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製造業におけるリモートワークの現実と課題。そしてゴリマスが望む未来。
私は元製造業のITエンジニアとして、長年現場で働き、デジタル化の波を目の当たりにしてきました。
近年、リモートワークが注目を集め、多くの企業で導入が進んでいますが、製造業においては導入が容易ではありません。
それをこれから解説して行きます。
若手社員の「リモートワーク」への関心
最近の若手社員は、リモートワークへの関心が非常に高いと感じています。
月に一度、彼らと面談する機会があったのですが、多くの若手社員から「残業時間の削減」や「自分のペースで仕事を進めたい」といった声が挙がっていました。
これは、若手社員の働き方に対する意識の変化です。かつては「会社のために」という意識が強かった我々の時代とは異なり、現代の若手社員は、自分自身の成長や充実した生活を重視する傾向にあります。
● 若手従業員は約6割が「フル出社」。しかし、その【8割】が出社頻度を下げたいと回答
● リモートワークを交えている人の方が出社へのメリットを多く感じている
● 若手従業員にとって「働き方の選択肢の多さ」は、働くモチベーションにも繋がる
イノベーションを牽引し、将来の成長を担う若手社員は、企業にとって貴重な存在です。しかし、彼らの声を軽視し、無視してしまうことは、企業にとって大きな損失につながります。
若手社員の意見を真摯に受け止め、企業としても柔軟な働き方を積極的に検討していく必要があります。
製造業におけるリモートワークの現実と課題
・現場作業の不可欠性
製造業は、どうしても現場での作業が不可欠な業種です。機械操作、品質管理、製品組み立てなど、リモートでは対応できない業務が数多く存在します。また、チームワークやコミュニケーションが重要な要素であり、リモート環境ではその維持が難しいという側面もあります。
・リモート導入コストの壁
一般的なインターネット環境とは異なり、企業や工場のネットワーク構築は非常に高額です。セキュリティ対策やデータ管理など、企業レベルのニーズに対応できるソフトウェアは、高額なライセンス費用が求められます。
数千人規模の企業では、ランニング費用だけでも年間1億円を下回ることは稀でしょう。
リモート環境の運用に必要なサーバーなどの設備投資も必要となります。サーバーの購入、設置、運用、保守など、多岐にわたる莫大な費用が発生します。
経営者がリモートワークを拒む理由
経営者にとって、リモートワーク導入には様々な懸念があります。
・社員間の不公平感
製造業では、現場で働く作業員(ブルーカラー)と、事務職やIT部門の社員(ホワイトカラー)が存在します。ブルーカラーの社員は出社しなければならないのに対し、ホワイトカラーの社員はリモートワークが可能な場合が多く、これが社員間の不公平感を生む原因となります。
企業にとって社員のモチベーション低下は大きな問題です。不公平感が蔓延すると、現場の作業員の生産性や士気が下がり、結果として全体の業務効率に悪影響を及ぼします。そのため、企業は「全員出社」を義務付けることで、この不公平感を解消しようとする傾向があります。
・生産性低下
リモートワークでは、社員が実際に業務を遂行しているかどうかを把握するのが難しくなります。すなわち、サボることを監視できなくなります。
また、リモートワークでは、対面での会話や現場の状況把握が困難になるため、業務の進捗確認や意思疎通の効率が低下するリスクもあります。その結果、リモートワークの導入が生産性向上につながるとは限らないのです。
IoT機器を活用し、カメラで監視したり、マウスやキーボードの動作をモニタリングしたりすることで労働状況を把握しようとすることもできます。
しかし、このような監視手法を回避する手段は多数存在するため、実際に生産性を維持できているのか判断が難しくなります。ITエンジニアはこれが大得意です。
・セキュリティリスク
リモートワークには大きなセキュリティリスクも伴います。特に、外部からのサイバー攻撃や情報漏洩の危険性が高まる点が問題視されています。実際に、過去にはKADOKAWAがランサムウェア攻撃を受け、多額の損失を被った事例がありました。
リモートワーク環境では、個人のデバイスを使用することが多く、セキュリティ対策が十分でないことが原因で情報が漏洩する可能性があります。また、VPNやクラウド環境の脆弱性を突かれるケースも増えており、企業は適切なセキュリティ対策を講じなければなりません。
製造業に望む、リモートワークの未来
技術革新や社会の変化に伴い、その可能性は確実に広がっています。
製造業におけるリモートワークには解決すべき課題が山積みですが、企業には勇気を持ってこの課題に向き合い、すべての従業員が納得できる働き方を実現してほしいと考えています。
リモートワークでは、従業員の自己管理能力が重要になります。
時間や場所に縛られずに成果を上げられるよう、成果報酬などの柔軟な評価制度を導入することで、働く意欲を高めるとともに、リモートワークの導入に対する不公平感を減らすことができるはずです。
熱い心を持った若者たちが、変化を求めていることを私は確信しています。
彼らが楽しく働ける環境を作ることが、今後の社会において重要だと強く感じています。
さいごに
製造業におけるリモートワークは、課題も多く、すぐに実現できるものではありません。しかし、現状に安住せず、積極的に新しい技術や働き方を導入することで、より効率的で柔軟な組織へと進化していくことが可能だと信じています。
これからリモートワークがどう変わっていくのか、とても楽しみです🦍