夜光怪獣 山中峯太郎 ポプラ社

夜光怪獣って????
まず問題。 「夜光怪獣」というのは、ある名作ミステリーの邦名なのですが、なにかお分かりでしょうか?
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 それはさておき。

 周囲の影響力というものは、計り知れないものがある。とくに子供のころは。「周囲」というのも多種多様であって、すんでいるところ、通っている学校、両親、兄弟姉妹、家庭の経済力、etc.まあ枚挙にいとまがない。私はは2人姉弟の環境で育ったため、姉の影響を多大に受けた。(嫁からはシスコンだとも言われた)最近はこちらも姉に対して反撃(影響返し?)しているが、お互い泥沼に入っている感もある。
 さて、私は物心ついたときから、本が好きだったらしい。そのころから怠惰な性格はちゃくちゃくと成長していたので、薄暗くなっても、ゴロンと横になって本を読むことを止めなかった。そのため、小学校3年の時にはメガネが必要になった。別に今どきの小学生のように受験勉強をしていていうのではない。今から思えば、「性格が近視を育てた」のである。
 当時から、そうとうの本好きだったらしいが、姉も本嫌いではなかったらしい。(姉の読書傾向も、その時から、そうとう偏っていたらしいが。) あるとき、姉は私にある本を読め読めと進めた。それがシャーロック・ホームズの「銀星号事件」だった。一気に読んだことをいまでも覚えている。推理小説というものを読んだことがない身にとっては、まさに麻薬に近い効果を引き出した。
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 それからというもの、姉の本棚から「ホームズ」の全集を引き出しては読みふけっていた。当然姉の本棚を読み尽くした後、クイーン、クリスティなどのお決まりのコースに突入して行くのである。
 ところが、そのお決まりのコースに「とある邪魔」が二重に入り、一時ミステリ読書遍歴は中断されていた。「邪魔」とは、他の分野の侵食と受験である。とりあえず、高校の受験が終了して見事復活したのである。
 そのころ、怠惰な性格の上にプライドの高さが相乗効果を与えて、「ま、ミステリの原形であるホームズぐらい原文で」などと思いながら、取り組み始めた。いまから思えば、無謀を絵に描いたような行動である。3日もたたないうちに撤退を余儀なくされた。それでも原文の雰囲気は味わえたのだが、何か違和感がぬぐえない。で、アンチョコに使用していた(笑)文庫本を読むのであるが、そこでハタと気がついた。「姉の貸してくれたホームズは何だったんだ????」
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 たぶん、これを読んでいるほとんどの方はホームズ物を読んだことがあるだろう。ドイル描くところのホームズは「コカイン」の常習者で、かなり神経質。ほとんど変人である。ところが私が読んだ「ホームズ」は、「明朗、快活、愉快」の三拍子そろった健康人であった。ようするに私が読んでいたホームズは「子供向け翻案物」であったのだ。いやはやである。
 ところが、である。この翻案者がすごい人であった。戦前から冒険小説を手がけ、「亜細亜の曙」「見えない飛行機」などを書いた「山中峯太郎」そのひとだったのである。この人がドイルのホームズを自由自在に翻案していたのだった。さすがに筋書きは変えてはいないが、すっかり同名異人状態になっている。ワトソンとは掛け合い漫才状態で、陽気そのもの。また、各巻末には、次の巻のお知らせまではいっていて、インパクト十分である。まさに、山中節で「のりのよい」冒険小説になっていた。
 私は、この「のり」にすっかり酔ってしまう。たしかに原作そのままの訳本も当然読んだが、まったく別物として読んだ。幸か不幸かfujiのホームズは「山中峯太郎」翻案のホームズなのである。
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 ここで、最初の「夜光怪獣」である。種をあかせば、なにあろう「バスカヴィル家の犬」の翻案の題名である。(まあ、すごい題名をつけたものだ。)でもわざわざここに「夜光怪獣」を持ってきたかというと、すごい題名だからではない。今私が探しているからなのである。
この山中峯太郎:翻案のホームズ物は、以前「ポプラ社」から全20冊出ていて、もちろん全巻所有していた。ところが現在、この「夜光怪獣」のみ、無い。原因は貸し忘れだと思うが、定かではない。さらにこのシリーズは、数十年以上前に一掃されてしまい、今は新しい翻案が出ている。つまり入手は古本屋のみという状態である。
 これを読んでいる方々のうち、どなたか所有していて、「売ってもよい」という奇特な方や、「古本屋でみた」などの情報があれば、お知らせいただきたい。何十軒か回れば1冊か2冊ぐらいは、子供の本コーナーにあることもあるのだが、いまだ「夜光怪獣」には巡り合えない。その2冊ぐらいも100円とかの値札がついていて、さらに哀れをさそう。 どうせならば、20冊揃いとか巡り合えそうな気もするが、どうだろうか?
巡り合えれば相当うれしいが、金額次第では相当悩みそうなケースではある。困ったものだ・・・

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旧WEBからの採録。この文章の掲載後、無事「夜光怪獣」は入手した。そして、十数年後、山中峯太郎さんの著作権切れにより「山中峰太郎版 シャーロック・ホームズ全集」は全三巻の豪華愛蔵版で出版された。この山中版ホームズを認めるかどうか、ホームズファンには難しいだろうなぁ・・・

補足:表題が間違っていた・・・ガーン。峰ではなく峯でした。修正してお詫びいたします・・・


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