。
今まで少し末っ子感があった方が、焦ってみたり、やたら頼りがいが増したりするわけです。
 
 
入られた利用者さん以上に先輩利用者さんの方の変化が顕著に見られるようになるんです。いい意味で「先輩面(づら)」するようになるんです。
 
 
 
うちの事業所に来られたことがある方はご存知だと思いますが、お恥ずかしながらとてもじゃないですが、「就労移行」感のない事業所なんです。
一応作業訓練もしていますし、個別の訓練というか活動メニューも実施していますし、社会体験や社会実践に繋がるような活動も取り入れてはいます。施設外就労もしています。
なんですが、行事企画は利用者さんで組織した実行委員に丸投げしていますし、作業も先輩利用者さんが後輩利用者さんに教えるのが当たり前、なぜか利用者さん同士で気になることは「それは職員さんに相談することでしょ?」と対応してみたかと思うと、話を聞いてあげてその内容をスタッフに報告しに来てくれたり、卒業生さんが既存の利用者さんのカウンセリングのようなことをしてくれていたり、という有様が日々繰り広げられています。
 
 
支援事業所、というよりは「小さなコミュニティ」といったところでしょうか。
支援者がメインで彼らの支援を展開している、というよりも、利用者さん同士の中で生まれる関係性を見守りながら、そこで繰り広げられることに合わせてフォローしたり、最後のクロージング的な面談をしたりというカタチの「支援?」みたいなことが日常なんです。
 
 
多分福祉事業所には珍しく利用者さん同士の関わりやつながりは多く、時に深く、彼らは彼らなりにお互いを支え合ったり鼓舞しあったり、時にライバル視し合いながら(あ、毎年何故かカップルも生まれてしまいます💦)、ほとんど自分達で社会性を育み合っています。
 
 
これが年数を重ねる中でどんどん風土になり文化になり、コミュニティが広がっていきます。
 
 
もちろん利用者さん同士の関わりの中でトラブルはちょいちょいあります。
危なっかしいと思える時もあります。
でも、よほどのことじゃない限り僕らはそれを妨げたり遮ることはしません。
 
 
だって、僕らも彼らと同じ年だった頃、決して合理的な判断も社会的な判断も必ずしも出来てはいなかったから。
バイトサボるばかりしてクビになったり、友達同士でケンカになったり、やらなきゃいけない事後回しにして怒られたり、恋愛にうつつを抜かしてみたり逆にそこで励まされてみたり。
 
 
若気の大至りをしてきましたから。
 
 
 
失敗して学ぶことの方が圧倒的に多く、間違うから何が「間違い」なのかを知る事ができ、慰めたり励ましたりしてくれる仲間がいるからしんどくても頑張れたりします。
 
 
僕らの「支援」というのは、決してそれらを取り上げてしまうことではない、というのがうちの方針なので、僕らは最低限のところしか手を出さない事にしています。
 
 
そんな風土が見せてくれる景色のようで、僕らはそこで支援者然とするよりも、そのコミュニティの中に入り込んで彼らを見つめています。
 
 
見る人が見たらもしかしたらあんまり褒められたもんじゃないのかも知れませんが、それでもここから社会に巣立っていく利用者さんは決して少なくないので、こんな場所が必要な方もいるんだと自分に言い聞かせています。
 
 
ちょっと風変わりな事業所ではあるんですが、割と人の温度が感じられる場所だなぁ、と少しだけほっこりしながら見つめています。
ここにはあんまり「障がい」という言葉は似つかわしくないので、だんだんと「障がい」の意味が分からなくなります。
 
 
これからもこんな風景をずっと見ていたいと思っているので、ほっこりしつつもこの景色をもっと広げるために頑張ります。
多分僕がこれからやらなきゃいけないのは、こんな景色をどうやったら増やせるのか、そしてそのためにどれだけ仲間づくりができるのか、どんな仕組みをつくらなきゃいけないのか、ということを必死で考えてトライ&エラーを高速で繰り返しながら繋がったり生み出したりしていくことなんじゃないかと思います。

 

手探りしながら、そこに向かっていきたいと思います。




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