
「ズレズレなるままに」今さらながら、新聞・テレビとネットメディアを考えてみた
2年間だけデスクで在籍した「夕刊フジ」が、1月末日をもって休刊になりました。過去に復刊した紙媒体(雑誌)はあるけど、休刊は事実上の廃刊。やっぱり心情としては寂しいけど、すでに体制も、いや経営方針も破綻していたと思います。
同じ日に「東京中日スポーツ」も休刊で、なんか紙媒体業界の終わりの始まりな気もして…。
新聞の問題は今さらだけど、もはや速報性では価値が無くなってしまっただけでなく、販売や人員配置など、全てがアップデートできていないことにあるわけで、ネット世代は「オールドメディア」と腐すわけです。
テレビはまぁ、今のフジテレビの騒ぎが表しているのでしょう。ただ例の10時間超会見で「フリーランスはダメ」とか「やっぱり新聞テレビはちゃんとしてる」なんて、少し揺り戻しもあった気はするけど、まぁ古い体制なのは間違いない。
元新聞記者で、今はときどきネットメディアのお仕事をいただく身としては、ボヤッとながら俯瞰して見ております。
確かに新聞は厳しい。色々聞くと、本当に「次はどこだ?」って感じのようです。とはいえ、ネットメディアもまだまだ過渡期にあるようです。
先日、お仕事先のネットメディアの方と打ち合わせしましたが「新聞でトレーニングして来た人と、ネットスタートのライターは言葉の使い方とかクオリティが全く違います」と話しています。
ネットメディアを眺めていて思うのは、新聞とはまるで書き方が違うこと。関心を引くための見出しありきはスポーツ紙もそうだけど、その内容を探して読んで行っても出てくるのは最後の方。新聞は形式の問題もあるけど、まずは「結論」をドーンともってくるパターンが多い。昔は「読者に分かりやすく書くもの」と刷り込まれたもんです。
ネットメディアの方に聞くと「確かにそうなんです。ただ、それには事情もあるんです…」と。
ネットメディアは言うまでもなく、ビュー数が勝負。そこで広告単価が決まります。
そのあたりは細く「何秒滞在した」とか、「どこまでスクロールした」まではっきりしているから、肝心なところを焦らして、最後まで見に行く工夫なんだとか。
「なるほどね」と思うわけですが、やはり「違和感を感じる」なんて二重表現に出くわしたりすると、こちらは“違和感を覚える”のです。
ネット記事をみていると、知った名前によく出くわします、元新聞記者のね。
新聞では“紙幅”といいますが、ページや行数に制限があるからコンパクトに書かざるを得ない。たくさん取材するほど、書ききれなかったり、デスクにバッサリ切られたりしたものです。それがネットに移ったら、「紙幅に制限なし」と思い込みがちになる。
ところが、今や長い文章は読まれない。むしろ新聞より短いかもしれない。新聞上がりのライターは、そこで書き方も長さにもアジャストすることを要求されるのですよ。
ネットメディアにもお世話になっているので、新聞にはなかった点も感じます。
拙文もYahooに引っ張っていただくと、必然的に「ヤフコメ」がつきます。記事に対する速いレスポンスは、新聞にはなかった最大のものかもしれません。
もちろん賛同もあるけど、ネガティブなコメントもあります。じっくりは読みませんが、世間の感じ方を知ったり「そういう見方もあるのか」と勉強になることもあります。
ちょっと面白いのは、例えば野球だと張本勲さんや広岡達朗さんの話が出ると、「出た、老害。今の野球を何も分かってない」とか「時代が違うんだよ」など、ちょっと口汚いコメントをお見かけすること。江本孟紀さんは「俺は腹立つから一切見ない」と仰っていましたが、それでいいと思います。
そういうコメント、まぁ想像はつくけど「でも、あなたプロ野球選手じゃないよね? 150㌔の球はなげられないし、木のバットでホームラン打てる?」なんて思いながら読んだりします。少し意地悪ですが「これ書いてる人、どんな人なんだろう? 実際に会ったらそんな口きけるんだろうか? 年齢は? いつもこんなこと書いてんのか?」などと妄想して楽しんでいるわけです。
例えば新聞業界のことでも事実認識を間違ったまま批判している人もいて、「そうじゃないけどね」と思いつつ、それさえもこちらは妄想の対象にしてます。
自分は反撃されない場所から大きな相手に「言ってやった!」と溜飲を下げることで、自分を保とうとしているのだと思えば、なんてことありません。しかし、世の中にはメンタルが弱い人もいて、いまやそれが自死につながることもあることが社会問題になるわけです。
ネットメディアの方いわく「ネガティブコメントは読んだうち3000人に1人の割合なので、気にしなくていい」そうです。一般人で取材対象になっていただいた方には「一定数、意味もなく批判するのがいるけど気にしないで」と伝えています。
誰でもモノが言えるのがネットのいいところだけど、やはりまだ成熟なのかもしれません。