HY「366日」を聞くたびに思うこと
沖縄のバンド、HYの「366日」を聞くたびに思うことがある。
「366日」といえば、当時むちゃくちゃはまっていたケータイ小説「赤い糸」の映画の主題歌だったことが懐かしい。
ガラパゴスケータイを使い、一般の人が書いていた恋愛小説、ケータイ小説。ケータイ小説をアップするサイト「魔法の図書館」って響きだけで軽くご飯5飯おかわりできちゃうんだけど。あと、「モバスペ」もあったな、そういえば。懐か死。
で、私はケータイ小説に酔心していて、金字塔といわれている「恋空」は書籍も買ったし、映画も見たし、ドラマだってチェックした。
確か、そんな「恋空」に続くようにしてブームになったのが「赤い糸」だった。映画では、主人公の芽衣役を南沢奈央さん、敦史(あっくん)役を溝端淳平さんが演じている。
高校生の恋愛にしては、自殺、記憶喪失、ドラッグ、暴力、両親の離婚等々ヘビーの大コンボを起こしてるような映画なので、気になる人はぜひチェックしてみてね。
で、話がだいぶ逸れてしまったのだけど、その主題歌が「366日」。この曲でHYを知った人も多いんじゃないかなと思うし、今でも失恋したら聴きたくなる曲で上位を争うと思う。
この「366日」の制作秘話として有名なのが、作詞作曲を担当したHYのキーボード担当、仲宗根泉さんが当時付き合っていた彼氏と実際に別れたという話。
そもそも「366日」を制作するきっかけとなったのは、彼女のもとに届く、悲恋や失恋の想いを綴ったファンからのたくさんの手紙だった。そんなファンたちの気持ちを乗せた曲を作るために、彼女は彼氏と別れたのだという。
そして出来上がったのが「366日」だった。
むかし、この話を聞いたとき、私は「え~……やば。まじで彼氏と別れたんかい」と思っていた。たった1曲作るためだけに、自分はもちろん、さらには彼氏も犠牲に、お互いを傷つけてまて曲を作るなんて、と。
でも今、私はライターとして、クリエイターの端くれとして、こうも思うのだ。
たった1曲作るために、その曲に温度感のあるリアルな想いをのせるためだけの狂気と制作意欲は恐れ多い、と。実体験を伴った生身の感情ほど、作ったものに触感が宿ることはない。たとえ、自分を傷つけて、周りを傷つけたとしてもそれをやってのける彼女の制作魂は、私には想像もつかない。
自分が似たような立場になることでわかること、変わる目線。さっき書いた「むかし」から、私は少しだけでも成長できたんだろうか。