音楽80s自分史 047「BI迎撃・映画編」
1981年のMTVスタートがキッカケで
起きた、英国系アーチスト・バンドのミュージックビデオによるアメリカ音楽市場の侵略=(第二次)ブリティッシュ・インベイジョン(以下、BI2)。
これに対して、アメリカの音楽業界が、どういう対処をとったと僕が感じたかを、「BI迎撃(アクション)」として、話を展開していきます。
「BI迎撃」は3つのアクションがあった、と分析しました。
その一つは、映画業界とのタッグ「メディアミックス戦略」です。
米音楽業界がイギリス系アーチスト・バンドのミュージックビデオの攻勢で
窮地に立たされていた時、米映画産業は「若年層の映画館離れ」に歯止めをかけることが至上命題になっていました。
そこで考えたのが、両者がタッグを組んで、MTV=ミュージックビデオの「音楽と映像の融合」を、映画作品として昇華させることでした。
それまでの映画を盛り上げるための効果音やBGMの代わりに、作品のための大事な要素として、「これでもかと言わんばかりに」ポップミュージックやロックをキャッチーに挿入させていきました。
このため、音楽が作られるのは映画本編が全て撮影が終わってから。
脚本家が本編のセリフや場面を補完・ブーストする歌詞を手がけることもありました。
実際にこの手法は功を奏し、若者を映画館に呼び戻すことになったと、1984年公開の映画「ストリート・オブ・ファイヤー」のサントラのライナーノーツにありました。
↓「フットルース」のサントラの帯にも、メディアミックスについて書かれていました。
米映画産業が課題をクリアした一方、米音楽業界もこのアクションを活用しました。
一本の映画のサウンドトラックから、何曲もシングルカットし、映画のシーンを多用してミュージックビデオを作り、それをMTVなどでオンエアしていきました。
イギリスに遅れをとっていたミュージックビデオにテコ入れでき、同時にプロモーションコストを抑えることにも成功したわけです。
また、そのことが映画の宣伝効果にもなり、結果、Win-Winでかつ、相乗効果を生みました。
1983年の「フラッシュダンス」の成功で、1984年は「フットルース」・「ゴースト・バスターズ」・「パープル・レイン」・「ストリート・オブ・ファイヤー」がこれにならい、以降、メディアミックス戦略を取り入れた映画は、定番の一つになっていきましたし、「ミュージカル」とは別に「音楽映画」というジャンルができたと言っていいと思います。
今後、「音楽映画自分史」として、それらの作品と挿入曲について、シリーズ化する予定です。
◯Irene Cara / Flashdance What A Feeling
https://youtu.be/ILWSp0m9G2U?si=dGA8QZN6Zkj9cnwj
◯Kenny Loggins / Footloose
https://youtu.be/wFWDGTVYqE8?si=RiqlsePZrwrLWAF3
◯Ray Parker Jr. / Ghostbusters
https://youtu.be/Fe93CLbHjxQ
◯Prince & The Revolution / Let's Go Crazy
https://youtu.be/aXJhDltzYVQ
◯Fire Inc./Tonight Is What It Means To Be Young
https://youtu.be/6eln48BCELk
1984年のビルボード年間チャートのトップ10は、以下のようになっていたようです。
トップ10内にはイギリス勢だけのアーチスト・バンドはカルチャークラブだけ、4曲がメディアミックス戦略と思われる曲になるほどに、米音楽は活気にあふれていました。
1.Prince and the Revolution / WHEN DOVES CRY(映画「パープル・レイン」)
2.TINA TURNER / WHAT'S LOVE GOT TO DO WITH IT
3.PAUL MCCARTNEY & MICHAEL JACKSON / SAY SAY SAY
4.KENNY LOGGINS / FOOTLOOSE(映画「フットルース」)
5.PHIL COLLINS / AGAINST ALL ODDS(見つめてほしい)(映画「カリブの熱い夜」)
6.VAN HALEN / JUMP
7.LIONEL RICHIE / HELLO
8.YES / OWNER OF A LONELY HEART
9.RAY PARKER JR. / GHOSTBUSTERS(映画「ゴーストバスターズ」)
10.CULTURE CLUB / KARMA CHAMELEON