大掃除 出てきた革の鑑札入れ 懐かしい匂い 「くしゃい」と泣き笑い
玄関の小物入れを掃除していたら、古い方の鑑札入れが出てきた。
スナップの部分はくすんでしまっているし、皮革の手触りも、もう硬い。
開いてみると、私の携帯の番号が刻印されている。
もし迷子になったら、すぐに電話をもらえるようにしておいたものだ。
固まって付いていた毛を指でそうっと取り除き、鑑札入れを両手に包むようにして鼻を近づけてみる。
匂いを嗅いでみる。
あの子の匂いだ。
なんとも言えない、犬の匂い。
背中や首に鼻をうずめて息を吸ってみたのときの、あの匂い。
まだまだ強烈に残っていた。
この匂いに、もう10ヵ月近く、離れていたんだな。
写真やビデオで見る姿とも違う。
服についたままの毛の感触とも違う。
それは、匂い。
嗅覚はぐっと記憶を呼び戻す。
まるでそこにまだ生きているかのような。
「くしゃい。懐かしいねぇ」と独り言ながらえへへと笑う。
そうしてね。
やっぱりね、泣いてしまった。
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