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「消えた窓辺」

大学を卒業して初めての引っ越し。慌ただしい荷ほどきを終え、夜になって窓辺に腰を下ろした。
そこには古いアパートの窓枠越しに、街の明かりが遠くぼんやりと見える。風が冷たくて、少し寂しかった。
翌朝、ふと壁に目をやると、昨夜の窓が消えていた。窓のあった場所はなめらかな白い壁になり、夢でも見たのかと思った。
けれど、あの窓辺で感じた冷たい風も、見えた街明かりも、やけにリアルで忘れられない。
あの窓は僕に何を見せたかったのだろう
――答えが出ることはなく、白い壁を背に、今日も暮らしが始まっていく。

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