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ワインソムリエ講座51/メルロー

メルロー (Merlot) は、世界的に有名な赤ワイン用のブドウ品種であり、フランス・ボルドー地方を起源とします。ピノ・ノワールやカベルネ・ソーヴィニヨンと並び、国際的に広く栽培されている主要品種の一つです。名前の由来は、「黒い鳥(merle)」を意味するフランス語で、ブドウの果実が鳥たちに好まれることから名付けられたとされています。

メルローの特徴

メルローのブドウは、以下の特徴を持ちます。
1. 色合いと風味
• 色合い:濃いルビー色~紫がかった赤色。熟成によりレンガ色に変化。
• 風味:黒系果実(ブラックチェリー、プラム)、赤系果実(ラズベリー)、ハーブやスパイス、時にはチョコレートやモカの香りも感じられる。
• タンニン:中程度~柔らかい。一般的に口当たりが滑らかで、フルーティーな味わい。
2. 早熟性
メルローは比較的早熟な品種で、カベルネ・ソーヴィニヨンよりも早く成熟します。このため、冷涼な地域でも栽培が可能であり、さまざまな気候で高品質なワインが作られています。
3. 柔軟性
単一品種のワインとしても、ブレンド用としても優れた能力を発揮します。特にボルドーでは、カベルネ・ソーヴィニヨンの強さを補完する役割を果たし、全体のバランスを整えます。

メルローの主要生産地

世界中で栽培されていますが、いくつかの主要地域とその特徴をご紹介します。

1. フランス(ボルドー地方)
• 世界で最も高品質なメルローを生産する地域。
• 右岸(リブ・ドロワット)に位置するサンテミリオンやポムロールが特に有名。
• シャトー・ペトリュス(ポムロール)は、100%メルローで作られた最高峰のワインとして知られる。
• 気候:穏やかな海洋性気候で、粘土質土壌がメルローに最適。

2. イタリア(トスカーナ)
• ボルゲリ地区では「スーパータスカン」と呼ばれる高品質ワインにメルローが使用されることが多い。
• イタリアのメルローは、スミレやスパイス、熟したブラックベリーのニュアンスを持つことが多い。

3. アメリカ(カリフォルニア州)
• ナパ・ヴァレーやソノマなどの温暖な地域で栽培。
• 熟した果実味が強調されたスタイルで、柔らかなタンニンとしっかりしたアルコール感が特徴。
• 1970年代から1990年代にかけて人気が高まり、カリフォルニアの主要品種となる。

4. チリ
• 世界有数のメルロー生産地の一つであり、手頃な価格で高品質なワインを提供している。
• カサブランカやコルチャグア・ヴァレーなどの産地が特に有名。

5. オーストラリア
• ニューサウスウェールズ州や南オーストラリア州で栽培。
• 果実味が強く、スムーズな飲み口が特徴。

メルローのスタイル

1. シングル・バラエタル(単一品種)
• メルローを100%使用したワイン。柔らかい口当たりとフルーティーさが際立つ。
• 飲みやすいワインとして初心者にも好まれる。

2. ブレンドワイン
• 主にカベルネ・ソーヴィニヨンやカベルネ・フランとブレンド。
• ボルドーブレンドの一環として使用され、複雑で重厚なワインを生む。

3. ニューワールド vs オールドワールド
• オールドワールド(例:フランス)ではエレガントで抑制された味わい。
• ニューワールド(例:アメリカ、チリ)では果実味が前面に出たモダンなスタイル。

メルローと料理のペアリング

メルローは幅広い料理に合わせやすい万能なワインです。

おすすめのペアリング:
1. 肉料理
• 牛肉のステーキ、ローストポーク、ラムチョップなど。柔らかいタンニンが肉のジューシーさを引き立てます。
2. トマトベースの料理
• ラザニアやボロネーゼなどのイタリアンと好相性。
3. チーズ
• ゴーダ、カマンベール、チェダーなどの熟成チーズと合わせると、豊かな味わいを楽しめます。
4. その他
• グリル野菜、ミートパイ、マッシュルームのリゾット。

メルローの魅力と将来性
1. 人気の理由
飲みやすいフルーティーな味わいが初心者からワイン愛好家まで広く支持されている。タンニンが控えめなため、早飲み用ワインとしても適している。
2. 近年の傾向
2000年代に「サイドウェイ」という映画の影響で一時的に需要が低下しましたが、その後復活し、特に高品質なメルローは依然として世界中で高い評価を得ています。
3. 持続可能な栽培
メルロー栽培においても、有機農法や持続可能な農業手法が取り入れられ、環境保護に配慮したワイン造りが進行中。

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