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「循環管理」のうち、「血液」の部分

 さて、何度か「volume control」として述べてきたことですが、循環管理についての話になります。

 全身の組織が求めている酸素を不足なく届けるために循環管理が重要です。ワッサーマンの歯車でいうところの「心臓・血液」にあたります。

血液(ヘモグロビンが大事)

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 酸素を運ぶのは血液中のヘモグロビン(Hb)であることはほとんどの方がご存じと思います。
 ややこしいのですが、酸素などの気体は「血液のような液体」にも一定量溶けることができます。しかし、その総量があまりに少ないため、もっと効率よく運べる仕組みとしてHbがあるのです(それでも、できるだけ多くの酸素を溶け込ませようと思えば、高気圧酸素治療を行うこともあります)。


 Hbの利点は、細かいことを言い始めるとキリがありませんが、「肺で酸素を効率よく取り込み、組織で効率よく酸素を手放す。」ことができる点につきます。
 多くの場合、肺でHbの約98%が酸素化された状態(SaO2(≒SpO2) 98%)となり、組織で酸素を手放した後、75%のみが酸素化された状態(SvO2 75%)で心臓にかえってきます。手放したこの差分の約23%程度の酸素が組織に行き渡ったわけです。

(※ 最近、Apple Watchで血中酸素濃度が測れる、と言われているのが、このSpO2に限りなく近いものだと思って差し支えありません)。

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(エドワーズライフサイエンス社 ECCS AtoZより)

 ここで重要なのが、Hbの値(血液中のヘモグロビン濃度)になります。
 貧血(Hbが低下)になるとその分、沢山の酸素を組織に送り届けるのに余分な負荷がかかります。
 どこに一番かかるかというと、「心臓」です。Hbが薄くなった分、割を食って心拍出量を増やさなくてはいけなくなります。
 もしくは、それで間に合わなければ、どこかの組織が酸素を消費しなくてもすむ様にしなくてはいけません。末梢が冷たくなるのは重症ですが、軽症でも「労作時の息切れ」として症状が出ます。心不全の症状と一緒ですね(医学生であれば「高拍出性心不全」という言葉を聞いたことがあるかも知れません)。

 集中治療室における全身管理では、輸血は(合併症はあるものの)比較的「ポップ」に行われることだと思います。これは、なによりも、「貧血改善の重要性」があまりにも高いことに関係しています。

 「血液」に関してお話することで輸血の重要性を知っていただいたかと思います。具体的な戦略などはまたこれから、一通り簡単な解説を終えてからにしたいと思います。

輸血は、Hb値を増やすだけの行為ではない

 最後に、輸血は、「前負荷を増やす」行為にもなるため、循環に影響します。その上で、「前負荷過剰」となれば呼吸状態にも影響します。これをTACOといいます。輸血合併症のTRALIは呼吸に影響を与えます。頭の片隅にでも入れておいていただければと思います。


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