社会課題の問題なのか、福祉の構造の問題なのか
普段は主には障害者支援の仕事をしていて、基本的には障害をお持ちの方の支援を行なっているんですが、やればやるほど、支援に関われば関わるほど制度や今の仕組みでは足りないものが溢れている事を目の当たりにします。
障害者以外の支援分野での「就労支援」の資源やマンパワー不足、ノウハウ不足、そうかと思えば引きこもりの支援のインフラと支援の具体的な仕組みの不足、実は障害当事者も、だけどその保護者も生きづらさを抱えていることへの問題、などなど。
元々障害者支援という枠組みの中にわざわざ閉じこもっている必要はないのであちこちに首を突っ込んでいくんですが、どうやら分野違いの僕なんかでもお役に立てることはあるみたいなので、お手伝いさせてもらったり、持続可能性と再現性のある仕組みに落とし込めないか考えています。
元々僕のいる就労移行支援、という分野だからその界隈の社会課題と出会うことが多いだけなのかもしれませんが、そして僕が住んでいる地域だけの話なのかもしれませんが、どうも「福祉→社会」に出ていくところに結構課題が集中していることが多いような気がするんです。
たまたまそれがテーマとして就労だったり、引きこもりだったりと変わっているだけで。
うまくまだ言語化できていないんですが、分野を問わず現行の福祉的な領域って似たような課題にぶち当たっているんじゃないだろうか、という風に思わずにはいられないんです。
僕も自分の持論とか視点があるのでそれがバイアスになってしまっている可能性があるんですが、違う福祉領域のかたとお話ししていても「やっぱそこだよね」みたいになることも少なくありません。
障害者の福祉、高齢者の福祉、困窮者の福祉、虐待被害者などの福祉・・・色々と福祉の中にもカテゴリがあります。
いわゆる社会的弱者という風に呼ばれる彼らを守るために福祉はあります。
ただ、なんとなく構図的には社会の構造や規格にはまらくて弾かれている人を社会から一旦切り離して保護したり養護したりしてきたのが今までの福祉で、そうなるとなんとなく福祉 VS 社会みたいになっていたところがあるのかな。
福祉は弱者の味方で、社会は弱者には生きづらい場所みたいな。
だから福祉というカテゴリはやや社会から意図的に一時的に分断することも機能として必要だった時期があるのかもしれません。
守る福祉ですね。
対して今の時代っていわゆるダイバーシティ、といわれるように多様性を尊重していこうという向きが強くなり、生きづらさを抱えた人がどうやって社会の中で生きていけるかを探していく、というスタンスがむしろ福祉の役割の中で大きくなっているんだと思います。
なんだけど、なんとなく福祉領域の方の認知と機能が追いついていないところがあるのかな、と思うんです。
ちょっと極端な言い方をすると、生きづらさを抱える人を守っている福祉は正義で、社会は差別と不平等に溢れてる悪、みたいな対立構造がいまだになんとなく残っていて、過度に擁護的な作用が強いままなので、社会に繋げていく、っていう機能の発展への注力が遅れている感じ。
だいぶ偏った書き方をしていますが、あくまで極端な言い方です。喩えだと思っていただければ。
そして、それぞれの領域ごとに自分たちが守らないといけないカテゴリの方に注視しすぎてだんだん視野も狭くなってしまうし、制度もそういう風に縦に割って設計しているもんだから余計に福祉の中でも分断が起きてしまう、みたいな。
一時的に必要だよね、という概念だったはずの福祉と社会の棲み分けがいつしか分断になってしまい、課題と対策を整理するために設計したはずの制度はいつしか福祉の中の国境みたいになってしまった。
僕の肌感覚としてはそんな感じがします。
そう考えると、今の社会課題の中のどれくらいかの割合って、既存の福祉構造が変化、ではなく強化されていったことによって生まれている副作用みたいなものがあるんじゃないだろうか、とも思えるんです。
僕はまだそこに明確な答えも確信も持てていないので、立派なことは言えないんですが、ただ少なくとも今自分の元々いる分野、つまり障害福祉という領域を少し飛び出してみて、分野や領域が違う福祉資源の方と交わりながらお互いができそうなことを持ち寄ってみるとどうやら解決に向けていけそうなものがある、ということは感じています。
インターネットの登場により社会のあり方はずいぶん変わりました。
それは多分文化や価値観が国境や海を簡単に越えられるようになり、互いが互いを知ることができるようになったことによって生まれたものだと思います。
それによって「多様性」とかグローバリティみたいな概念が一気に広がったんじゃないかな、と不勉強なりに思っていて、だったらそんな社会の新しい構造に対応していくには、僕ら福祉という領域も、国境(セクショナリズム)を越えてお互いを知り合って、そこから今一度社会とのつながり方とかをフラットに考え直したり見直したりすることが必要なんじゃなかろうか、と思ったりするんです。
支援の交差点をもっと増やしていくと、新しい福祉のあり方の種がもっとたくさん生まれるんじゃないでしょうか。
とりあえず僕は自分なりに動いて確かめてみようと思います。