シャンパーニュと同等以上の品質で狙い目、オーストリアのロゼ・スパークリング【ブリュンデルマイヤー ブリュット・ロゼ NV】92点
ロゼ・スパークリングには他のワインにはない魅力がある。まずはなんといってもその美しいサーモンピンクカラー。日本でロゼといえば桜の季節のイメージであり、ロゼワインはまさに日本人として感性がくすぐられる色合いなのだ。
そして、スパークリングであることも魅力である。特に瓶内二次発酵で作られた高品質なスパークリングワインは、適切なグラスに注ぐことで美しい泡を生む。時に鎖のように、時により合わせた糸のように、グラスの脚部分から液面へ向かって途切れることなく上り続けていく。
夕焼けのようなサーモンピンクと、繊細に立ち上る泡の組み合わせは、ロゼ・スパークリングでしか味わえない幻想的な視覚体験なのだ。
そんなロゼ・スパークリングの代表産地といえば、やはりシャンパーニュだろう。誰もが知る銘醸地であり、かつてぶどう栽培の北限と呼ばれた地域だったからこそ、スパークリングワインが生み出された話はあまりに有名だ。
シャンパーニュは世界に数あるスパークリングワインのなかでもとりわけ高級だが、それだけのクオリティは備えている。特に長期間じっくり瓶内で熟成したからこそ生まれる繊細な泡は芸術的ですらある。
ただ、現代は技術やノウハウがあっという間に行き渡る情報化社会だ。今や品質の高いスパークリングワインは世界中で生産されており、なかにはシャンパーニュの半額以下で同等以上のクオリティを持つワインもある。
その1つが、このブリュンデルマイヤー ブリュット・ロゼ NVだ。
産地はオーストリア。「ラリア」ではなく「リア」の方である。音楽の都ウィーンを擁するヨーロッパの銘醸地の1つだ。
ブリュンデルマイヤーはニーダーエスタライヒ州に位置する作り手で、当主のブリュンデルマイヤーは「ワインプロフェッサー」の異名も持つ才能ある人物だ。スパークリングワインだけでなく、赤ワインも白ワインも作る。
そんなワインプロフェッサーの作るこのロゼ・スパークリング、6,000円ほどと決して安い価格ではないが、品質は1万円のシャンパーニュと比べても遜色ない。「それくらいの差ならシャンパーニュを買おう」と思うかもしれないが、むしろ昨今の尖った味筋の個性的なシャンパーニュを買うくらいなら、こちらのブリュンデルマイナーの方が「正しく無難」な選択肢になる可能性は高い。それほどまでに、このワインはロゼ・スパークリングとして真っ当でケチをつける部分がない。
品種はピノ・ノワールとツヴァイゲルト、ザンクト・ラウレントが1/3ずつ。比率はわからないが、おそらくピノ・ノワールが主体だろう。残りの2品種はオーストリアを代表するぶどう品種で、安易にピノ・ノワールとシャルドネのブレンドではないところにオーストリアの作り手としての矜持を感じる。
とはいえ、香りも味わいも第一印象は完璧なロゼ・シャンパーニュのそれで、おそらく作り手としてもシャンパーニュのような高貴さをかなり意識していると思われる。
一方で、アフターに抜けていく香りに、シャンパーニュには感じられないスパイス感が残る。このわずかに残る香りこそが、おそらくはツヴァイゲルトとザンクト・ラウレントの個性だろう。スパークリングワインになった時点で品種の個性はかなり薄まるが、普段シャンパーニュをよく飲むなら、その部分を比較してもおもしろい。ちなみに料理との相性はかなりよく、肉や魚、野菜など何でも対応できる。赤身でも白身でも合わせられるので、家飲みには最適な1本だ。92点。
残念な点があるとすれば、そのへんのワインショップはもちろん、楽天市場ですら見かけない点だ。おそらく生産量も輸入量も多くないのだろう。
とはいえ、常に売り切れているようなワインではないので、ネットで探せば購入は可能だ。下記にリンクを貼っておく。