五感すべてをきっちり刺激してきた、藝大卒展2024
日本一の美術の学校、東京藝術大学の大学卒業・修了作品展に行ってきた。
1月28日(日)から2月2日(金)の約1週間の会期で、ちょうど今日終わりを迎えたから、紹介しつつもう行くことはできないのだけど。
藝大の卒展があることを知ったのは、SNSにたまたま「藝大の卒展に行ってきた」という投稿が流れてきて、ビビビッと「これは行きたい!」と思った。2024年になってからの私は写真展に行ったり、好きな歌人さんの個展に行ったり、なかなか良い文化的活動をしていて、その延長線上で「これは文化的活動以外のナニモノでもない!行きたい!」と瞬時に思ったのだった。
当日、上野駅から歩いて10分ほどで大学美術館に到着。パンフレットなどはなく、会場案内はQRコードを読み取ってサイトで見るというハイテクぷり。
読み取ったことでわかったのだけど、作品が展示されている会場は、最初に到着した大学美術館、大学構内にあるアトリエや屋外スペース、さらにはお隣にある東京都美術館までととにかく広くて、そこここに作品が場所を喰いあうようにして展示されていた。
日本画、油画、彫刻、工芸、デザイン、建築、先端芸術表現、美術教育、文化地在学、グローバルアートプラクティスの10のカテゴリーがあったことを、今調べて知った。すごいな。
そのすべては限られた時間と、広すぎる会場に惑わされて見れなかったけれど、それでも、どれもほんとうにすごかった。
究極の「好き」が形になってそこにあって、「情熱」が空間なのか私自身なのか何かをじわじわと侵食していた。
少し前に、二宮敦人さんが藝大生に取材をして書かれたというノンフィクション「最後の秘境 東京藝大~天才たちのカオスな日常~」を読んでいたからか、見るもの触るもの嗅ぐもの聞くもの、すべてが五感をちゃんと刺激していたのが最高だった。
二宮敦人さんの奥様は藝大生で、本の中には奥様がありとあらゆるものを買うのでなく、あるものから造ろうとする姿がいくつか書かれている。
それがよくわかる。
私たちがふだん当たり前に目にしているもの、だけど見過ごしているもの、転がっているもの、踏みつけているもの、あるとわかっているだけで認識はしていないもの、そういうもの。
作品を見ていて思ったことがある。
“ 命を作っている “ ということ。光、音、時間、記憶、旅、繋がり、野菜、魚、風景、天気、色……ありとあらゆるものに、命を作る。
いや、“ 作る ” ももちろんそうなんだけど、“ 命がある ” のが近いかもしれない。自分の個性に宿る命、認知症になってしまった祖父の日記に宿る命、自分の心の奥底にある惑星に宿る命、家族のようなコミュニティに宿る命、旅の記憶に宿る命、なまはげに宿る命……あらゆるものに命を見る。
藝大生たちが丁寧に救いあげ、形に成し、言葉を添えてくれた命の在処を見たような気がした。受信してくれた命を、発信してくれている感覚。
わかりきれるわけじゃないのに、わかるようになりたいと思わせる衝動。
行けてよかった!