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あとから甘くなる、「角砂糖」という企画

大学生のとき、サークルで仲の良い女子数十人で今でいうエアビーを借りて巨大お泊り会をしたことがある。

Airbnb(エアビーアンドビー)は、通称エアビーと呼ばれ、世界191カ国以上で利用されている民泊サービスのことです。エアビーにおいて宿泊者は「ゲスト」、運営側は「ホスト」と呼ばれます。空いている部屋や使っていない家を貸して収入源にしたいホストと、ホテルではなく民泊を利用したいというゲストのニーズをマッチングさせるサービスです。

素敵な女の子たちが十数人集まったらそれはもう、それだけで素敵な素敵なことなんですよ。お喋りする内容はなぜか全く尽きないし、時計が壊れたかのように時間がぐるぐるぐると過ぎていく。

甘く、楽しく、そして、とてつもなく儚い幸せな空間。

数人の小さなグループで話していたかと思えば、全員が輪になって大きな話をする。

「好きってどういう瞬間にそう思うのか」という、果てのない恋の話。
「将来はどんな人と結婚し、どんなふうに暮らしたいか」という、明るすぎて見えもしない将来の話。
「今、1億円が手に入ったら」という、叶いもしない欲望の話。

私たちは、一瞬にしてどこへでもいけるし、どんな話にも接続できる。それが女の子。


会話の終盤、「ちょっとしたいことがあるんだけど」と言い出したのは私だ。

私は今日、こんな素敵な彼女たちのために、とある企画を用意していた。

それは、「キュービックシュガー」という名前をしている。

キュービックシュガー、角砂糖。

もう名前だけで素敵じゃないと思うのだけど、我ながら内容も素敵なのだ。

必要なのはペンと、真っ白の正方形のメモ用紙。文字が書ければ裏紙でもなんでもいいのだけれど、その紙こそが角砂糖になる。

「その紙に、あみだくじで決まった相手のいいところを3つ書いてほしいの。時間は、5分ぐらいでいいかな」

そうして、あみだくじアプリでいる人の半分の子の名前を上に設定し、もう半分の子の名前を下側に設定した。

「じゃあ、スタート!」アプリの中でピコピコと音がして、くじをたどっていく。川に流す笹舟を思い出していた。下に下がり、横に曲がり、だんだんとゴールに近づいていく。

「できた! AちゃんとCちゃんがペアで、BちゃんとEちゃんがペア。DちゃんはFちゃんとで」そう言ってどんどんペアを発表する。

「よし! じゃあ、発表し終わったから今から5分測るね!」

タイマーを設定すると、みんながメモ用紙にペンを走らせた。


沈黙の5分間。

けれど、幸せの5分間だったと私は思う。たった一人のことを考え、ときどき相手に目をやる。「ちょっと何見てるの」と、くすくす笑いがさざ波のように伝染する。「いや、いいところありすぎて書けないんだよね」くすくすくすくす。


ピピピ。

5分経過のタイマーがなる。

「書けた? じゃあその紙を相手と交換して」

沈黙が終わり、ざわざわとみんなが交換を始める。

「えーちょっと何これ! 嬉しんだけど!」「あ~こんなところ見ててくれたんだ」「……意外、こんなにバレてると思わなかった」「めっちゃ、ありがとう」「うん、こちらこそありがとう」

ひとしきり、きゃあきゃあとしたあと、みんなが一斉に私を見た。

「なんでこれしたの?」

「なんか、少しでもみんなの思い出になるようなことをしたくて。その3つのいいところは、きっと他の人も思っていることだろうし、もしこれから、自分のことがわからなくなったり、嫌だなあって思うことがあったらこれを見てみて。

これが角砂糖みたいに、みんなの心を甘くしてくれるはず」

そう言って私は、女の子を落とすかのような笑顔で笑った。一番最後が決め文句だった。

「ええ~!!」「素敵すぎる」「めっちゃ嬉しんだけど!」「ありがとう」「ありがとう」「ありがとう」。


ぜひ、みなさんもやってみてね。

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たなべ
”終わりよければすべてよし” になれましたか?もし、そうだったら嬉しいなあ。あなたの1日を彩れたサポートは、私の1日を鮮やかにできるよう、大好きな本に使わせていただければと思います。