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コトバは難しい、怖いもの。

SNS全盛の今の時代。
つい最近も、とあるタレントさんが発進したSNSの文面が大問題となり、関係者が対応に追われている…などということが取り沙汰されております。
コトバっていうのは、非常に繊細なモノだと思います。
自分もしゃべることを生業としているものですから、非常に気を遣うというか、気を付けているのは確かです。

少し悩んだのですが……やっぱり書かずにはいられないので……
ちょっと前の出来事なのですが、こんなことがありました。

とある日、とある場所で、サッカーの試合のパブリックビューイングに参加させてもらいました。パブビューといっても、大人数ではなく、とあるお店にサポさんが集まってテレビで観戦という、こぢんまりした集いです。
いろんな人が集まりました。
その中に、親子連れが2組。それぞれ、ママさんふたりと、お子さん(男の子)は全部で3人。私は初めて見る方々です。ま、元気なのはよろしい。でも、決して広いわけではない店内であちこち、駆けまわって大騒ぎ。だけど、ママさんたちはそれらを注意することもなく、スマホを見たり、試合展開を気にしているだけ。
試合は、我がチームの劣勢。いやー、もう……この時は、とにかく相手に押され気味で試合が展開されておりまして……
で、この時に、先ほどのお子さんたちもテレビを見ながら、好き放題、言い始めたのですよね。相手チームの選手がガシガシとゴールを決めようとしてくる……実際に決められてしまった……のですが、その時に、ひとりの男の子が言ったのです。

「○×(ゴールを決めた相手チームの選手の名前)、○ねばいいのに」

しかもこれ、一度や二度じゃないのですよ。そのうちに他の男の子たちも一緒になって、相手チームの選手の名前をひとりひとり、あげて、
「○ねばいいのに。○んじまえ!」
と、叫び始めたのです。
まぁ、一度や二度だったら、我慢しますわ、私も。だけど、そういった言葉を発しても、ママさんたちは注意するそぶりも見せないのですよ、これが。
さすがに……ちょっと……これは、まずいんじゃない?
と、ちらっとお店のマスターを見ると、私の視線に気づいたのか、マスターは小さく頷いてくれました。私が我慢できないことを理解してくれたんですよね。
たまたま、試合は後半がそろそろ終わる。
それ以上に、ママさんたちは試合展開に一喜一憂する始末。それでも、子どもたちには強い口調で注意するけれど、それも本気じゃないことを子どもたちは見抜いているのです。

ダメダメじゃん……

試合終了。
結果は我がチームの負け。ま、仕方ない。
で、男の子たちは、あーだこーだと好き勝手に話しをしているのですが……やっぱり言わないと気が済まん。おせっかいなおばちゃんと思われてもいい、やっぱり言わないとまずい。
私は、一番声が大きかった男の子の肩に手を置いて、
「ちょっといいかな?」
と、声をかけました。
「あと、君と、君も……ちょっとおばちゃんの話し、聞いてくれるかな」
私は膝を床に落として、男の子たちの目線に合わせました。これ、大事ね。アタマの上から言うのは、私は好きではない。
男の子たち、横並び。
「さっきさ、○ねばいいのにって叫んだよね?言っていたよね」
「……」
「でっかい声で言っていたよね?」
少しだけ、声を強めて問いただすと、男の子たち、小さい声で、
「はい」
という返事。ここで、声色を戻して、できるだけ穏やかに続けます。
「あのさ、それ、自分たちがほかの人から言われたら、どうする?敵の選手だから言ってもいいの?自分たちのチームの選手が、相手チームの選手のサポーターさんたちから言われたどうする?」
「……」
ママさんたちもようやく、それで私が何を言うのか、気づいたけれど、もう遅い。私はチラッとママさんたちに目線を送り、
「黙っていてください」
と、視線で押さえ込みました。
「お店で、一緒に観ている人たちが、どんな気持ちなのか……ちょっとだけ、考えて欲しいなぁ」
「……」
「おばちゃん、とっても残念だったな。みんながあんなことをでっかい声でいうの、とっても残念だ。コトバってね、とっても怖いんだよ。みんなは簡単に「○ねばいい」っていうけれど、それで本当に相手が死んでしまうことだって、あるんだよ?」
「……」
「応援するのはわかるけれど、相手をバカにするようなコトバはダメ。それは、ヒトとして言ってはいけないことなんだよ?サッカーだけじゃない、学校でも、お友達の間でも、それは言ってはいけないこと。もし、自分が言われたらって考えてみて?」
「………」
「……イヤだな……」
と、ひとりが小さく返事をしてくれました。
「でしょ?とっても嫌な気持ちになるでしょう?だから、気を付けようね」
ほんの少しだけ、間が空きました。男の子たち、しゅんとなってしまった。でも、私は決してここで、おだてるようなことは言いません。甘やかすことはしません、はい。
その後、すぐにコロッと声色をまた変えて、
「はい!ここまで!おせっかいなおばちゃんでごめんね。今度の試合は、勝つようにってみんなで応援しよう」
と、ぽんぽんぽん、と男の子たちのアタマに軽く触れて、たちあがりました。
男の子たちは、
「ごめんなさい」
と言いましたが、私は、ニコッと笑って、
「おばちゃんだけじゃなくて、ここにいる、みんなに言おうね」
と返事をしました。
すると、一番元気だった男の子が、きちんと、アタマを下げて言ったのです。
「ごめんなさい!」
それは、自棄になっているとか、そういうものではありませんでした。きちんと、お店のマスターの顔を見て、アタマを下げたのです。
マスターもニコッと笑ってくれました。
「よし!今度からは気を付けような!」

ママさんたち、真っ赤になっていたのはここだけの話し。
私はママさんたちには、何も言いませんでした。ここで野暮なことをいっても仕方ないから。あとは、自分たちの言動に気づいてくれればいい。

……私の静かな怒り、わかってくれたかなぁ……
え?誰に対して怒っているかって?それは、お察しの通りでございます。

と、まぁ、こういうことがあったのです。

イマドキの子育てとかは、よくわからん。
だけど、やっぱり、言っていいこと悪いことっていうのは、注意されないとわからないこともあると思うのですよ。
今は、こういうことを注意してくれる他人ってのは、なかなかいないんじゃないかなぁ……私が子供の頃は、悪戯なり、いじめとかを見つけると、近所のおじさん・おばさんの中には、必ず、カミナリを落とす人がいて、注意されたものでしたが……

時代なんだろうなぁ……(遠い目)

おせっかいな、昭和のおばちゃんでございます。
どうしても我慢ならない時は、冷静に話しをしたいなーと……思います。
もちろん、周囲の状況を鑑みてということになりますけれどね。
今は、何が起こるか、何をされるかわかったもんじゃないからねぇ。