体液コントロールと腎機能②
ラシックス®を打ち続けているだけでは、限界がくる
復習です。
ざっくりラシックス®のような「Na利尿薬」は、まず細胞「外」液から除水を行います。また、腎臓に作用するため、
① 血管内volumeからまず除水される
② 次に、間質から除水(血管内にshiftして)される
という順になります。「細胞内」のうっ血には作用しにくいイメージができたでしょうか。もちろん、じわじわと(「細胞内」もパンパンになっているため)血管内に引き込まれ、最終的には除水されるのでしょうが、それまでに「血管内hypo」という状態になります。上手に除水しようとすれば、
A. 除水スピードを徐々に落とす(緩やかな除水にシフトしていく)
B. 浸透圧効果を狙って、「水」利尿薬や高張食塩水を併用する
などの方法が考えられます。
「(血管内を)満たしながら引く」か、「(利尿を)緩める」
入院当初はループ利尿薬でバンバン利尿が得られていたのに、徐々に反応が悪くなって、Creが上昇してきて、エコーではIVCが虚脱気味になっているのに「胸水」や「下腿浮腫」が残ってしまっているような病態に近いと考えられ、そういったケースでは上手に除水を行うために、上記の通りBを最初から行っておくことも大事ではないかと考えています。
また、そうなってきたら逆に「利尿の弱めどき」でもあると考えられます。徐々に利尿薬投与量を減らしていき、「じっくり」と利尿をおこなうフェーズに入ったと考えたほうが良いです。急性心不全患者さんであれば、退院の準備ができていれば外来通院に切り替えるのも一つの方法です。「体液シフトには、ある程度時間がかかる&限界がある」のですね。
「血管内うっ血が解除されたかどうか」をどうみるか?
では、血管内うっ血が解除された所見はどう考えましょう?エコー所見はもちろんわかりやすいですね。IVCの虚脱や呼吸性変動の出現などです。
エコー以外の所見はどうなるでしょうか?
実は、Creの上昇とともに、「血液濃縮」が得られていれば血管内hypoになったと考えます。心不全患者さんではうっ血により血液が希釈され、AlbやHb(Htも)が低下している(もしくは入院翌日に低下する)ことを経験するかと思われます。
逆に、Cre上昇とともに、AlbやHbがともに上昇していれば、血液濃縮が得られたと考えます。入院中にこの所見が得られていると、次の心不全再入院が少ないとされています。しっかり血液濃縮が得られるまで入院中に利尿をかけることは大事です。だから、多少のCre上昇そのものはあまり気にしなくて良いです。
コラム:採血でAlbを、Hbと一緒にオーダしておくメリット
※ちなみに、僕は採血のときに、必ずAlbをセットでオーダしています。上記の通り血液希釈が得られた際に、Hb値(濃度ですね)が低下します。このときに、(多くの心不全患者さんは高齢のため)、「もしかして貧血が進行した??消化管出血??」と迷ってしまうことがあります。このときに、Hbの変化に近い変化率でAlbも低下していれば、「血液希釈が起こったのだろうな」と無用にビビらなくてすみます。
利尿薬がどこに作用するか、「Na」利尿と「水」利尿の違いなどがよくわからない方には、下記書籍をオススメします。研修医が終わるまでに、内容の5-8割が理解できていれば、あなたはかなりの戦力だと思います。それほどに良い本です。
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