
大学卒業間近に開けたピアス
ピアスを開けたのは、大学4年生。それも卒業まであと数ヶ月ぐらいの最後の最後のことだった。
もともと「開けたいんだよね~」と言い続けて2年が経っていた。大学生になるのを機にピアスを開けた友達が多く、一緒にイオンモールに行ったときにアクセサリーショップでピアスの棚を見ている友達は大人に見えた。
年を追うごとにイヤリングにも人権が与えられ、可愛いデザインが増えていた。ただ、私が見ていたイオンモールのアクセサリーショップはピアス至上主義だった。
「あ、これ可愛い」ピアスだった。
「ピアスか~、仕方ない。……あ、こっちも可愛い」ピアスだった。
「……くそう。こっちはどうだ!」ピアスだった。
ピアス、ピアス、ピアス。可愛いと思ったデザインはどれもピアスだった。
悲しかった。イヤリングには人権がないこともだし、勇気がなくてピアスを開けられなかった私にも悲しくなった。友達が意気揚々とピアスを買っていくさまを隣で見ていることも悲しかった。
それから「開けたい、開けたい」とだけのたまう数年を過ごし、最終的に卒業間近にして、ピアスの大先輩であった妹にピアッサーをしてもらった。
太すぎるピアッサーの先端を見たときに戦慄した。
「え、もしかして今からそれを……ぶっ刺す感じ?」
「ぶっ刺す感じ」妹が言う。
「……穴、開ける感じ?」
「穴、開ける感じ」妹が答える。
「……いやいやいや!!! 無理!! 太すぎる!!」
「無理じゃない。太くない。開けよう」太くないわけあるか~!!
ヒイヒイと実家を逃げ回り、最後、妹に見放されたように「じゃあ、辞めれば?」と言われて、今更それはできないと思った。私はそれなりにちゃんと覚悟を決めてきたはずなのだ。今開けなければ、きっとこれからも開けられないだろう。
結局耳鼻科に行ったとしもピアッサーで開けることになる、とお母さんから聞いていた私は、それなら家でしたほうが安上がりだ、と思ってピアッサーも用意したのだ。
うん。今しかない。
「ごめん、取り乱した。開けるよ」
「OK」
「いち、にの、さん、バチンでいこう」
「OK」
「……頼んだ」
「じゃあ行くよ?
いち……にの」
バチィ~~~ン!!!!
信じらなかった。ツーカウント目で私の耳に穴は開けられたのだった。
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