忍殺復帰前に「スズメバチの黄色」を読んでみる(最終回)+おまけ
こんばんは、望月もなかです。
読み終わりましたー! すっごく面白かった!!
(最後におまけがありますが、それ以外はいつも通りの感想です)
前回の感想はこちらです。
◇◇◇
【前提1】望月のニンジャスレイヤー知識
・ニンジャスレイヤーは第一部の3巻くらいまでで止まっています。面白かったのですが諸事情ありまして5年前に一時的に中断。そろそろ復帰したいと思っていました。
・いわゆる忍殺用語(イヤーとかグワーとか)はまあまあ慣れました。びっくりはしません。でも使いこなせません。
・夫曰く「軽度ヘッズ」。
・『スズメバチの黄色』は忍殺用語が(最低限しか)使われていないので、復帰するなら慣らしにいいよといわれて手に取りました。
【前提2】感想の方針
・その日読んだところまでの感想を書きます。
・目次に章題入れますので、読書中のネタバレ対策にもどうぞ。
・読まなかった日は更新しません。
・忍殺世界の知識は、第一部中盤あたりまでで止まっています。理解してなくても見逃してください。
◇◇◇
第三部 スズメバチの黄色
【応急処置】~【墨龍】まで
脳外科医と氷川、ニンジャ同士が激突し、手負いの火蛇は恩師の形見を受け継いで憎き蟲毒と対峙する。チバの描いた絵は完成し、龍256における《老頭》の内紛はここに決着するのであった。
◆
「安全装置の仕込みは終わったぜ」
火蛇は通信チャネルを開き、大熊猫とチバにそう伝えた。(p.197)
CHIBA@LONG256: 大丈夫だ。交戦前に、火蛇が ”安全装置” を作動させた。お前は引き続き、ぼくの正確な座標情報を ”安全装置” に送れ。(p.241)
氷川くんが「安全装置」扱いされているの超かわいそうでグッときますね。
氷川はニンジャになって自分に自信を持つことができました。憧れて大好きで憎かった「あの火蛇」ですら敵わない「ニンジャ」という上位の存在になった。
火蛇がこんな切実な声で自分に何かを懇願するとは。
胸のすく思いだったが、同時に物悲しくもあった。
常人とニンジャはそれほどまでに違うのだ。(p.250)
はい! 透明度の高いモノローグ! ありがとうございます!
この複雑な気持ち! いつまでも自分の憧れでいてほしかったのに、もう違う。かつてデブで弱虫だった自分に、いつも強くて元気できらきら輝いていた憧れの「火蛇」が懇願している。俺はやった。強くなった。ニンジャにとっての常人なんてネズミどころか羽虫なわけです! または小蟻! 踏みつぶすも生かしてやるも思いのまま、生命としてのジャンルが違うんです。「火蛇」は俺と同じ土俵に立つことすらできない! 自尊心をくすぐられながらも、願い星を見失ってしまった子どものような寂しさが氷川を襲う!! 素晴らしいです!! 一億点!!!
でもね君、影では「安全装置」って呼ばれてるよ。知ってた?
『スズメバチの黄色』を読むと、ニンジャがどれだけ常人とかけ離れているかがよくわかります。けれど、同時に氷川を通して「ニンジャだからといってなんでもできるわけではない」という現実も描かれているように思えます。ニンジャは強い。それでも、ラオモト・チバという少年にかかれば、ただの戦略上の駒でしかありませんでした。最後まで自分が「安全装置」役だったことにも気がつかなかった氷川。ニンジャになったところで、使い捨てられるか地位を確立してひとかどの存在になれるかは、本人の器次第なのでしょうね。
◆
ところでクライマックスの戦闘シーンでは、
氷川は敵を睨み、両者は名乗り合った。(p.252)
とか(↑おそらく「ドーモ」してるんですよね)、
クローンヤクザは、ヨロシサン製薬グループが生み出した、全員が同じ顔、同じ背丈のクローン生体兵器だ。(p.254)
とか、
なんといいますかこう、随所で、初心者に対する心温まる気遣いを感じました。ありがとうございます。(軍配も解説してほしかったな!)
◆
そしてやはり、火蛇の右腕には≪スズメバチの黄色≫が。
そう来るだろうと予想はしていましたが、それでも吉田老人がその名を口にした瞬間はゾワゾワッと痺れました……!!
蟲毒さんもヤク中極まれりでしたが最後までしぶとく生き汚く殺しにかかってきてくれて充実した戦いでした。いやー面白かった!!!
四つの勢力が入り乱れての戦闘シーンは圧巻ですね。忍殺本編をちょろっと読んだ時から思っていましたが、描写力が圧倒的です。テンポもいいし、読んでいて混乱しないし、こういう文章書いてみたいです。いいものを読ませていただきました。これは映像で観たいなあ!(でも中途半端な映像化では、脳内映像に勝てないだろうという気もする)
羅刹374ちゃんクールで格好よかったです。
◆
大熊猫は相変わらずかわいい。戦いが終わったあとでわんわん嬉し泣きしてるとかヒロインにもほどがあると思います。君は……どうしてそう……かわいいのかな? 上野動物園にでも就職するつもりなのかな!? アーン!?
火蛇の命を救ったのが大熊猫だった、ここも好きなポイントです。
かつて大熊猫は、大好きな火蛇に大げさじゃなく命を助けてもらった。それがようやく、タワーから落ちる火蛇の手を握ったことで「借り」を返せたのだとしたら。明日からは、今まで以上に胸を張って火蛇の隣にいられるようになるのなら、この闘いは大熊猫にとっても良きものであったのではないでしょうか。
◆
最終章のチバくんなんですが。
『……大丈夫かってのは……お前のことに決まってんだろ……!』
「……ぼくか? ムハハハハハ! ぼくはもちろん無事だ。ぼくも墨龍も、傷ひとつない」
チバは火蛇にそう告げ、涼しい顔で通信を切った。(p.296)
火蛇に自分のこと心配されて一瞬だけ虚をつかれたっぽい反応するところが最高すぎてグエエってなりました。
「……ぼくか?」の最初の「……」のところで、これまで鋭い光を湛えていた紺青の瞳がまるく見開かれて、思わず年相応の表情を見せてしまったんでしょー! ハイ! 私にはわかります!!
もっともらしく、墨龍おじいさんに「火蛇を幹部にして反骨芯をあおり組織の健全化を図る」みたいな説明をしているのもいいです。もちろんチバくんは一つ手を打つごとにいくつもの布石をつくるタイプの戦略家ですから、単なるえこひいきで火蛇を幹部にするよう進言したわけではありません。でも火蛇がほしいから、「自分がトップになったとき一番近くにおいておけるように、今のうちに早めに昇進させておく」という目的も多分確実にあるんですよね。そういうところがすごく好きですね。
「このタワーの近場にアジトを用意しろ。少なくともぼくを含めて三人の者が生活できるだけの場所を用意しろ」
チバは、窓の外を不安そうに飛ぶ黄色い中華飯店ドローンを一瞥しながら言った。(p.302)
三人で暮らす気満々のチバくん。最高。
大熊猫への評価も最終章で明かされて嬉しかったです。火蛇のように口に出しては誘っていませんが、ちゃんと評価しているんですね。実際、最後の戦いの中で墨龍に欠けていたのは「精度の高い情報網」でした。大熊猫がいれば、《老頭》の死者はずっと少なく済んだかもしれない。一方のチバには、火蛇だけでなく大熊猫もいました。孤立無援の見知らぬ土地で、勝利を引き寄せたのは火蛇と大熊猫の可能性を見抜いたチバの眼力です。はー好き。
三人で一緒に暮らしているところをライブカメラで中継してほしい。いつまでも起きてこない火蛇の頭を蹴って起こしたり(ドアのところで大熊猫があわあわしている)、一緒にまたご飯食べに行ったりしてほしい!
◆
こんなところでしょうか。
最初から最後まで楽しく読めました。 読んだ後で「あー面白かった!!」と叫ぶことができるのって幸せですね。
この調子で、忍殺本編にも復帰したいところです。四部から読みはじめるのもいいという話を聞いているんですが、実際どうなんでしょうね?(なお、重篤ヘッズの夫が物理書籍を全巻本棚に並べているので、一部から順番に読んでいくこともできます) ちょっと考えてみます。また感想も書きたいですね。(注:第四部AoMから読むことにしました→感想目次)
ともあれ、ここまでおつき合いいただきありがとうございました!
またいつかお会いいたしましょう。おやすみなさい!
◇◆◇
おまけ《手書き感想ノート》
ところでこの感想記事は、読みながらノートに手書きしていた感想メモを取捨選択してまとめなおしたものになります。感想取りこぼしがもったいない&自分でも記録を見返せるようにしておきたい、ということで、最後におまけで手書きノート画像をつけておきます。
こんな感じの画像です(抜粋)。
ただ制限なしに全部公開するのが恥ずかしいのと、量も結構あるので(25枚)、こちらはおまけということで……
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