【大内家の野望 新生】 第4話:北四国攻防戦 〜川之江城の戦い
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メールマガジン『ビジネス発想源 Special』にて約8年、400回にわたって連載し、AmazonのKindleストアで多く電子書籍化もされている、歴史から経営やマーケティングのヒントを学ぶビジネスコンテンツ『歴史発想源』。
今年7月に新発売となったコーエーテクモゲームスの歴史シミュレーションゲーム『信長の野望 新生』を使って、その第1章「大内二代篇」の状況から天下統一を目指す番外篇「大内家の野望 新生」を連載しています。
▼第4話:北四国攻防戦 〜川之江城の戦い
■南九州征討中に起こった、遠い四国の問題
いよいよ南国の雄・島津家を薩摩国(鹿児島県)に追い詰めて南九州平定がなろうかというその時に、ちょっと遠方の地で困った問題が起きていた。遠く離れた四国である。
そもそものきっかけは、島津家と戦う前に肥後国(熊本県)の阿蘇家と戦っていた頃に、あまり深く考えずに四国に手を出してしまったことだ。
恐らく島津家の次に勢力を伸ばすなら西四国だろうと思っていて、大友家攻めに協力してもらおうと南予(愛媛県南部)の西園寺家と同盟関係を結んでいたが、まだ接触がなかった土佐国(高知県)の長宗我部家が従属してきて、つい仲良くなってしまった。
長宗我部家が同盟関係ではなく従属関係という強力な仲間になったから、そのうち西園寺家は切らなければならない。また、今は同盟関係にある中国地方の毛利家もいつの間にか尼子家を蹴散らして勢力を広げており、そのうち雌雄を決する時が来るだろうから、九州だけでなく四国からも攻められるようにしておくのはかなり有効だ。
そうなってくると、長宗我部家は守ってあげて、今のうちに毛利家と西園寺家の兵力は削っておきたい。そこで、特に何の恨みもないが、北伊予(愛媛県北部)の河野家の城に、毛利家と西園寺家を援軍と称して攻め込ませた。
すると、苦戦するかと思っていたのに、毛利家と西園寺家が湯築城(ゆづき城/愛媛県松山市)を落としてしまい、遠隔地に飛び地ができてしまった。河野家は東の川之江城(愛媛県四国中央市)へと逃げたが、湯築城を奪還するつもりのようだ。従属してくれている長宗我部家を守るには、川之江城も落としてあげておいたほうがいいだろう。
四国の東半分は、畿内まで勢力を広げる全国屈指の大大名・三好家が押さえている。今のうちに三好家と友好関係を結んでおけば、同盟関係が切れた後の毛利家を九州と四国から多面攻撃できる。
そこで、毛利家や西園寺家に援軍として川之江城を攻めてもらって兵を削がせて、一揆を扇動したり城将を引き抜いたりと謀略を仕掛けながら、三好家とも親善を重ねていく。ところが……
毛利家も西園寺家も予想以上に強く、一揆扇動などの謀略なども予想以上にヒットし、川之江城は予想よりもかなり早く陥落してしまった。遠い地で大内家の軍隊で戦っていないので、全然実感が湧かない。
こうして、戦国大名としての河野家は滅亡した。河野家には何の遺恨もないし、そもそも大内家の兵を全く使っていないのに遠隔戦略だけで伊予国を手に入れちゃったので、ちょっとかわいそう。すると、なんと… …
これから仲良くしようと親善を開始した三好家と隣接関係になったものだから、すぐに三好家は4万の兵力で川之江城に向かって侵攻! 一気に敵対関係になってしまった。一度敵対関係になると、もう親善を回復するのは不可能に近い。もうすぐ九州を制圧できそうという時に、とてつもない巨大勢力と全面戦争に突入。これはヤバい……。
三好家は畿内の諸城も押さえている大勢力であり、関西方面からも兵を結集して続々と淡路島、徳島と渡ってきて川之江城へ。こちらの川之江城は攻め取ったばかりで城兵は500ほどしかいないのに。三好家の総兵力は約4万!
遠隔地だから山口や九州から援軍を出せないし、毛利家や西園寺家も川之江城攻めで働いてもらったばかりだからまだ親善が回復しておらず援軍を頼めない。従属する土佐の長宗我部家に援軍を頼んでも、ここで兵を削らせてしまったら恐らく土佐も三好家に攻められて無くなってしまうだろう。なす術がない……!
瞬く間に、川之江城は落とされてしまった。九州で連戦連勝だった大内軍が、初めて味わう敗北だ。遠い飛び地なので全然実感が湧かないが、しかし全国最強クラスの三好家と敵対関係になったというのは、今後の戦力拡大に大きな制約を受けてしまう。四国にうかつに手を出してしまったことを今さら後悔してしまう。
ただ、まだ湯築城が残っているが、三好家は湯築城まで戦線が伸びるとかなり遠くなってしまうのか、すぐには攻めてこない。とりあえず遠隔地の湯築城は兵数の補充を待って乗り切ってもらい、完了までもうすぐの島津家討滅に全力を注ごう。
■島津家を追い詰め、三好家と全面戦争に
内城を攻め取って分断された島津家。残すは当主・島津貴久や嫡男の島津義久らが守る伊作城(鹿児島県日置市)と、次男の猛将・島津義弘らが守る加治木城(鹿児島県姶良市)のみ、名将揃いなので落とすのは大変だが、もはや島津家の城兵はどちらも数百程度。陥落は時間問題だ。
そして1555年1月、九州各地から動員した大内家の総攻撃を前に、加治木城と伊作城はほぼ同時に落城。
こうして大友家亡き後の九州の王者であった島津家は、大内家の前に滅びた。『信長の野望』シリーズでは島津家と北条家はとにかく放っておくと天下をとってしまうほど最強のAIなので厄介な存在だが、ようやく後顧の憂いを取り除くことができた。
島津家はとにかく一族に名将が多く、結束力が強くて忠誠度が半端ないため、城を落としても落としてもなかなか誰も降伏しない。ここにきてようやく、島津家の全ての将を捕らえることができた。
当主の島津貴久、嫡男の島津義久たちは観念して大内家に加わってくれた。彼らはこの後の大内家の戦力の要になってくれる。残念なのは、次男の島津義弘だけは頑なに投降を断ったこと。その才能は惜しいので、首を切らずに野に放つ。また敵としてどこかで会うことになろう。
こうして南九州平定は完了した。島津家がかなり強くて苦戦した感はあるが、まあかなりスピーディなほうだろう。本来は史実で滅ぼしてくる毛利家と全力で戦うために九州という後顧の憂いをなくす、という拡大戦略だったのだが、今は中国地方よりも四国の問題が先だ。ここからは四国に手を出していくことにしよう。
従属の長宗我部家でついに、嫡男・長宗我部元親が元服を迎えたという。長宗我部家もまた島津家のように一族が名将揃いなので、ここからきっと活躍していってくれるだろう。
ちなみに長宗我部元親は「歴史発想源」の第2章、電子書籍シリーズでは栄えある第1巻となった「四国統一篇」の主人公である。※「歴史発想源」の「四国統一篇」電子書籍版もどうぞよろしくお願いします。
さて、三好家がこのまま四国で勢力を拡大してしまうと、従属する長宗我部家が滅ぼされてしまうから、何とかこれ以上の拡大を阻止しなくてはならない。かといって、四国で唯一大内家が領有している湯築城は飛び地なので、そうすぐには兵も回せない。何とか数千人の少ない湯築城の兵で川之江城を取り返す戦略をとらなければならない。
そこで、長宗我部家に土佐から阿波国の白地城(徳島県三好市)へ攻めてもらった。川之江城攻めに兵を回していた三好家は、後方の白地城には千数百の兵しか置いていなかったのだ。
すると、川之江城を守っていた7000ほどの兵が白地城に救援に向かい、川之江城の城兵は2700程度に。そこを狙って湯築城の4000の兵で川之江城を狙い、さらに西園寺家にも援軍を5000ほど出してもらう。
そこに川之江城の城将に対して闇討ちを仕掛けて怪我をさせたり、領内各地で一揆を陽動したりと、謀略を仕掛けまくって翻弄。三好家もヤバいと思ったのか、天霧城(香川県善通寺市)や十河城(香川県高松市)などから兵を回してきた。そいつらが合流してくると面倒だ。早く何とかしないと。
できることは何でもやる。その奥の勝瑞城(徳島県藍住町)でも引き抜きや一揆扇動などを仕掛けて、撹乱させる。さらには三好家の本拠である畿内の周辺勢力とも親善を重ね始めることにする。かなり遠い勢力たちであるが、三好家対策として仕方がない。
そうやって三好家との攻防に頭を悩ませている頃、佐賀の龍造寺家との同盟の期限切れが近いという報告。島津家を滅ぼして四国に悩んでいる今、龍造寺家と同盟関係を結んでいるメリットというのはほぼないのだが、しかし同盟関係がなくなればやはり後顧の憂いになってしまう。
勢力ランキングを見ると、大内家は最大兵力112000人で全国2位、三好家は最大兵力93000人で全国3位という大国同士の戦いである。この戦いはまだかなり長期化することになるだろう。
龍造寺家は最大兵力30000、7城で全国12位だ。厄介な後顧の憂いであるならば、今のうちに排除しておいたほうがいいだろう。遠い四国攻めになかなか兵を割けられないから、余計な兵を九州に置かないように、この際九州を全て平定してしまおう。
佐嘉城(佐賀県佐賀市)を拠点にする龍造寺家は、北は対馬、南は島原半島、東は筑後と西日本一帯を制圧している。大内家の勢力圏はそれ以外の九州全域だ。四国遠征を前に、九州全土の兵をかき集めて全て西九州へとぶつけ、九州統一を賭けて龍造寺家と全面戦争だ!
【武将名鑑】(4)島津義久(しまづ よしひさ)
島津家第15代当主。祖父の島津忠義(島津日新斎)、父の島津貴久の後を継ぎ、島津義弘・島津歳久・島津家久ら名将の弟たちと共に島津家の勢力を拡大させ、九州最大の大名だった大友家をも凌駕して九州の大半を制圧するほどの勢いをつかんだ。
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