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ストーリー作り|学びの記録.05 主人公の内面的問題を深掘りする

読者の感情移入を得るためには、主人公の「内面的問題」を軸に物語を展開させると効果的です。そもそも、物語というのは、主人公が「自分が信じていたもの」に疑問を抱き、その信念とどう向き合っていくかの過程を描くことです。これは、単に外的な障害を乗り越えるだけでなく、内面で抱える問題や信念に立ち向かい、過去の出来事を再評価するという内面的な闘いを通じて成長していく姿です。

物語の進行において、プロットが主人公を追い詰め、逃げるか立ち向かうかを選択する状況を作り出します。そして、それまで当たり前のように信じていたものが、実は主人公の成長や幸福を妨げていたり、本当のゴールを見失わせていたりするのです。

こうして主人公は過去の経験や信念を再評価することを余儀なくされ、物語は次なる展開に進みはじめます。結果として、過去が異なる視点から意味を持ち、主人公が物語を通して成長し、深い変化を経験するきっかけとなります。

また、物語を構想する際に主人公がどのようにして信念を抱くようになったかを振り返ることで、キャラクターの成長に一貫性が生まれ、読者の共感を得やすくなります。

今回は、主人公の内面的問題を表現することで、読者の共感を引き出す方法を学びました。


効果的なスタートの作り方

物語の本質は、避けがたい問題に挑む人々を描くことにあります。特に、「これは何の物語?」「なぜ今なのか?」、この問いに明確に答えられないと、物語が読者に響かなくなってしまいます。

また、キャラクターを描く上で、背景や性格の設定が固まっていないと、ストーリーが不自然なものになりがちです。多くの作家はキャラクターの細かな経歴を省きたがるかもしれませんが、これがむしろ物語の理解を曖昧にする原因にもなりかねません。特に重要なのは、主人公の世界観や望みが歪んだ瞬間、あるいはその過去の出来事が彼らの行動や選択にどう影響するのかを明確に描くことです。

物語は、長い間対立してきたふたつの要素が浮上し、主人公が避けられない行動を起こさざるを得なくなる場面から始まるのが理想的です。初期の段階で物語の概要やキャラクターのバックグラウンドを固めておくことで、より魅力的な物語が生まれるでしょう。

物語の起点やキャラクターの背景を深く理解して書き始めることが、読者に共感をもたらし、物語に対する興味を引きつけるための強力な武器となるのです。

登場人物の「経歴の書き方」3つのポイント

物語を魅力的なものにするためには、登場人物の経歴や背景が欠かせません。作中の人物をリアルに感じてもらうためには、単なる設定にとどまらない、より深い情報の構築が必要です。ここでは、登場人物の経歴を描く際に押さえるべき3つのポイントをお伝えします。

1.変化を軸に過去を探る

物語は「変化」を描くことがその本質です。登場人物の経歴を書く際には、「何が登場人物を変えたのか」を意識してみましょう。主人公が現在の状態に至るきっかけとなった「物語前の出来事」に焦点を当てることで、読者は主人公がどれほど成長したかを知り、物語の進展に納得を持ってついてくることができます。

2.登場人物の心理を深く掘り下げる

現実では触れたくないような個人的な部分にこそ、物語の魅力が宿ることがあります。登場人物の過去を探るときは、思い切ってプライベートな質問を投げかけ、品性に遠慮せず掘り下げましょう。登場人物の欠点や弱点、隠したい秘密や見せたくない一面を描くことで、彼らが「血の通った人間」として成り立つのです。人間らしい姿に触れることで、読者は登場人物の奮闘に感情移入し、物語への没入感が深まります。

3.主要登場人物全員に短い経歴を用意する

すべてが作中に登場しなくても、主要キャラクター全員の経歴を作成しておくことは、登場人物の行動や思考に一貫性を持たせるうえで非常に有効です。登場人物の行動や信念には必ず根拠があります。登場人物が何を求め、なぜ行動するのかを把握することによって、彼らのモチベーションを自然に表現できるようになるのです。物語の中で、主人公が自分の行動の本当の理由を知り、それが良いものであれば喜び、悪いものであれば変わろうとする様子を描くことが、物語の深みと共感を生み出します。

このようにして登場人物の経歴を丁寧に掘り下げることで、物語の奥行きが増し、読者がキャラクターに感情移入しやすい物語を描けるようになります。

物語に必要な「登場人物の経歴」は絞って伝える

登場人物の経歴を作る際に注意すべきことがあります。登場人物の深みを生み出すのは重要ですが、キャラクターを形作る背景や詳細は何でもかんでも盛り込んでいけばいいというわけではないのです。無関係な情報は、かえって読者の、時には作者自身の理解をも妨げてしまうことがあります。

キャラクターのバックグラウンドを描くとき、まずは以下の2点だけを軸に考えましょう。そこから、物語に必要な設定(仮に作中に登場しなくても)を肉付けしていけばいいのです。繰り返しますが、物語に無関係な情報はここには不要です。

1.内面的問題の引き金となる出来事

人気作品では、主人公が抱える内面的な問題や、物語の障害となる歪んだ信念・葛藤が、過去のある出来事をきっかけとして生じている場合が多いです。たとえば『鋼の錬金術師』では、エドワードとアルフォンスのエルリック兄弟が、亡き母を生き返らせようとして人体錬成に失敗し、エドワードは片足と片腕を、アルフォンスは全身を失います。この過去の失敗が彼らの信念や行動の原動力となり、物語の大きなテーマとして影響を及ぼしています。

2.ゴールを求めるようになったきっかけ

主人公が物語のゴールを追い求めるに至った理由は何か、その発端も重要です。これは時に、内面的問題の引き金と一致することもあり、物語全体に通じるテーマやキャラクターの成長の道筋を示す要素となります。

物語を進める中で、これらの要素があからさまに説明される必要はありません。キャラクターがその信念に従って行動する姿勢や言動から、読者は自然と主人公の背景を理解することができるのです。主人公の過去や信念の「きっかけ」となる出来事を見つけ、それが物語の進行にどう影響するかを考えることは、作品に深みを与えるうえで不可欠です。

主人公の学びが読者を引き込む

ストーリーが進むうちに新しい展開が見えてくることもありますし、計画を変更することでさらに魅力的な物語が生まれることもあります。だから、必ずしも結末を細部まで決めて物語を描く必要はありません。しかし、物語を通して「主人公が何を学ぶのか」を決めておくことは必要です。

物語作りにおいて最も大切な準備は、「主人公の世界観」を明確に知っておくことです。具体的には、どこで、なぜ主人公の世界観がゆがんでしまったのかを把握しておくことで、彼らが物語中で何を見て、どのように反応し、成長するのかが描きやすくなります。

さらに、物語の進行に伴い、主人公が最初に信じていた価値観や信念を考え直さなければならない状況を生み出すと、読者がより引き込まれる状況を作り出すことができます。主人公の内面的な成長が描かれる物語こそ、読者が感情移入して、先を読み進めたくなる要素を持つのです。

主人公の内面の問題を掘り起こすチェックポイント

1.物語の始まりのきっかけを明確にする

物語がなぜその場面から始まるのか、主人公が行動を起こさざるを得ない理由や状況をしっかり把握しましょう。物語の中で「時計が動きだす瞬間」を意識し、主人公にとって避けられない出来事や衝動が何であるかを設定します。

2.主人公の内面の問題を掘り下げ、独自の恐れや望みの根源を特定する

主人公が抱える内面的な問題や葛藤の根源を突き止めます。それは主人公の過去に起こった特定の出来事であることが多く、物語が始まるまでにその問題がどのように主人公の望みを妨げていたかを理解しましょう。

3.登場人物の深い秘密を明らかにし、曖昧さを排除する

登場人物たちが抱える「最も根深く暗い秘密」を把握することが求められます。これにより、彼らの行動や心理が説得力を持つようになります。読者は細かな矛盾や曖昧さにも敏感なため、キャラクターの行動に矛盾が生じ、それを作中で説明することができなかった場合、物語を読み進める集中力が途切れてしまいます。

4.具体的な過去の出来事を思い描き、主人公の経歴を構築する

主人公のバックグラウンドを描くときは、物語に関係する具体的な出来事をしっかり描写できるようにしましょう。目を閉じたときにその場面が鮮明に浮かぶくらいの詳細さが必要で、そうすることで「物語前」と「物語後」の違いが際立ち、主人公の変化や成長を測る指標が生まれます。

5.物語が進む方向性を意識し、序盤で未来の伏線を張る

物語を進める上で、結末が完全に決まっていなくても、どこへ向かうのかという手がかりをある程度持っておくことが大切です。物語の最初の段階で伏線や重要な要素を配置し、読者が物語全体の方向性を感じ取れるようにすると、ストーリーがスムーズに展開します。


読者の心を引き込むためには、主人公の内面的な問題に焦点を当てることが重要であると学びました。
物語の始まりでは、なぜ主人公が行動を起こすのか、その「きっかけ」を明確にし、物語の軸を定めます。また、主人公が抱える恐れや望みの根源を掘り下げることで、キャラクターの行動に一貫性が生まれ、説得力のあるストーリーが展開できます。さらに、物語が進む方向をある程度意識し、初期段階で未来の伏線を張っておくことで、読者の期待を高める効果があります。
これらの要素を活用して、読者に共感を呼び起こす物語を構築していこうと思います。


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