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驚異的なコストパフォーマンス、さすがのジャン・クロード・マス【ドメーヌ・アストラック d.A.シャルドネ 2022】87点

かつて安ワインというと、「安い代わりに品質はそれなり」なのが当然だった。学生の頃に飲んだコンビニワイン、居酒屋の飲み放題ワインなどは、今思うと品質はやはり低かったと思う。当時、ワインは100%ジュースで割った“なんちゃってサングリア”の材料としか見ていなかった。

隔世の感がある。

今やコンビニワインの品質も上がり、安ワインであっても高級ワインと遜色ない品質のものがほとんどだ。細かい部分を見ればさすがに差はあるが、それをどこまで気にするか、という話である。高級ワインのレベルももちろん昔に比べて上がっているが、それ以上に業界の底を支える安ワインのレベルがとにかく上がっているのだ。これは、ワイン造りの技術がノウハウとして言語化され、世界中に広まったことが大きいのだろう。

そんな品質の高い安ワインの代表格ともいえるのが、フランスはラングドックの帝王、ジャン・クロード・マスである。彼のワインで有名なのはポール・マスだが、このドメーヌ・アストラックもすさまじいコストパフォーマンスを誇る。

ドメーヌ・アストラック d.A.シャルドネ 2022

実売1,000円台前半のワインだが、品質は倍以上。ブラインドで飲めば2,500円くらいしてもおかしくないと感じるだろう。開けた瞬間からマンゴーや白桃を連想する香りがむんむんと立ち込め、品のいいバニラ香が鼻腔をくすぐる。“お化粧”感はあるが、全体的なまとまりのよさとミネラル感により高級感を維持しているのはすばらしい。このあたりのセンスがジャン・クロード・マスならではと感じる。「ノウハウが広まった」と前述したが、それでもなお最後の一押しを決めるのは作り手のセンスだ。ジャン・クロード・マスは「大衆が好きな味」を知り尽くしている。87点。

何よりすばらしいのは、ドメーヌ・アストラックが400ha以上の畑を持っており、十分な生産量があること。ほしいときにいつでも買える。希少性で売ることの多いワインの世界で、非常に誠実で真っ当だ。このd.A.シャルドネはペイドック、つまり地酒レベルのワインとして生産されているため、ブランドワインのような厳しい規定がなく、だからこそのびのびとつくられている。

まさに南フランス、ラングドックの地理的優位を存分に活かして生まれたワインといえるだろう。この価格なら普段の食事に合わせるのにも最適。

物価高の今、マストバイのワインだ。

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