「化け物の正体見たり枯れ尾花」鶉衣/横井也有
恐怖心を克服するためにできること
1:恐怖心の正体を突き止めること
get to the bottom of the problem
「化け物の正体見たり枯れ尾花」
鶉衣/横井也有より
相手の正体が分かれば、冷静になれます。
恐怖は情動を司る扁桃体を発火させますが、理性を司る前頭前野が発火すると扁桃体の働きは相対的に抑えられて、冷静になるとい脳の仕組みがあります。
基礎ワークショップなどの管理されたアイスバスであれば、もともと疾病がある方以外では、後遺症が残るリスクはありませんほとんどありません。(もともと潜在的な異常がある可能性は否定できません。)
初めてやることには恐怖というセンサーは極めて敏感に反応しますが、毎日やっていることには鈍感になります。
年間に約7万件も交通事故がある自転車の方が危険性の方が高いのですが、慣れていることをやっている時は、恐怖心のセンサーはオフになっています。
話を戻すと、”自転車と比べて圧倒的に安全なのに、アイスバスはなんで怖いのか?”
人類の長い歴史の中で、飢えと冷えは常に脅威でした。そのためか飢えと冷えは感情に直結しており、まず扁桃体で処理されます。死亡率とか理屈ではなく、感情的に冷え・寒さは怖いものなのです。
そのため、冷たさや恐怖心を俯瞰して捉え、恐怖に飲み込まれてジタバタしないように、一時的な恐怖の感情を呼吸法や瞑想を利用して、いなします。
2:恐怖心を乗り越えたあとの良いことをイメージする
アイスバス体験 には、
a: Un-conditioning 脱快適
「冬に水着になった寒いやんけ!」と自分のマインドが叫んでいますが、身体は寒さに適応し始めています。
b: turbulence 不穏・乱気流
氷でいっぱいの冷たそうなバスタブを眺めながら、原始的な恐怖心を感じます。
アイスバスに入ると、最初の30秒は「痛い」「出なきゃ」「死んじゃう」 アドレナリン・コルチゾールの働きでFight or Flight 闘争・逃走反応が起こります。しかも相手はアイスバスなので「ここから逃げなきゃ」という逃走反応のみ
c: Brissing Point 祝福点
1分半くらいから、「手先・足先は痛いし、水は冷たいけれど、頭とお腹はまだ大丈夫」という状態になります。
冬でも半袖半ズボンの小学生が、手先・足先はシモヤケだらけなのに寒くてもへっちゃらな状況に似ています。
心理的にも、先ほどまでの気が動転した状態から、悟りの境地のような心の静けさ・内なる平和(Inner Peace)が訪れます。実際に脳波計でも7-8Hzの徐波化したα波が後頭葉に観測されます。
この内なる平和(Inner Peace)は、瞑想実践者が何年もかけて辿り着く深い瞑想状態とほとんど同じと考えられています。
アイスバスなら初めてでもほとんどの人(12例/16例)が、少なくとも脳波・脈拍・筋電図上では深い瞑想状態を示唆する状態を体験できました。
アイスバス・冷水シャワーをストレスに対処するための訓練だと捉えると、毎週末に挑戦するのは苦行になり、週末が来るのが怖くなったりします。本当の目的は、
恐怖心を乗り越え、寒さに適応した後の、内なる平和と多幸感にあります。
3:前向きな作業をコツコツとやる
これはテニスの素振りや、ジョギングのような基礎練習が、基本的な自信を醸成するのに役に立つのを参考にしています。
アイスバスの中で出来る事は限られているので、コツコツと呼吸を繰り返す・マントラを唱えるなどが、それに該当します。
4:まとめ
アイスバス体験とは、冷たいという知覚、恐怖心という情動を俯瞰して捉え、恐怖に飲み込まれないように、一時的な恐怖の感情をいなします。気が動転したり、落ち着いたり、痛かったり、温かく感じたりという心身の変化を味わう体験と言えます。
U理論/オットー・シャーマーはこれが恐怖心以外の多くのことに適応できることを解説してくれています。
Theory U
今回のことわざ
「化け物の正体見たり枯れ尾花」
鶉衣/横井也有
正体が分からないものは、やたらと怖い
One always proclaims the wolf bigger than himself.
オオカミを見た人はいつも大げさに報告する
「逃がした魚は大きい」
The one that got away always seems the biggest.
逃した幸運も高めに評価しがち
「案ずるより産むが易し」
Better to act than worry.
やってみると、恐怖心も逃した幸運もそれほど大きくはなかった