暮らしに花を咲かせてくれる、岩崎龍二さんの器
この土地の自然から、色をつくりだす
岩崎さんが工房を構えるのは、大阪南河内に位置する富田林市。遠くには、二上山という、奈良と大阪の境になる山をのぞみます。
2012年、岩崎さんは、生まれ育ったここ富田林に自宅兼工房を構えました。
土地の作物で色を生む
岩崎さんが生み出す器たちの美しい色合いは、この土地の自然の中から生み出される。
「最初に使ってみたのは椿の灰で、知り合いのお父様が長崎の佐世保でつくっていたのを使わせていただきました。
灰釉薬とは、日本の古来からある技法で、植物を燃やした灰で釉薬をつくります。弟子時代、僕の師匠は灰釉作家をしていたので色々燃やしているのを見ていました。一般的な灰釉は渋い色合いが特徴です。
自分で初めて椿の灰を使ったとき、白の釉薬と混ぜ合わせたら想像しなかった淡いピンクの色が出て、こんな色が出るのかと意外でした。
そこから、身近にある植物で色々試してみるようになりました。
椿、桜、くすのき、いちじく、いちょう。
それぞれが違った発色でとても面白い。
裏の畑で収穫し終わった後の枝をもらい、農家さんに燃やすのを手伝ってもらって灰をつくります。ここの土地の自然を使って、こんな綺麗な色が出るんだと毎回驚きがあります。
河内はワインも有名なので、ぶどうの灰を使ってみるなど、地元で取れる作物が色々あるから色々と挑戦したいと思っています」
「釉薬が同じでも、焼き方、冷まし方、熱の入る時間、窯の場所など様々な条件によって全く違います。テストピースで良い色が出ても、器の形や生地の厚みによっても違う。全て経験していくしかない、それが面白いです。」
岩崎さんが修行時代、伝統工芸展に出品していた初期の作品。器を作り始めて20年以上が経ち、数々の賞を受賞した経歴を持つ。伝統工芸で鍛えたキャリアを持ちながら、自分だけのスタイルを追求し、作品を創り続けている。
この土地で、創作するよろこび
続いて案内していただいたのは、岩崎さんが生まれ育った実家にあるもう一つの工房。
最初に訪れた工房からは車で10分ほどの距離にあり、途中、岩崎さんが小学校時代の通学路だったという道や、寄り道をしていたという神社を通る。
自然や史跡が身近にある富田林に生まれ、今もこの土地で住みながら創作をする岩崎さん。
ろくろを挽き、形作ったものを素焼きするまでを実家のある工房で行い、その後、現在の自宅兼工房で色付けし、焼き付け、最後の成形を行う。
「実家の工房は、地元の建築家の友人と一緒に、DIYでつくりました。仏間だったところの床柱を残したりして、かつての家の面影を残しながら、自分の手で時間をかけて完成させてました。
ろくろを挽きながら、目の前には二上山が見えます。子供の頃から見慣れた風景ですが、こうやって生まれ育った土地の自然を感じながら制作することができるのは、自分のものづくりには大切なことのような気がします。」
岩崎さんの器の花のような美しさや、触れた時の優しさは、生まれ育った土地で、自然を使って生み出されるもの。
そして、自分の手で創れるものは時間をかけても取り組む、岩崎さんの真摯な姿が、器という形で表れていように感じました。
大切につくられたものたちは、そばに置いておくだけで、暮らしの風景に花が咲いたような明るさを与えてくれるような気がします。
岩崎さんの作品は、WISE・WISE tools 東京ミッドタウン店とオンラインサイトにてご覧いただけます。
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