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ワインソムリエ講座65/セミヨン
はじめに
セミヨン(Sémillon)は、フランス・ボルドー原産の白ワイン用ブドウ品種で、特に貴腐ワインの生産において重要な役割を果たします。シャルドネやソーヴィニヨン・ブランほどの知名度はありませんが、その豊かな風味と多様なワインスタイルでワイン愛好家やソムリエにとって重要な品種の一つです。
この記事では、セミヨンの歴史や特徴、主な産地、ワインスタイル、そして食事とのペアリングまで詳しく解説します。
1. セミヨンの起源と歴史
1-1. フランス・ボルドー地方の起源
セミヨンはフランスのボルドー地方が起源とされるブドウ品種で、古くからこの地で栽培されてきました。17世紀にはすでにボルドー地方で広く植えられており、18世紀にはオーストラリアや南アフリカへも伝わりました。
1-2. オーストラリアへの広がり
19世紀初頭、セミヨンはオーストラリアに持ち込まれ、特にニューサウスウェールズ州のハンターバレー(Hunter Valley)で成功を収めました。オーストラリアではかつて「ハンターバレー・リースリング」とも呼ばれ、熟成によって豊かな蜂蜜やトーストのような風味を持つユニークなワインを生み出します。
1-3. 世界各地への拡散
セミヨンはフランスとオーストラリア以外にも、南アフリカ、チリ、アルゼンチン、アメリカ(カリフォルニア州)、ニュージーランドなど世界各地で栽培されています。ただし、国によって栽培面積やスタイルが大きく異なり、特にボルドーとオーストラリアが主要産地として知られています。
2. セミヨンの特徴
2-1. ぶどう品種としての特性
• 果皮の特徴:比較的厚めの果皮を持ち、酸化に強い。
• 糖度:糖度が高く、甘口ワインの原料に適している。
• 酸度:酸味は中程度だが、産地や収穫時期によって変化する。
• アルコール度数:自然な糖度の高さから、ワインは比較的高アルコールになりやすい。
2-2. 風味の特徴
セミヨンの風味は、若いうちは柑橘系や青リンゴのようなフレッシュな果実味を持ちますが、熟成するとハチミツ、ナッツ、トーストのような複雑な香りへと変化します。
• 若いセミヨン:レモン、グレープフルーツ、洋ナシ、青リンゴ
• 熟成したセミヨン:ハチミツ、トースト、アーモンド、バター
特にオーストラリア・ハンターバレー産のセミヨンは、長期熟成による劇的な風味の変化が特徴です。
3. セミヨンの主要産地とそのスタイル
3-1. フランス
ボルドー(Bordeaux)
ボルドーではセミヨンが最も重要な白ブドウ品種の一つであり、特に以下のスタイルで使用されます。
• 貴腐ワイン(ソーテルヌ、バルサック)
ボルドーのソーテルヌ(Sauternes)やバルサック(Barsac)では、セミヨンに貴腐菌(Botrytis cinerea)が付着し、極めて甘美な貴腐ワインが生み出されます。貴腐ワインは、アプリコット、ハチミツ、カラメルのような濃厚な風味が特徴です。
• 辛口ワイン(グラーヴ、ペサック・レオニャン)
ボルドーのグラーヴ(Graves)やペサック・レオニャン(Pessac-Léognan)では、セミヨンはソーヴィニヨン・ブランとブレンドされ、エレガントな辛口ワインが造られます。
3-2. オーストラリア
ハンターバレー(Hunter Valley)
オーストラリアのハンターバレー産セミヨンは、若いうちはレモンや青リンゴのようなシャープな味わいですが、10年以上熟成するとハチミツやナッツのような複雑な風味を持つ、長期熟成型のワインに変化します。
3-3. その他の産地
• 南アフリカ:南アフリカでは単一品種のセミヨンも造られるが、主にブレンド用。
• チリ:比較的温暖な気候で、豊かな果実味を持つ辛口ワインが造られる。
• アメリカ(カリフォルニア):カリフォルニアでは、ソーヴィニヨン・ブランとのブレンドが多い。
4. セミヨンのワインスタイル
4-1. 辛口ワイン
セミヨン単体、またはソーヴィニヨン・ブランとのブレンドで造られます。フレッシュでミネラル感のあるものから、樽熟成によるリッチなものまで幅広いスタイルがあります。
4-2. 貴腐ワイン
ボルドーのソーテルヌやバルサックが代表的。貴腐菌による複雑な甘味と酸味のバランスが特徴。
5. セミヨンと料理のペアリング
5-1. 辛口セミヨンとのペアリング
• 白身魚のグリル
• シーフード全般
• フレッシュチーズ(フェタ、モッツァレラ)
5-2. 貴腐ワインとのペアリング
• フォアグラ
• ブルーチーズ(ロックフォール、スティルトン)
• クレームブリュレ
まとめ
セミヨンはフランス・ボルドーとオーストラリアを中心に栽培され、辛口から貴腐ワインまで多様なスタイルのワインが生まれます。特に貴腐ワインや熟成による風味の変化が特徴的で、ソムリエやワイン愛好家にとって重要な品種の一つです。
セミヨンを理解することで、ワイン選びやペアリングの幅が広がるので、ぜひ様々な産地のセミヨンを試してみてください。