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性暴力のない社会をつくるために|山本潤さん講演会@京都華頂大学

(公財)京都市男女共同参画推進協会では、2015年(平成27年)から性暴力被害について理解を深め、性暴力を許さない社会を作るための「性暴力被害者支援事業」を行っています。様々な人と出会う時期こそ性暴力について知って欲しい!ということで、京都市内の大学と連携し、授業で性暴力被害者支援看護師(SANE)の山本潤さんの講演会を行いました。その模様をレポートします。

今回お邪魔したのは京都華頂大学・短期大学です!

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知恩院の古門の中にあるキャンパス。周囲にも京都らしい風景が広がっています。思わず見ほれるような秋晴れです。

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講師は、性暴力被害者支援看護師(SANE)の山本潤さん。
2017年に性被害当事者による団体、一般社団法人Springを立ち上げ、性暴力被害や「性的同意」への理解を広める活動に取り組まれ、110年ぶりの2017年の刑法性犯罪改正にも尽力されました。

現在は性犯罪の法整備に携わり、法務省の法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会委員も務められています。ご著書『13歳、「私」をなくした私 ―性暴力と生きることのリアル―』で語られているように、性暴力被害のサバイバーでもある山本さん。山本さんに講師をお願いするのは今年で5年目です。

講義にはたくさんの学生の方に参加していただきました。

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今回の講演タイトルは「性暴力のない社会をつくるために~今私たちにできること~」

「これからを生きる皆さんや、関わる子どもたちや仲間たちが、もしかしたら性暴力被害を受けるかもしれない。加害をするかもしれない。性暴力とは何か、もしもの時どのような対応をすればいいのか、加害者が責任を取る社会を作るにはどうすればいいか、この機会に学んで考えて欲しいなと思います」という山本さんの言葉からお話が始まりました。

性暴力=「同意のない性的言動」すべて

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最初に山本さんが強調されたのは、性暴力とは「同意のない性的言動」すべてだということ。どんな関係でも、顔見知りや恋人・家族間であっても、いつどのような場所でも起こり得てしまうのが性暴力です。

無理矢理に性交等をされた経験を持つ人は女性の14人に1人、男性は100人に1人というデータ(2020年,内閣府)が紹介され、その予想以上の数の多さに驚く声も。しかし、自分の身に起こったことが「性暴力」だと気づくこと自体が難しい中で、警察に届け出たり、加害者を起訴したりすることのハードルは非常に高いです。つまりこの数はあくまで氷山の一角。

続いて、加害者の88.9%が被害者の知り合いであるというデータ(2020年,内閣府)が紹介されました。日常生活の中で上下関係を作り上げていき、徐々に逃げ道をふさいだ上で性交を強要する「エントラップメント(罠)型」と呼ばれる被害も見られています(→★『性暴力被害の実際』2020)。

大事なのは、お互いの性的発達、知識に差がない真の同意があること。対等な関係のもと、強制性がないこと。そうではないものは全て「性暴力」だという認識を広めることが必要だ、と山本さん。性暴力は想像以上に身近なのです (→★「性的同意」については当協会の『Gender Handbook』をお読みください)。

背景にあるのは、ジェンダーの不平等

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性暴力被害は被害者に対して、長きにわたる多大な”恐怖”と、深い傷を与えます。
被害の最中に抵抗することはとても難しく、恐怖心から何とか事を荒立てまいと柔和な反応をしたことで、「(行為を)受け入れていたんじゃないか」と後から責められるという理不尽なことも起きている、と山本さんは言います。多くの被害者は長きにわたるトラウマ(心的外傷)に苦しめられ、自殺・自傷の発症率は2.5倍~8倍と言われます(2013年,2014年,WHO)。

どうして性暴力が起こり続けていて、有効な対策が取られずに被害が軽視され続けられているのか。それは、性暴力がジェンダー・ベースド・バイオレンス(社会的性差をもとにした暴力)だからだと、山本さんは語ります。

ジェンダーギャップ指数で153か国中121位(「Global Gender Gap Report 2020」)の、ジェンダーによる格差や差別が非常に根深い日本社会。そんな男性優位社会の中では、女性被害者の声を封じ込める圧力も根強く、被害者が被害を訴えることが困難であることはもちろん、被害者が非難されることすらあります。

ジェンダーの不平等は、男性被害者の「声の上げられなさ」にも影響を与えます。例えば2017年までは、男性が性暴力の被害にあっても「強姦罪」として認められませんでした(現在は改正)。これも「(権力を持っている)男性は性暴力の被害者にならないだろう」という制度による性差別です。

性暴力が法律的にも社会的にも軽んじられているせいで、女性はもちろん、男性や、セクシュアルマイノリティの性被害も見えなくさせられていると山本さんは言います。性暴力被害を許さないための声を上げると同時に、不平等なジェンダー構造自体も、変えていく必要があるのです。

「あなたの自由意思」を保障する社会に

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インターネットやSNSの普及による「デジタル性暴力」(性行為を撮影した動画が許可なくネットで拡散される、自分の画像が無断で加工され販売された…等)や、盗撮被害など、様々な形で日常生活に性暴力が溢れている今。

しかし、刑法性犯罪を実態に沿ったものへと変えるための動きも確実に起こっています。山本さんは、同意していない、意思に反した性交を「性暴力」だと認め、法的に罰する「不同意性交等罪」の要件を求めています。

性的行為は自由意思によって行われるべきもので、そのことを法と社会が保障することが重要です。残念ながらまだこの社会は、みなさんのその権利を守れていません。しかし、日本でも刑法性犯罪改正の議論が始まり、私のような被害当事者も委員として呼ばれるなど、少しずつ変化しています。これからの長い人生で思いもよらないことに遭遇するかもしれないけれど、あなたの身体、あなたの性、あなたの意思はあなたのものです。他の誰にも何も言われる筋合いはないんです――そのことを今日の授業で学んでくれたら嬉しいです」

講演後も、終了時間ギリギリまで学生の方から多くの質問が寄せられました。

京都華頂大学には「現代家政学部」が設置され、保育士の免許を取得する学生さんも多くいるとのこと。自分のために、誰かのために、そして未来の子どもたちのために、性暴力を許さない社会を作ることの大事さが少しでも心に残ってくれたら嬉しいです。

山本潤さん、京都華頂大学の皆さん、ありがとうございました!

●知っておきたい相談窓口●
・性暴力被害相談の全国共通短縮ダイヤル  #8891
産婦人科医療やカウンセリング、法律相談などの専門機関と連携した最寄りのワンストップ支援センターに繋がります。
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/consult.html

作成・編集:公益財団法人京都市男女共同参画推進協会
京都市男女共同参画センター ウィングス京都 https://www.wings-kyoto.jp/



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