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ワインソムリエ講座8/アメリカワイン

アメリカワインは、ヨーロッパワインとは異なる独自の発展を遂げており、革新性や多様性、そして品質の高さが特徴です。その中でも、カリフォルニア州がアメリカのワイン産業を牽引していますが、他の州でも高品質なワインが生産されています。以下に、アメリカワインの特徴、歴史、主要な生産地域、代表的なブドウ品種、ワイン法、料理との相性について詳しく解説します。

アメリカワインの特徴

アメリカは、フランスやイタリアと並んで世界有数のワイン生産国です。アメリカワインの大きな特徴として以下が挙げられます:
1. 多様な気候と地形
アメリカの広大な国土には、温暖な地中海性気候から冷涼な高地気候まで、多様な気候が存在します。これにより、赤ワインから白ワイン、スパークリングワイン、デザートワインまで、幅広いスタイルのワインが生産されています。
2. 革新性と自由なスタイル
ヨーロッパの伝統的なワイン生産国と異なり、アメリカでは法律に縛られない自由なワイン造りが行われています。そのため、生産者が独自のスタイルやブレンドを追求することが可能です。
3. 高い品質基準
特にカリフォルニア州では、1970年代以降の品質向上が顕著で、「パリスの審判」以降、アメリカワインが世界的に評価されるようになりました。
4. テロワールへの意識の高まり
近年、アメリカのワイン生産者は「テロワール」に注目し、それぞれの地域の特徴を反映させたワイン造りを進めています。

アメリカワインの歴史

初期のワイン生産

アメリカでのワイン生産の歴史は17世紀に遡ります。ヨーロッパからの移民がブドウ栽培を始めましたが、当初はネイティブアメリカン種(ラブルスカ種)が主流でした。ヨーロッパ系のヴィティス・ヴィニフェラ種の栽培は困難でしたが、徐々に成功を収めていきました。

禁酒法の影響

1920年から1933年の禁酒法は、アメリカのワイン産業に大打撃を与えました。この期間中、合法的にワインを生産できたのは宗教用のものだけで、多くの生産者が廃業を余儀なくされました。

復興と発展

禁酒法廃止後、ワイン産業はゆっくりと復興しましたが、1976年の「パリスの審判」がアメリカワインの転機となりました。この盲目試飲会で、カリフォルニアのワインがフランスの名門ワインを打ち破り、世界的な評価を得るきっかけとなりました。

主要なワイン生産地域

アメリカには50州すべてにワイナリーがありますが、主に以下の州が注目されています:

1. カリフォルニア州
• アメリカのワイン生産量の約80%を占める。
• 代表的な地域:ナパ・ヴァレー、ソノマ・カウンティ、セントラルコースト
• 主要品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、ジンファンデル
• ナパ・ヴァレーは世界的にも有名で、高級ワインの産地として知られています。

2. オレゴン州
• 代表的な地域:ウィラメット・ヴァレー
• 主要品種:ピノ・ノワール、ピノ・グリ
• 冷涼な気候がピノ・ノワールの栽培に最適で、エレガントなワインが生産されています。

3. ワシントン州
• 代表的な地域:コロンビア・ヴァレー、ヤキマ・ヴァレー
• 主要品種:シラー、リースリング、カベルネ・ソーヴィニヨン
• 山脈が雨を遮るため、降水量が少なく、灌漑による精密なブドウ栽培が行われています。

4. ニューヨーク州
• 代表的な地域:フィンガー・レイクス、ロングアイランド
• 主要品種:リースリング、カベルネ・フラン
• フィンガー・レイクスは冷涼な気候で、高品質なリースリングが特徴です。

5. テキサス州
• 増加するワイナリーの数と高品質なワインで注目される新興地域。

代表的なブドウ品種

白ブドウ品種
• シャルドネ
カリフォルニア州で最も広く栽培され、バターやトロピカルフルーツの風味を持つものが多い。
• ソーヴィニヨン・ブラン
爽やかな酸味とシトラスの香りが特徴。
• リースリング
冷涼なニューヨーク州で栽培され、上品な甘さと酸味のバランスが良い。

黒ブドウ品種
• カベルネ・ソーヴィニヨン
ナパ・ヴァレーの代表品種で、濃厚でフルボディのワインが生まれる。
• ピノ・ノワール
オレゴン州で高品質なものが生産され、エレガントで繊細な味わい。
• ジンファンデル
アメリカの「アイデンティティ」とも言える品種で、濃厚でスパイシーなワインに仕上がる。

アメリカのワイン法

アメリカでは、ワインの原産地や品質を保証するために「AVA(American Viticultural Area)」制度が導入されています。これはEUのAOCやDOCに似たシステムです。
• AVA(American Viticultural Area)
特定の地理的地域であることを示す名称。現在、約260のAVAが登録されています。
• 表示ルール
• 原産地名:ワインの85%以上がそのAVAで収穫されたブドウを使用。
• 品種名:使用した品種が75%以上であること。

料理との相性

アメリカワインは料理との相性も良く、地元の食文化に合わせたワイン選びが楽しめます。
• カベルネ・ソーヴィニヨン:ステーキやローストビーフなどの赤身肉料理に最適。
• シャルドネ:グリルした魚やクリームソースのパスタとよく合う。
• ピノ・ノワール:鴨肉やマッシュルームを使った料理に相性抜群。
• ジンファンデル:バーベキューやスパイシーな料理と好相性。

まとめ

アメリカワインは、ヨーロッパの伝統と新世界の革新性が融合した魅力的な存在です。多様な地域性と気候、そして自由な発想で造られるワインは、どれも個性豊かで、飲む人を楽しませてくれます。カリフォルニア州を中心に発展してきたアメリカワインですが、オレゴン州やワシントン州、ニューヨーク州など新興地域も注目を集めています。これからのアメリカワインの進化に期待が高まります。

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