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ワインソムリエ講座10/ワインができるまで

1. ブドウの栽培

1-1. 土壌と気候の選定

ワイン作りは、まず適切な土地と気候を選ぶところから始まります。
• 土壌: 石灰質、粘土質、砂質などがあり、それぞれがワインの味に独特の影響を与えます。例えば、石灰質の土壌は酸味が際立つワインを生み出します。
• 気候: 寒冷地では酸味の高いワイン、温暖地では果実味豊かなワインができやすいです。ブドウ栽培に最適な地域は「ワインベルト」と呼ばれる北緯30~50度、南緯30~50度の範囲です。

1-2. ブドウの品種選定

ブドウ品種は、ワインのスタイルや風味を大きく左右します。主な品種として以下が挙げられます:
• 白ワイン用: シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリングなど。
• 赤ワイン用: カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワールなど。

1-3. 栽培管理

ブドウの品質を高めるために以下の作業が行われます:
• 剪定: 樹勢を調整し、果実の糖度や酸度を高めます。
• 病害虫防除: カビや害虫からブドウを守るために農薬や自然防除法を使用します。
• 摘葉と摘房: 日光を適切に当て、果実の成熟を促進します。

2. 収穫

2-1. タイミングの重要性

収穫時期はワインの品質に直結します。糖度、酸度、pH値を測定し、最適なタイミングを見極めます。
• 早めの収穫: 酸味が高く爽やかなワイン向き。
• 遅めの収穫: 糖度が高く濃厚なワイン向き。

2-2. 手摘み vs 機械収穫
• 手摘み: 果実を丁寧に選別しながら収穫するため、高品質なワインに向いています。
• 機械収穫: 効率的ですが、茎や葉が混ざるリスクがあり、カジュアルなワイン向け。

3. 破砕と除梗

3-1. 破砕 (Crushing)

収穫したブドウを潰して果汁を取り出します。この際、果皮や種も一緒に潰されることがありますが、白ワインの場合は果皮や種を早めに取り除きます。

3-2. 除梗 (Destemming)

茎を取り除く工程です。茎には渋味成分が含まれるため、これを適切に取り除くことでワインのバランスを調整します。

4. 発酵

4-1. アルコール発酵

ブドウの果汁に含まれる糖分が酵母によってアルコールと二酸化炭素に分解されます。
• 発酵温度: 赤ワインは高め(25~30℃)、白ワインは低め(10~15℃)に設定されます。
• 酵母の種類: 野生酵母を使う場合と、選定した酵母を添加する場合があります。選定酵母を使用すると安定した品質が得られます。

4-2. マロラクティック発酵 (MLF)

赤ワインや一部の白ワインで行われる二次発酵です。リンゴ酸が乳酸菌によって乳酸に変換され、ワインが滑らかでまろやかな味わいになります。

5. 熟成

5-1. 容器の選定
• ステンレスタンク: 果実味を保つフレッシュなワインに適しています。
• オーク樽: 樽の種類(フレンチオーク、アメリカンオークなど)や焼き加減によって、香ばしいバニラやスパイスの香りが付与されます。

5-2. 熟成期間

熟成の長さはワインのスタイルによります。若飲みのワインは短期間、フルボディのワインは数年にわたって熟成されることもあります。

6. 澱引きと濾過

6-1. 澱引き (Racking)

発酵中に沈殿した澱を取り除き、液体だけを移します。これによりワインがクリアになります。

6-2. 濾過 (Filtration)

さらに細かい不純物を取り除く工程です。ただし、過度の濾過は風味を損なうことがあるため、慎重に行われます。

7. 調合と仕上げ

7-1. ブレンド

異なる品種や異なる畑で収穫されたワインをブレンドすることで、複雑さやバランスを追求します。

7-2. 微調整

酸度やアルコール度数を調整し、最終的な風味を仕上げます。一部のワインでは、少量の糖分を追加することもあります(ドザージュ)。

8. ボトリング

8-1. 瓶詰め

ワインは酸化を防ぐため、窒素や二酸化炭素で空気を追い出した環境で瓶詰めされます。

8-2. キャップとラベル

コルクやスクリューキャップで密封し、ブランドや原産地、品質を表示するラベルを貼ります。

以上が、ワインができるまでの基本的なプロセスです。このように、一杯のワインには多くの手間と技術が詰まっています。さらに、地域や生産者によってもアプローチが異なるため、多様なスタイルのワインが楽しめます。

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