【詩】怖くない

わたしの一番好きな音は　　ラ
シにもドにも行けるから
ドは物語の終わりも始まりも感じられるから
シは物語の終わりも始まりも教えてくれるから

一番嫌いな音は　　ラ♭
ラが葉っぱの表だとすると
ラ♭は裏

表は太陽の光をさんさんと浴びて
緑に輝くけれど
裏には葉を食べる青虫が隠れていて
葉脈を重たくする

例えばわたしは
ドドドド　ラーーー
と　元気よく朗らかに歌ったあと
ドドドド　ラ♭―――
と　沈んだ表情で歌ってみる

すると
青虫は頭をもたげて
こちらをみる

身体をくねくねさせるから
わたしは怖くなって
逃げてゆく

その時も
道端の石を意識する
石を踏むと音がする

石は一つじゃない
だから石同士でお話する
ミファソ　シーラ　ソーファ　ミーー
ミファソ　シーラ　ドーシ　　レーー

もう葉っぱから十分遠ざかったから
わたしは怖くない

青虫なんか