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席替えが一大イベントだったころ

私が通っていた小学校は全校生徒200人弱、田舎の小さな小学校だった。クラスは1つしかなくて、6年間ずっと同じ30人の同級生と過ごしていた。メンバーが変わることのない、小さな箱。ときどき外から転校生がやってくることはあるものの、顔ぶれはほとんど変わらない。当時は、クラス全員の誕生日も覚えていた気がする。

クラス替えがないからこそ、席替えは一大イベントだった。

小学生のときは男女で机をくっつけてペアで座っていた。となると女子が座れる席は半数の15席。10人5ペアの列が窓側、中央、廊下側で3列並んでいた。

やっぱり一番嬉しい席はどの列であっても後ろ側で、なかでもベストは窓側の一番後ろ。ぼーっと窓から見える富士山を眺めてもいいし、グラウンドが見渡せるから他学年の体育の授業を見てもいい。実はここだけの話、学校で過ごす時間のほとんどは国語、算数、理科、社会などなど頭を使わなければならず、つまらな……ゴホンゴホン、授業ばかりだ。

席に座っている時間が一番長いからこそ、大事なのは暇つぶし。そして、いかに爽やかに、心地よく授業の時間を過ごせるか。

まるでミュージックビデオのように、ふわっと吹く風でおもむろに窓の外を眺めたり、太陽差し込む光の中でなびくカーテンを眺めたり、教育実習に来た若い先生が黒板に文字を書く姿を眺めたり。教室の後ろからいろんなものを眺め尽くしで、ポエマーになりがちな時期に非常にぴったりの場所だといえる。

一方で、ワーストはどこであったとしても一番前の席。理由は、授業を真面目に聞かないといけないから。以上。すべてが丸見えの席ともいえる。眺められるのは黒板と先生の背中だけ。ちょーっとだけ眠ることもできない。私は小学生のときから睡眠学習をとりいれていたから、非常にはずれの席だったと言える。


中学生、高校生になるにつれて、男女ペアの席はいつの間にか終わりを迎え、当たる席数は30席ほどに拡張された。

とはいえ、後ろの席がベストで、前の席がワーストであることに変わりはないのだけど。

”終わりよければすべてよし” になれましたか?もし、そうだったら嬉しいなあ。あなたの1日を彩れたサポートは、私の1日を鮮やかにできるよう、大好きな本に使わせていただければと思います。