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高騰続くブルゴーニュ白の代わりにボルドー白はいかが?【シャトー・タルボ・カイユ・ブラン2020】91点

世界的に人気の高級白ワインといえば、まず筆頭に挙げられるのはブルゴーニュだろう。モンラッシェをはじめ、グラン・クリュは高騰の一途をたどっており、超一流生産者のキュヴェはもちろん、昔なら1万円で購入できたような生産者のグラン・クリュも数万円以上に高騰している。廉価な広域ワインですら、5,000円程度は支払わなければならない。これではとても晩酌には使えない。ブルゴーニュはそのすべてが高級ゾーンに入ったと思っていいだろう。

では、ブルゴーニュの白ワインのような高級感を味わえて、なおかつまだそれほど高騰が進んでいない産地はどこか。パッと思いつくものでコンドリュー、カリフォルニア、ドイツなどがあるが、ここで挙げたいのはボルドーだ。

ブルゴーニュに並ぶ銘醸地でありながら、ボルドーは未だブルゴーニュほど価格が高騰していない。ブルゴーニュに比べれば大量に生産できるため、希少価値がそこまで上がらないこともあるが、最大の理由はブルゴーニュと違ってボルドーには赤ワインのイメージしかないからだろう。

だが、実際にはボルドーの白ワインは非常にクオリティが高く、なかにはブルゴーニュのグラン・クリュに比肩するようなワインも存在する。たとえば、シャトー・マルゴーの白、コス・デストゥルネルの白、オー・ブリオンの白などはその代表格だろう。ただし、これらはブルゴーニュほどではないにしろ、やはり高騰傾向にある。

そこで穴場だったのが、シャトー・ムートン・ロートシルトがつくる白ワイン、エール・ダルジャンだった。少し前までなら1万円を握りしめれば買えたワインだが、その高級感あふれる佇まいは先に挙げたトップクラスのワインと何ら遜色ないものだった。

ところが、最近になってこのエール・ダルジャンの価格も急激に高騰している。おそらく「見つかった」のだろう。すでに価格は2倍以上に跳ね上がっており、以前ほどのお買い得感は薄れてしまった。

では、エール・ダルジャンの代わりはないのか。代わりといってしまうと代替品のようで失礼かもしれないが、褒め言葉として受け取ってほしい。

実は、あるのだ。

シャトー・タルボ・カイユ・ブランである。

シャトー・タルボ・カイユ・ブラン2020

店によっては8,000円というところもあるが、現状ではまだ実売5,000円台をキープしている。決して安くはないが、円安の折、ボルドーというブランド産地、さらに格付けシャトーのつくる白ワインというステータスを考えれば、圧倒的なコストパフォーマンスといえるだろう。何しろ、エール・ダルジャンと似た味筋なのだから。むろん、エール・ダルジャン(銀の翼)という名に込められたようなストーリー性はないため、訴求力は少し弱いかもしれないが、その分味わいに価格分の価値がある実直なワインといえる。

ブルゴーニュと違ってソーヴィニヨン・ブラン主体にセミヨンをブレンドしているところもほどよくボルドーの個性が出て好ましい。ソーヴィニヨン・ブランといってもニュージーランドやロワールとは異なり、樽香がしっかりと効いて重厚な味わいである。

この樽香がまた絶妙なかかり具合で、鼻を近づけた瞬間に「あ、これは高いヤツだ」とわかる。おそらく高級な樽を贅沢に使っているのだろう。あまり上品ではない言い方をするなら、「しっかりコストがかかっていることがわかる」のだ。

口に含むと厚みのある果実感に伸びやかな酸が重なる。レモンやグレープフルーツ、白桃、洋梨などの風味。要素だけを見るなら、ブルゴーニュと近い。若くフレッシュなうちに飲んで楽しめるワインだが、熟成させても面白そうだ。91点。まだ5,000円台で買える。

現時点ではすばらしいコストパフォーマンスだが、いずれシャトー・タルボ・カイユ・ブランも値上がりはするだろう。そうなる前に買い込むか、あるいは早くも“タルボの次”を探す準備をしておくべきなのかもしれない。


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