ピント
「ピント」って、もちろん知ってますよね。
写真を撮るたびに当たり前のようにピントを合わせますし、オートフォーカスだとカメラがピントを合わせてくれます。
後で写真を見て「ジャスピンで綺麗に撮れた」だとか、「ピンボケだ、失敗」って一喜一憂しますよね。
過焦点距離とか、被写界深度について「うんちく」したいのですが、その前にピントの話です。(急がば回れってやつですw)
【ピントは奥が深い】
チコちゃんが「ねぇねぇ」って聞きそうですが、ピントが合っているのはどういうことでしょうか
境界線とかがハッキリ写っていること?
それじゃ、ボケているのは、ハッキリしていないこと?
なんとも主観的で曖昧ですよねw
写真のノウハウ本見ても、ピントについては、説明をスルーしてます。
過焦点距離を計算するには、避けて通れないものです。
実は、ピントが合っているってのは奥が深いのです。
【ピントが合っているということは、どういうこと?】
ピントが合うのは、理論的には一点なのですが、フイルムの粒子の大きさや映像素子の画素の大きさと、人間の眼の解像度でピントがあっている範囲が変わります。
(人間の眼の解像度が問題になるのは、プリントされた写真やディスプレイの写真を見るときです。)
ピントが外れるとぼやけてきますが、ボケたときの直径がフイルム粒子や映像素子の画素の大きさよりも小さい、もしくは人間の目の解像度より小さければピントが合っているということです。
この直径を「許容錯乱円直径」といいます。
【フイルムの許容錯乱円直径ってどれぐらいなのか】
フイルムの許容錯乱円の直径は、約0.03mmといわれてます。
根拠はわかりませんが、フイルムの感光材は、化学物質なので製造にバラつきがありますので、だいたいの直径らしいです。
(Canonは0.035mmで計算しているようで、今は無いキャビネ判(120.65×165.1mm)を25~30cmの距離で見る前提とのこと)
【フラグシップ機の許容錯乱円直径ってどれぐらいなのか】
デジカメの場合、映像素子の画素の大きさが許容錯乱円直径になります。
つまり、高画素の映像素子は、許容錯乱円直径も小さくなります。
例えば、Canon EOS-1D X Mark III で許容錯乱円直径を計算してみます。
(Nikon D6も、有効画素数は2082万画素でほぼ同じです)
EOS-1D X Mark IIIの映像素子は次のスペックです。
映像画面サイズ 約35.9×23.9mm
カメラ部有効画素 約2010万画素
アスペクト比 3:2
計算すると、
横の画素数 5490.9画素
縦の画素数 3660.6画素
画素の大きさ(許容錯乱円直径) 0.0065mm
EOS-1D X Mark IIIはフイルムにくらべて、許容錯乱円の直径は1/4~1/5ぐらい小さいってことです。
【高画素機の許容錯乱円直径ってどれぐらいなのか】
高画素のデジカメといえば、SONY α7RⅣ です。
α7RⅣ映像素子は次のスペックです。
映像画面サイズ 約35.7×23.8mm
カメラ部有効画素 約6100万画素
アスペクト比 3:2
横の画素数 9504画素
縦の画素数 6336画素
画素の大きさ(許容錯乱円直径) 0.00375mm
フイルムにくらべて、許容錯乱円の直径は1/8ぐらいです。
【実は、もっとも重要なのは人間の眼の解像度】
最近の新聞や雑誌の写真は粒子が細かくなりましたが、点の集合なのはご存知ですよね。昔の新聞の写真を見ると点が大きく、虫眼鏡で見るとよくわかります。
点の集まりでも、ある程度の距離を離すと私たちの目には写真に見えます。
なぜ、点の集まりが、離れて見ると写真に見えるのか。
眼の性能を超えると、点が「点」で見えなくなるのです。
「見たのとちがう」で、人間の眼について書きましたが、
人間の眼の解像度は0.59分といわれています。
人間の眼の性能である0.59分より小さな点が網膜に写っても、眼の解像度を越えているので「点」として見えないし、認識できないのです。
だから、点の集まりが写真に見えます。
写真をプリンターで印刷したとします。
プリンターの分解能は、通常300DPIです。
DPI(Dots Per Inch)は、1インチ(2.54cm)にいくつのドット(点)かということですので、300DPIの1つ点の大きさは、0.085mmとなります。
人間の眼で見て、点が判別できるのは、9mmの距離まで近づくことになります。
...って、光学的に眼の限界を超えてますw
プリンターで印刷した写真はいくら見ても、点を肉眼で見ることはできません。
インクジェットプリンターだと、点にニジミがあるはずですが、もちろん見えませんよね。
今、あなたが見ているディスプレイも、赤、緑、青の3色の点が沢山ならんでいます。
この3色以外の色が見えているのは、人間の眼の解像度より細かい小さな点だからです。
人間の眼の解像度の0.59分より細かいものは、いくら精細にプリントしても見えないので意味がないのです。
撮った写真をL判(88.9×127mm)でプリントして、良かったので四つ切やA3判に大きくプリントしたら、ピントが合ってなかったってこと経験ありませんか?
これも人間の眼の解像度の限界によるものです。
【写真鑑賞するときに必要な画素数】
写真を鑑賞するときは、プリントして見たり、スマホだったり、パソコンの画面、もしくはTV画面でしょうか。
それぞれ、解像度だったり大きさがマチマチです。
プリントして写真を鑑賞することを考えてみましょう。
写真プリントのサイズは、次の大きさがあります。
デジカメとパソコンの普及で自宅のプリンターで印刷することも多くなりました。
プリンター印刷(300DPI)で用紙サイズごとにドット数を計算した結果が次の「印画紙サイズ.pdf」です。
L判で158万画素、2L判で315万画素、A4サイズで870万画素、四切で1080万画素、A3サイズで1740万画素です。
そして、半切が2142万画素です。
気付きましたか? キャノンやニコンのフラグシップ機は2000万画素程度です。
つまり、プリント頻度の多い四切、A3や、ちょっと大きめの半切まで大丈夫です。
プリントされた写真を近づいてみても300DPIですから、人間の眼の解像度より細かいプリントなので問題ありません。
人間の眼の解像度を考えると、全紙(3564万画素)にプリントしても大丈夫です。
最近のカメラは4000万画素になってきてますから、大全紙(4320万画素)まで軽くいけますね。
パソコンやTVで鑑賞する場合はどうでしょうか
2K(1920×1080)で200万画素
4K(3840×2160)で830万画素
8K(7680×4320)で3300万画素
8Kはそれなりの画素数が必要ですが、普及するのはもう少し先なので、どのカメラでも大丈夫です。
現時点では2000万画素あれば十分で、高画素のデジカメは、トリミング耐性があるってことです。
将来的にはビデオも重視されて、8Kに対応できる3000~3500万画素が標準になっていくのかもしれません。
【人間はどれだけ見えるのか】
人間の眼で見える距離とドットの大きさを計算してみました。
写真を200mm離して見て、約2mm以下のボケだと判別がつかないってことになります。 ・・・はぁ? そんな訳ないですよね。
体感的に眼の解像度は表の2~3倍は良いのでは?と思います。
人間の眼の解像度(0.59分)って、眼が悪すぎですw
(ネットで流れている情報は、前提条件がわからないので、こんなことが多々あります)
【結局ピントってどうなの】
例えば、EOS 1DX MarkⅢ(2000万画素)で撮影して、2L判(315万画素(300DPI))にプリントしたとしましょう。
映像素子 2000万画素 → 2L判 315万画素
だいたい、6.3画素が、2L判では1画素に集約されてプリントされます。
人間の眼の解像度(0.59分)が、ちょっと怪しいですが、人が見える画素の大きさが、200mmの距離で約2mmです。
直径2mmの円は約420画素(300DPI時)となります。
つまり、2L判の写真は、デジカメで撮った映像の6.3画素×420画素=約2600画素のかたまりで、やっと目に見える大きさになるってことです。
2600画素の範囲でピンボケしていても、目に見えません。
A4にプリントした場合は、約970画素が、
A3にプリントした場合は、約490画素が目に見える最小画素数になります。
大きなサイズにプリントすると、目に見える画素数の大きさが小さくなっていきますので、2600画素ではわからなかったピンボケが、大きなプリントサイズでわかるのはこのためです。
ピントが甘い写真は、大きくプリントしないほうがいいですねw
(パソコン上で等倍で鑑賞すると、眼に見える最小画素数は1になり、とてもシビアです。月刊コンテストで、WEB投稿できる雑誌もありますが、ピントが甘い写真は、プリントして投稿しましょう。チョットごまかせるかもw)
【まとめ】
ピントが合っているというのは、ボケがフイルム粒子や映像素子の画素の大きさよりも小さいとき。
この範囲を許容錯乱円直径という。
人間の眼の解像度より、プリンタの解像度のほうがかなり良い。
デジカメの映像素子は、2000万画素あれば必要十分。
トリミングをするなら、高画素のカメラが良い。
人間の眼の解像度より細かいと、ピントが甘くても分らない。
<Neoうんちくオジサン>