袖摺れメトロポリス・東京
飛べんの? ……と思いながら吹雪く千歳でシートベルトを締め、目を覚ますと、羽田の滑走路の鼠色が窓の外にあった。まるで別世界だ。
だまって外の景色を眺めていると、風の色なんか見えっこないのに、東京の風も冷たいんだろうな……という感覚を抱いた。
東京は、住む場所でなく遊ぶ場所だとか、人のふれあいがないとか、あちこちで好き勝手に語られることが多いけど、そうなんだろうか。
確かに満員電車も人混みも、みな互いに関心なんか抱かずに、肩と肩が触れ合うか触れ合わないかくらいの距離感で、すれ違ってゆく。
でも、必ずしもそんなこと言い切れないでしょ。
胸の中で独り言ちて、流れてきたスーツケースをベルトコンベアから引っ張り上げて、到着ロビーに出た。
こちらに向かって、表情をほころばせながら子供のように手を振る、恋人がいる。
ほら。
大好きな誰かがいれば、どこでも、帰るべき場所になるからさ。
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