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(4)測量士に向く人、向かない人 /測量士・浦恒博の「基礎論」

土木工事では現場監督が、競技場では審判員が、自前で測量をできてしまうこの時代。測量士や測量会社は、いったい何のために存在しているのか…?

「基礎」における小さな妥協や変な誤差が、その後にどれだけ莫大な損失を生み出すことになるのでしょうか。

そんな「基礎」の大事さを、地球レベルの取り組みの中でわずかな誤差に挑み続ける「測量事業」のプロの観点から語っていただく連載です。

これまでに東京ゲートブリッジやレインボーブリッジなどの橋梁をはじめ数多くの測量を手がけた興和設計工務事務所の浦恒博社長に、「基礎」がいかに測量事業において重要なものなのかを書いていただきました。

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▼浦 恒博 (うら つねひろ)

測量士。石川県出身。平成15年に株式会社興和設計工務事務所に入社し、平成22年、同社の2代目代表取締役社長に就任。東京ゲートブリッジなどの橋梁をはじめ鉄道、高速道路、港湾、河川、公園など数多くの測量業務を手掛ける。

・株式会社興和設計工務事務所 公式サイト

・浦社長のブログ「きちんと、測る。はかりびと」

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『ビジネス発想源 Special』の「各界発想源」にて2013年2月に連載され大きな好評を頂いた『測量士・浦恒博の「基礎論」』全5回を、noteに再掲載することになりました。この連載から、会社やチームの取り組みの見直しや、生活の改善などに活かせる様々なヒントを見つけ出してみて下さい。

※ 連載当時の、読者の皆さんの質問に浦社長がお答えする「Q&A」も掲載致しました!

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●測量士・浦恒博の「基礎論」

    ~正しく測って、未来を計る。~(全5回)

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【第4回】測量士に向く人、向かない人

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・【第1回】 「測る」という仕事がなかったら?
・【第2回】 測量は地球を表現する仕事
・【第3回】 測量はコミュニケーション
◯【第4回】 測量士に向く人、向かない人
・【最終回】 きちんと、測る。


測量の基本とは、「2点の位置の相互関係を表す」ということです。

そう考えると、測量をしているのは測量士だけではありません。

誰もが少なからず「測量をしている」ことになります。

家具を買うために室内をメジャーで測ることも、柱にお子さんの身長の位置を書き記すことも、いわば「測量」の一種になります。


第一回で、陸上競技と測量のお話をしました。

実は私もテレビを観ていた時に、測量機が置いてあるのに気が付き、初めて知りました。

投てき競技では、我々測量士が使う測量機と同じものが使われていますが、恐らく記録を測っている審判員の方は測量士ではないはずです。


また、建物の建築や道路整備などの土木工事の現場の場合は、全て測量士が測量をするのではなく、現場監督さんや施工管理を行っている元請の職員の方が位置や高さの確認などの測量を行っています。

現場によっては、測量だけを専門とする職員を置いたり、我々のような測量会社から常駐の職員を派遣したりする場合はあります。

しかし、ほとんどの場合は自前で測量しています。

現在の測量機械はとてもよく出来ており、ある程度の基礎知識があれば誰でも測ることは可能です。

特に今は、厳しいコストカットが行われている時代です。

自前で出来る部分をわざわざ外注することは敬遠される傾向にあります。


つまり、言ってしまえば、「測量」という仕事自体は、誰だってやっていることですし、誰にだってできることなのです。

では、測量士という職業は、いったい何のために存在しているのでしょう?

我々測量士は工事の事前や事後の検査や、工事中の要所で確認のために呼ばれますが、やろうと思えば誰でもできるとも言える仕事を、なぜ測量士に任せるのでしょうか?

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