見出し画像

正しいだの間違いだのと、思考の蟻地獄に陥っていませんか?

東洋経済オンライン連載「ソロモンの時代」更新です!

今回のテーマは、「東京の蟻地獄化」についてです。

江戸時代の江戸は、地方からの出稼ぎ男性の集中化で男余り現象が起き、結果として男の有配偶率が極端に低下、結婚もせずそのまま江戸で死んでいくという状況が生まれました。

それは、「江戸の蟻地獄」と呼ばれています。

一方現代、若い層を中心に東京への人口集中が深刻化しています。働く女性にとって東京は、「東京砂漠」どころか、未婚化への道を突き進む「東京蟻地獄」になりつつある、という話を書きました。

勿論低収入未婚男にとっても同様ですが、記事内に掲載した年収別未婚率の散布図が非常にわかりやすい(ある意味、美しい)ので、ぜひご覧ください。

ただ、だからといって別に女性は働くべきじゃないとも思わないし、そもそも結婚なんかしなくたっていいというスタンスなんですけどね、どうもコメント欄とか見ると、勘違いしている人が多いようです(もしくは、読解力がないのか、はたまた、単に簿が嫌われているだけなのかwww)。

あと「高所得女性が男性的規範に縛られがち」という話をすると、決まって「そんなことはない! 」「間違っている! 」とヒステリックに騒ぎだてる人もいるんですが、男性的規範というのは性差のことを述べているのではなく、誰しもが心の中に内在している「父性原理」(河合隼雄氏による)のことを言っています。

「父性原理」とは、主体と客体、善と悪、上と下など物事や事象を分断して判断しようとする性質のことです。一方で「母性原理」とは、分断はせずにすべてを包摂してとらえようとする性質です。

たなみに、前者はデジタルで、後者はアナログだ、という風に感がる人は父性原理の人です。

往々にして、父性原理は男性に多いと言われますが、男性=父性原理100%ではなく、父性と母性をあわせもっています。それは女性も同じです。

いわゆる「男らしさ規範」というものがあります。男は弱音を吐いてはいけない、とか、男は強くあるべきだ、みたいなもの。一方で、「女らしさ規範」というものもありますね。おしとやかにする、とかいろいろ。

これ、規範というものによって縛られることはすべて父性原理になります。女らしさという規範に従って、「女はこうあるべき」みたいな生き方をしている女性は、立ち居振る舞いがどんなに女性的であっても父性原理の構成比が高い人です。

規範というものは、まさに「正しい」と「間違い」を明確に分断するものですから。

何が言いたいかというと、「高所得女性が男性的規範に縛られがち」という話をすると、決まって「そんなことはない! 」「間違っている! 」とヒステリックに騒ぎだてる人とは、まさに「正しい」と「間違い」を明確に分断ちたがる人であり、父性原理そのものなんです。便宜上、男性的規範としましたが、規範はすべて男性的(父性原理)なものであって、こうした記事だけではなく、「男がー」「女がー」とか二項対立論で、常に正しい・間違いを論じている人は、すべて父性原理の人たち。

言い換えると、西洋的論理観の強い人たちです。

中国とか韓国のような儒教的規範が強い国は別として、東アジアの諸国はどちらかというと母性原理の人たちです。日本人も元来は(明治維新までは)そうでした。

母性原理によれば、正しい・間違いという二元論にはせず、こっちも正しいし、あっちも正しい、という中空という間をとろうとします。日本人のファジーさとはまさに母性原理に基づくものだったりします。

それは住居にも表れます。西洋ではしっかりと壁で仕切り、「室」というもので空間を分断します。しかし、日本の場合は、障子や襖というとても仕切りとは言えないようなもので、「間」を作ります。分断せずに、その中に新たな空間を生み出します。それが母性原理的思考です。

「女性が男性的思考をする」とかいう(ごく当たり前の話。女性だからといって女性的思考しかしないわけがない)のを極端に嫌悪する女性がいるんですが、その嫌悪の大元というのが、その人自身の男性的思考(父性原理に基づく分断的論理志向)なんですよ。

今回の記事も、高収入女性の生涯未婚者が東京に集中しているという事実をありのままにお伝えしただけであり、結婚がいいとか悪いとか、そういう話じゃないのに、「結婚しなくても何が悪い! 」とか「結婚しないと人間失格だ! 」とか、いちいち善悪に分けようとしてしまう脳そのものが「男」っぽいし、それこそ「思考の蟻地獄に陥ってる」と思います。

こういうこと書くと、また炎上しますけど。

SNS上で、「正しい」だの「間違い」だのがなりたててる暇があるんなら、一度「古事記」を読んで、日本人の原点でもある「母性原理」に触れてみてはいかがでしょうか?

日本は母性によって成り立っている民族なんです。

いいなと思ったら応援しよう!

荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。