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波佐見の空気が、我が家に届いた

お土産を選ぶ時間が、好きです。出張で地方に行けば必ず、職場と直近で会いそうな人へのお土産を購入します。なんというか……その、選んでいる時間が、好きなんです。

でも、モノを選ぶのは難しい。かさばるし、センスも問われるし、もし相手が気に入らなかったり既に持っていたりしたら扱いに困ってしまうだろうし……。結局いつもお菓子やおつまみを買っています。「花より団子」で食いしん坊な私は、これまでそれが正解だし、喜ばれるだろうと思っていました。

けれど先日、自分がお土産をいただいて、「モノって、いいなぁ」と思うようになりました。

・・・

「これ、波佐見のお土産です」

打ち合わせで高円寺の喫茶店に入ってすぐ、そういってコスモ・オナンちゃんが紙袋を渡してくれたとき、一瞬「へ?」となりました。前週、田所敦嗣たどころ あつしさんと波佐見に暮らす栗田真希くりた まきさんとの3人で、波佐見の旅をしていたオナンちゃん。その様子はたくさんnoteやTwitterで届けてもらっていて、私にとってはそれが十分なお土産だったからです。

それからじんわりとうれしさが広がってきて、ちょっとソワソワしました。なんで人間には尻尾がないんだろう。尻尾があったら、ユッサユッサ揺らしているのに。

その場でそっと紙袋をのぞいてみると、思っていたよりも大きな箱が。これは……これは、お菓子では……ない! きっと、波佐見焼はさみやきだ! 驚きで、ドキドキしました。ソワソワが加速。尻尾があったら、一瞬ピンっと立って、それからブンブン振り回しているのに。

薄く透ける紙と紐でおしゃれに包装されていました

「あの、えっと、今ここで開けようか家で開けようか迷ってるんですけど」
「はい(笑)」
「ああ、でも、せっかくおしゃれな包装で。ここで開けちゃうと戻せなさそう……」
「そうなんですよ。お店の人が器用に、綺麗にささっと包装してくれて」
「もったいないので、帰ってからの楽しみにして、家で開けますね!」
「全然、どうぞ(笑)」

それから打ち合わせが終わるまでは椅子の背もたれと自分の間に、電車ではずっとお腹に袋を抱えていました。

・・・

帰宅後は、うがい手洗いもそこそこに、バッと紙袋から箱を出しました。「正方形の箱だから、丸いお皿かなぁ」なんて考えながら、できるだけ丁寧に包装紙を外していきます。

でも、薄い紙だから失敗してしまって、すぐにビリっと破けてしまいました。ああ、やっぱり、こうなる。お土産やプレゼントをもらったときって、その場で開けて一緒に見ようかいつも悩むのだけど、今回は家で開けるのでよかったかも。ちょっと笑ってそんなことを思いながら、中の箱を開けると……

「わっ……!」

出てきたのは、とっても鮮やかな黄色と、「陶器」の印象が変わるような透明感と艶のある白の、ちょっと変わった形をした波佐見焼。

何かのオブジェかな……と考えながら持ち上げてみて、さらに驚いたのが、薄い花瓶だったこと。これまで見たことのないデザインです。栗田さんが波佐見焼について「現代的」「シンプルでおしゃれ」「普段使いしやすい」と話していた(か、書いていた)ことがあるけれど、それってこういうことだったのか……!とストンと納得しました。

どこに飾ろう?と部屋の中をキョロキョロ見回してみて、すぐに一枚の絵の前に置きました。知人が描いた水の絵で、光に当たると水紋のように銀の輪が浮かび上がる一枚です。最初からそこに置かれることがわかっていたかのように、絵画の青に、つるんとした白と黄色が映えました。

この鮮やかな黄色は、きっとオナンちゃんが波佐見で見てきた景色なんだろうな。絵の青と重なって、波佐見の海と夕焼け空に響く3人の和やかな笑い声が聞こえてくるような気がしました。

・・・

お土産を買おうと思ってもらえたことが、うれしかった。

数ある波佐見焼の中で、この一作を選んでくれたことが、うれしかった。

お土産を選ぼうと思ってくれた、それは私の欠片をオナンちゃんが波佐見に持って行ってくれたということで、そのことがうれしかった。

選んでくれている時間、その時は私の一部も一緒に波佐見にいたということで、それがうれしかった。

波佐見の空気が、3人の旅の一欠片が、私にも渡ってきたことがうれしかった。

ほんの少し、心だけ、一緒に旅して感じられたような気がして、うれしかった。

その感覚が、空気が、モノとしてこれからも我が家に残ることが、うれしかった。

ああ、形残るモノをお土産でもらうって、こんなに「うれしい」が、いっぱいなんだ。そんな発見が、うれしかった。

・・・

今度は、私も旅に行こう。

そうしたら、オナンちゃんや大切な友人たちへ、お菓子だけじゃなくて、何か形残るモノをお土産に選ぶんだ。

オナンちゃん、ありがとう。


波佐見を旅した3人のnoteはこちら


記事内の写真は、かつおさんこと仁科勝介にしな かつすけさんがこちらで「影が写り込んでしまうなら、お部屋の電気を消して窓際の自然光で撮れば、それだけで、ほぼ解決するはずです。」と話されていたのを参考に、電気を決して撮影しました。本当に、影が写り込んでない! それに自然光なので、明るさを調整するときも変な色みが入りにくいと感じました。

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