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忍殺復帰前に「スズメバチの黄色」を読んでみる(5)

こんばんは、望月もなかです。
ラオモト・カンがオスシ食べていたのはスゴイタカイビルじゃなくてトコロザワピラーだよ(感想(2)参照)って夫くんに言われました。ほかにも頓珍漢なこと書いてないか心配になってきましたね……。

前回の感想はこちらです。

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【前提1】望月のニンジャスレイヤー知識

・ニンジャスレイヤーは第一部の3巻くらいまでで止まっています。面白かったのですが諸事情ありまして5年前に一時的に中断。そろそろ復帰したいと思っていました。
・いわゆる忍殺用語(イヤーとかグワーとか)はまあまあ慣れました。びっくりはしません。でも使いこなせません。
・夫曰く「軽度ヘッズ」。
・『スズメバチの黄色』は忍殺用語が使われていない(比較的)ので、復帰するなら慣らしにいいよといわれて手に取りました。

【前提2】感想の方針

・その日読んだところまでの感想を書きます。
・目次に章題入れますので、読書中のネタバレ対策にもどうぞ。
・読まなかった日は更新しません。
・忍殺世界の知識は、第一部中盤あたりまでで止まっています。理解してなくても見逃してください。

◇◇◇

第二部 《老頭》
【合成スシの味】~【奴隷かヤクザか】まで

第二部のラストまで読みました。
美少年チバが火蛇と大熊猫を顎でこき使って、《老頭》の内紛をいざ暴かん。『大誘拐』みたいになってきたぞー!!

身代金目当てに大山林王の小柄なおばあちゃん(82)を誘拐したら、身代金が自分の価値に対して安すぎるからと百億円に増額させられて計画をまるごと乗っ取られおばあちゃんは国じゅうを巻きこみ警察との駆け引きを始める。青年たちが器の違いにおののく話。超絶面白いです、オススメ。映画もあるよ!

チバ=サンが、火蛇を完全に自分の部下扱いしてて面白い。

「火蛇、イーストエリアで一番の楼閣を教えろ。お前の信頼できる女がいる店に限る」(p.126)

なぜそんなにも火蛇くんのこと信頼してくれてるんだ……まあ寝ている間によそに売り渡さなかったとか当たり前のようにご飯を食べさせてくれる気で話しかけてくれたこととか「ソンケイ」を大事にしている姿勢に好感を持っているとか、なにより人を見る目が確かだという自負心があるだからとか、なんとなく理解はできるんですけどね。

特に遊郭で別れるとき。
「いつ迎えにくりゃいい?」「三時間もあればいい」のやりとりがすごい。頭の回るチバ少年のこと、自分が捜索されている可能性を考えていないはずがないのです。別行動中に情報が漏れたり、《老頭》に通報されるリスクを承知の上で、火蛇がかかわっていればそういうことはありえない、と信じている。そうでなければここで別行動はできません。(ところでチバくん遊郭で女の子から情報収集してますよねコレ)(あと靴替えないのもあやしい。何か仕込んでない? 単に靴はいいのを履いてないとあがらないってだけ?)

遊郭といえば、花魁(=特にひねりなく「遊女」のことだと思っていいんですよね)の改造って何ぞやと思ったら腕を増やすんですね!
すっげえ合理的! 職業を考えたらそれは確かにありありのありだわー! と感動しました。サイバーパンク的技術が正しく使われていて非常によろしいポイントです。ザ・パワーオブドリームス・サイバネ。

話は戻りますが、

「お前の組織や兄貴分に興味がある。蟲毒というのがどんな奴かは、表情と喋り方を観れば大体わかる。ぼくが見ていてやるから、フェイストゥフェイスで通話しろ。…」(p.132)

「ぼくが見ていてやるから」

いいセリフですね。鰹枯節と昆布で丁寧にとったお吸い物のだしをまずはほのかな湯気のかおりで味わうかのように、丁寧に吸い込んでいきたいタイプのセリフですよ。ぜひ、いずれ火蛇が蟲毒さんとか氷川とかその他誰でもいいのですが恩義や情を感じている相手を殺らなきゃいけないのに迷いが生じて表情が陰ってしまったときに最高のタイミングで「ぼくが見ていてやるから」と優しい声で言ってほしいですね。そして火蛇は迷いを捨ててBLAMBLAMBLAMするんです。最高。

新鮮な幻覚はともかく呼吸をするようにスッとこういう言葉が飛び出てくるところにラオモト・チバの本質があるなあと感じました。火蛇はチバのことをガキとして扱っているのですが、チバは徹頭徹尾、火蛇に対しても大熊猫に対しても「上司」マインドで会話しています。

【奴隷かヤクザか】に至ってはさあレッスン1だみたいなノリ。章題通り、奴隷じゃなくヤクザとして教育する気満々なんですけど……さてはチバ=サン、《老頭》のゴタゴタを収める見返りに火蛇を大熊猫ごともらっていく気だな。実質身請けでは?

《デッドスカル》の参眼寺暗殺堂の描写が出てきたところは危うかったです(私が)。

余所者たちが決して立ち入ることのできない参眼寺暗殺堂。その本堂に安置されている赤銅製の仏像は、伝統的な意匠からなる多腕の仏陀戦士であるが、口元はヴェールで覆い隠され、手には刀剣や拳銃が握られている。果たしていかなる理由から、このようなサイケデリック宗教が生まれてしまったのか。(p.143)

「多腕の仏陀戦士」で本を閉じかけましたが、
「このようなサイケデリック宗教」でまた開きました。

よかった……この描写をサイケデリックだと思うのは変じゃないんだ……作中でも変な宗教っていう扱いなんだ……ならもう少し頑張れる! みたいな気持ちで。

ところで火蛇がアサシン(おそらく羅刹372)を殺したのとほぼ同時刻に死んだ「羅刹373」の描写ってまだ出てきていませんよね? 読み逃したかと思って遡ったのですがそれらしいところが見当たらず。これから出てくるのかな。

次からいよいよ第三部。
チバ=サンの本領発揮になりそうで楽しみです。

ではでは、また明日か明後日にお会いいたしましょう。おやすみなさい!


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次の感想はこちら。


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望月もなか
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