夏のベリーで作るノーベイクのサマースイーツ!残りもののパンでお手軽に&和の食材を使った焼かないタルト。
今年は暑さの影響で、山形のサクランボが不作とニュースで知ったのが6月下旬頃のこと。ちょうどその頃、紫色に熟し始めた我が家のブルーベリーを食べてみると、どれも水分のないスカスカの実ばかり。うちのブルーベリーも今年はダメかも・・・とあきらめていたところ、7月半ばになってようやく、いつもの食感の実がなり始めました。
ところがほっとしたのもつかの間、今度は鳥たちがやって来て、ブルーベリーの細い枝をゆさゆさと揺らしながら熟した実をつつき始めたではありませんか!
長年ブルーベリーを育てていて、これまで鳥に食べられたことはなかったのですが、今年の猛暑で鳥たちも食べるものに困っていたのでしょうか・・・。
やがて7月も半ばを過ぎて、ブルーベリーも終わりに近づくと、今度はブラックベリーが紫色に熟し始めます。
ブルーベリーとブラックベリーが同時に熟す期間は短いのですが、毎年、その絶妙なタイミングを狙って作るのが、サマープディングです。
サマープディングはイギリス伝統のお菓子の一つ。夏に実るさまざまなベリー類をたっぷり使ったスイーツです。私はうちの庭に実るブルーベリーとブラックベリーで作ります。
ちなみに私が長年愛用している伝統的なイギリス料理のレシピ本には、ベリー類の中でもブラックベリー、ラズベリー、ブラックカランツ、レッドカランツ、ビルベリーの中のいずれかを使うと書かれています。
ブルーベリーがリストに含まれていないのはちょっと意外な気がしますが、北米原産のブルーベリーがヨーロッパに持ち込まれたのは1900年代初頭とのこと。実はイギリスでも比較的新しい食材のようです。
これまでの備忘録でも少し触れましたが、私はイギリスの中近世の文学に登場する料理について研究していました。確かに当時の料理本を見てみると、ブラックベリー、ラズベリー、ストロベリーなどを使ったレシピはありますが、ブルーベリーの名前は見当たりません。
一方、ブラックベリーは古くからイギリスの庶民の暮らしに根付いていたようです。農業経営に関する年間の作業スケジュール(農作業・家畜の飼育・祭事などに関する作業など)についての詳細を記した当時の文献には、ブラックベリーの種を蒔き、つるを這わせて柵を作る時期などが書かれています。
ちなみにこの文献にはブラックベリーではなく、ブランブル(スペルはbremble)という呼び名が使われています。実は今でもイギリスではブラックベリーをブランブル(bramble)と呼ぶことがあるようです。数十年前にイギリス人の友人がブラックベリーの茂みを指さして「brambles!」と教えてくれたのが、私にとって初めてのブラックベリーとの出会いでした。
いつものように話が少し逸れてしまいましたが、備忘録としてサマープディングについて、作り方などを簡単に記しておきたいと思います。
サマープディングを上手に作るポイントは、とにかく古くなってパサついたパンを使うこと!とはいえ、無添加のパンは夏場はカビやすいので要注意です。
【サマープディングの作り方】
1)夏に実るベリー類(ブラックベリー、ブルーベリー、ラズベリーなど)を複数種類用意する。ベリー類は冷凍でもOK(冷凍のイチゴを加えてもOK)。
2)ベリー類にレモン果汁(オレンジ果汁でもOK)を加えて柔らかく煮る。ベリー類はゴロゴロ感が残っているくらいがちょうど良い。最後に火を止めてハチミツを加えて混ぜる。
*ベリーの煮汁をパンに染み込ませるので、煮詰め過ぎないように注意。煮汁が充分に残るよう火加減を調節します。
*伝統的なレシピではハチミツではなく砂糖を使います。砂糖を使う場合には、前日からベリーに砂糖をまぶして冷蔵庫で寝かせます。翌日、ベリーから出た水分ごとベリーを煮ます。ハチミツではなく砂糖を使えばビーガン/プラントベースのスイーツに!
*私の場合は砂糖は使わず、非加熱のハチミツを使うので、ハチミツは火を止めてから一番最後に混ぜます。
3)食パンは薄くスライスして耳を全て切り落としておく。
*焼きたて・買いたてではなく、古くなって乾燥気味の食パンを用意すること。古くなってパサついたパンを使う理由は、乾燥しているほどベリーの煮汁を吸ってくれるから。イギリスの食パンは一般的に薄切りでキメが粗いので、ベリーの煮汁をしっかりと吸収してくれます。
一方、日本でよく売られている厚切りでキメの細かいモチモチの食パンは煮汁をなかなか吸収しないので、こちらのレシピには向かないかもしれません。市販の食パンで作る時はできるだけキメの粗そうなものを選ぶのがポイントです。
4)サマープディングを作る型を用意する。
型の底のサイズに合わせてカットした食パンを敷く(完成したプディングを型から取り出した時、底が上になります)。
型の側面にも同様にスライスした食パンを敷く。多少重なっても構わないので、底も側面も隙間がないようにパンを敷き詰める。
5)食パンを敷き詰めた型に煮たベリー類を煮汁ごとたっぷり詰め込み、スライスしたパンで蓋をする(型から取り出した時に蓋の部分が底になる)。*市販の日本の食パン(白パン)を使う場合には、染み込みにくいので、さらに蓋や側面に煮汁をかける。
6)食パンで蓋をしたプディングの上にラップなどをかぶせて、その上に重石を置く。
*重石はどんなものでもOK。重石を載せることで、食パンにベリーの煮汁をしっかり染み込ませます。
7)冷蔵庫で一昼夜寝かせる。蓋や側面の食パンにベリーの煮汁が充分染み込んでいれば完成。出来上がったプディングを型から逆さまに取り出して器に盛りつける。
こちらのサマープディング、私は自家製の全粒粉100%のパンを使って作っていますが、イギリスの伝統的なレシピでは白い食パンを用います。白パンの方がベリーの色が綺麗に出ます。
自家製の全粒粉100%のパンについてはこちらの備忘録もご参照頂ければ嬉しいです!
イギリスでは、サマープディングに生クリームやアイスクリームを添えたりします。私は乳製品の代わりに、今年の春に庭で採れたバラで作ったジャムをトッピングしてみました。
バラのジャムに関する備忘録はこちら↓
もちろん私はカットした食パンの耳も余さず食べます!
食パンの耳とベリーの煮汁の残りを使って、小さなサマープディングを作ります。
作り方は簡単。
小さめの型(プリン型でもお椀でもOK)にカットしたパンの耳を入れて、ベリーの煮汁をかけ、しっとりするまでしっかりと混ぜます。パンの耳が崩れてクタクタになるくらいでOK(市販の食パンの耳は固いので、予め細かくカットしておくと崩れやすいかも)。煮たベリーの実も残っていたら、それも一緒に混ぜてしまいます。煮汁やベリーがまんべんなくパンの耳に混ざって、パンにしっかりベリーの色が移ったら、ラップをかけて上から押さえて、型の中にパンの耳をしっかり詰め込みます。
冷蔵庫で冷やし固めたら、型から逆さまに取り出して、お皿に盛りつけます。
あくまで「もったいないレシピ」なので、見た目はいまいちですが、自分のおやつ用には充分です!
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ところで話が前後しますが、7月初旬、ブラックベリーよりも先に熟したブルーベリーだけを使って作るお菓子もあります。
和の食材を駆使して作る、焼かないブルーベリータルトです!
こちらのブルーベリータルトは甘味付けにハチミツではなく甘酒を使うので、ビーガン/プラントベースのスイーツとなります!
タルト生地にはったい粉(麦こがし)を使うことで、ノーベイクのタルトを作ることができます。はったい粉は大麦やはだか麦を焙煎して粉にしたもの。既に火が通っているので、焼く必要がありません。
ちなみに私がいつも使っているはったい粉は、はだか麦にハト麦がブレンドされたものです。
はったい粉を使ったお菓子はこちらも参照ください↓
それでは、ノーベイクのビーガン・ブルーベリータルトの作り方を・・・。
【ビーガン・ブルーベリータルトの作り方】
まずはタルト生地から:
1)タルト型に応じた分量のはったい粉(麦こがし)を用意。
ボールにはったい粉(麦こがし)を入れて熱湯で練る。
さらに濃厚(濃縮)甘酒を加えて練る。
*甘酒は甘味付けですので、お好みで。
*水分を加えすぎるとベトベトになって生地がまとまらないので、乾燥気味から始めて少しずつ調整する。湿った粉がボールにくっつかない程度の湿り気で充分なので、とにかく生地をまとめて丸めることができればOK。
2)生地を丸くまとめたら、タルト型より少し大きめにのばす。
ベイキングシートを敷いたタルト型に生地を敷く。
タルト型に生地を敷いたら、ラップなどをかけて乾燥を防いで冷蔵庫で冷やしておく。
次にタルトの中身を作ります:
3)炊いたキビに濃縮甘酒を加えて潰すように混ぜる。しっかり潰すことで、クリーミーに仕上がります。
*甘酒の量はお好みで。
*仕上げにココアパウダーを加えても美味しいです!
キビは倍量くらいの水で芯がなくなって柔らかくなるまで炊くだけです。途中、様子を見て水分が足りなければ足してもOK。それほど気をつけることもないのですが、よろしければこちらもご参照ください(キビに粟をブレンドしたレシピですが、炊き方は同じです)
5)タルト生地の中にキビを詰めて、少し盛り上がるように形を整える。
*炊き上がったキビに生のブルーベリーやくるみを混ぜると色々な食感が楽しめてさらに美味しい!
6)トッピングに生のブルーベリー(生のイチゴやドライフルーツなどもOK)を並べる。
7)冷蔵庫で冷やし固める。
8)しっかり冷えたら、型から取り出して盛り付ける。
ブルーベリー以外の新鮮な果物やドライフルーツで作っても美味しいです!
こちらは、庭のブルーベリーが実る前に、冷凍ブルーベリーとドライいちじくで作りました。
庭で育った花や果樹の収穫、そしてそれらを使ったお菓子や保存食作りは、5月のバラに始まり、6月のラベンダー、7月のブルーベリーとブラックベリーまで3か月連続の作業となります。春から夏にかけてちょっと慌ただしいけれど、それが終わると冬の金柑まで、しばしのお休みです・・・。
ラベンダーに関する備忘録も、ご覧いただけると嬉しいです!
よろしければ、金柑の備忘録も是非!