今の季節に飲むココアは季節外れでしょうか?
季節外れのものってちょっと惹かれませんか。私はまんまと惹かれるんですよ。
例えば、冬にこたつで食べるアイス。この背徳感は、誰もが一度は味わってほしいぐらい、背徳感に満ち満ちている。よく考えたら、寒いからあったかいこたつに入ってるわけで、つまりあったまりたいわけで。だから、寒くなるアイスなんか食べなくていい、食べない方がいいんだけど、だからこそ食べるというか。温まりながら、同時に体を冷やしていく。このぞわぞわ感がたまらない。いけないことを頭でわかりながら、こたつで食べるアイスはどうしてこうも美味しいんだろう。冷たいのに、あったかい。冷たいから、あったかい。
例えば、夏に食べるキムチ鍋。なんで暑くなりにいくんだって感じだけど、でも、あれが美味い。ばたばたと汗を垂れ零しながら食べる。はふはふと食べる。夏の空気がべったりとくっついた身体を、汗でまたべたべたに汚す。体中が暑くて暑くてたまらないのに、それが美味い。汗のしょっぱさなのか、食べ物のしょっぱさなのかだんだんわからなくなってくる。
今、私は温かいココアをお供にこれを書いているんだけど、これは季節外れなのだろうか。私は季節外れだ、と思ったからこれを書き始めたんだけど、どうでしょう?
でも、ココアと言えば、甘さを引き立てるために塩を入れたほうがいいと聞いたことがある。甘くするためにしょっぱくする。甘味と塩味。季節外れ、とは違うけど、こたつアイスと夏キムチ鍋と似てるものがある。
最近は、天気がサムとダンを交互に繰り返してて、今日はダンの日だった。(友達が春の日を外国人のように言ってたこの言い方が気に入っている)
私は今、基本、というかほとんどリモートで仕事をしているので、家にいるといつもダンだ。南向きの部屋だから陽光がずーっと入っている。窓越しに見る外の空気はさらりと暖かそう。でも、空気の入れ替えをしようとちょっと窓を開けるとびゅうびゅうと寒い。見てる景色と、リアルな肌触りは違うことを思い知る。ネットショッピングを思い出す。
大学生の頃、季節外れの恰好をしているバンドマンをめちゃくちゃかっこいいと思っていた。真夏のフェス。ステージ上で、もうそれ以上は下がらないよってぐらいベルトを伸ばしたベースを肩から引っ提げて、真っ黒の長袖シャツを着てる人に恋をしていた。
炎天下で太陽が隣にあるんじゃないかってぐらい暑い気温の中、真っ黒の長袖シャツ。傍から見れば、「熱中症になっちゃうよ」と思われるだろう。でもそのときの私は頭に太陽を飼っていたのか「季節外れ……かっこいい……」ぽやん、とほっぺをピンクに染めていた。ただでさえ暑い、いや、熱い屋外で、自らをまた灼熱に導くその姿はギリシャ神話の太陽神アポロンを彷彿とさせた。私たちを、今よりももっと熱い、地獄窯にまで颯爽と導いてくれそうな感じがしていた。
だから、KANA-BOONのボーカル谷口鮪さんがこの姿で登場した時、「ああ、やっぱり普通に暑いよね」と余計に夏を感じたのだった。