『JR上野駅公園口』柳美里
劇作家・小説家の柳美里(ゆうみり)さんが執筆された『JR上野駅公園口』は、アメリカの文学賞である全米図書賞(翻訳文学部門)を受賞するなど海外でも反響のあった作品。戦前に福島県で生まれ育ち、出稼ぎのために上野駅に降り立った1人の男性の一生を描いた物語です。
柳さんがこの小説を書くきっかけとなったのが、上野恩賜公園で暮らすホームレスの方々への取材だったそう。この公園では天皇など皇族の方々が定期的に来られるため、その直前に「山狩り」というホームレスのみなさんが住む場所に対する強制撤去が命じられています。このことは『JR上野駅公園口』の中でも描かれていますが、個人的に特に印象に残ったところです。上野公園には何度も足を運んだことがありますが、自分がまだまだ無知な世界があるのだと感じさせられました。