心臓の解剖は「骨格」から②
前回の記事、
で、冠動脈の走行や、心臓のど真ん中にある大事な骨格構造のイメージはつかめましたか?実は、この心臓の「骨格」の中にもうひとつ書き加えて欲しい構造物がひとつあります。何でしょうか?
さあ、この絵を見てください。違いに気づきますか?冠動脈の付け根に「もう一つ弁がある」ことに気づきましたか?
「心臓の骨格」の中にある「大動脈弁」と
「心臓の骨格」からずれている「肺動脈弁」
大動脈弁の当たりから、左右の冠動脈が分岐していることはご存じですよね?ということは、上図のあたりに大動脈弁があることには納得いただけると思います。
つまり、大動脈弁は、この「骨格」上にあるのです。よく医師国家試験の解剖系の問題でも「僧帽弁と大動脈弁は線維性連続がある(Aortomitral continuity」が出題されますよね。左心系の大動脈弁と僧帽弁はくっついているという感覚は非常に大事です。これは右心系の三尖弁と肺動脈弁には成り立たない法則です。心エコーの長軸像はみなさん見慣れていますか?
大動脈弁と僧帽弁が、隣り合っていることがよく分かると思います。
「人体の正常構造と機能 循環器」より
「円錐部」が残存することで、弁同士が隣り合わない右心系
逆に、右心系の解剖では、肺動脈弁が他の3つの弁よりも高い位置にあることが分かると思います。これは、「肺動脈円錐(conusコーヌス)」という部分が、間にあるのです。左心系ではこの円錐部が発生の段階で吸収されて無くなるために「大動脈弁と僧帽弁がくっつく」のです。
肺動脈弁だけが「心臓の骨格」から仲間はずれになっている理由は、このコーヌスといわれる部分が発生の段階で残ったことにあるのですね。
「人体の正常構造と機能 循環器」より