「未婚vs既婚」「子なしvs子あり」等の二項対立論は不毛
NHK「ごごラジ!」出演終わりました。たくさんのメールやツイートなどをいただけたようで、ありがとうございました。
平日の昼間ネタとしてはヘビーな話題でしたが、誰もが考えていかないといけないテーマだと思います。
番組内でも言ったように、結婚しようがしまいがいつかは誰もがソロに戻るのです。生涯未婚の人も、結婚された方も、子どもがいる方もいない方も、全員がそれぞれの立場で「ソロで生きる」ことを自分事化して、精神的な自立心を鍛えることが、これから生きる上で大事なことだと思います。
言いたくないですが、孤独死してしまう人のほとんどは元既婚者です。配偶者や家族しか頼れない家族唯一依存から脱却してほしいと思います。
ソロで生きる力とは、決して誰にも頼らないということではなく、頼れる依存先を複数用意して、いざとなったら頼っていいんだという安心感を自分の中に作るということです。
未婚の方の不幸度が既婚者に比べて高いのは事実です。国際的にも、日本とドイツの独身者の不幸度は飛びぬけて高いのです。それは、結婚していない自分自身を本人が認められないという自己肯定感の問題なんです。
自己肯定感は自分一人では作れません。だからこそ、人とつながることが大切です。これは決して友達を作るということではありません。人とつながることで生まれるのは、自分の中の新しい自分自身です。
人とつながった分だけ、自分の中の多様性が活性化します。Aさんとつながれば、Aさんによって何かしら影響を受けた自分が生成されるのです。それは、Aさんの中にもあなたによって生まれた新しい自分ができます。
それこそがお互い様なのです。そうしてたくさんの人とつながれば、自分の中にたくさんの自分が生まれ、それが内面に安心感を作ります。自分の中に安心できるコミュニティが生まれるのです。接続するコミュニティとはそういうことです。
残念ながら、「未婚化・少子化」という問題に対して、一般の人でさえ、どこぞのクソ政治家のように「子どもを産み育てない自分勝手なことは許されない」という非常に不適切な発言をされる方が多い。
そうした言葉は、未婚者や子に恵まれない方にとって、心をナイフでえぐるような凶器なのだと理解してください。暴力なのだと自覚してください。
何度も同じことを言っていますが、未婚既婚に関わらず、すべての大人はすべての子どもを支える責任があります。決して実の親だけがその責任を果たすものだとは考えていません。
超高齢国家となって、現役世代が高齢者を支えるという視点だと、2035年には1人の現役が1人の高齢者を支えないといけなくなります。そんなことは無理なんです。高齢者も含めて、すべての20歳以上の大人が、未成年以下の子どもたちを支えるのだと視点を変えましょう。そうすれば、大人7人で1人の子どもを育てられるんです。両親+5人の他人が協力すればいいのです。もちろん、直接的に育てるということではありません。間接的に、働いて税金を納めて、消費をして経済を回すことだけでも十分なんです。
結婚とか関係なく、我々ひとりひとりに社会的役割があるのです。
それが僕の提唱している「拡張家族」という概念です。
ぜひ誤解のないようお願いします。
今回は最後時間がなくなり、たくさん寄せられていた質問にお答えすることがあまりできませんでした。番組のブログに掲出されているコメントに対して、以下お返事をしました。
ぼちぼちさん(40歳・女性・大分県)
独身の自営業者です。家族以外の周りの人から早く結婚しないのか、などということしか言われません!私は自分で勉強をし、自分でお金を貯めて商売を始めました。日々一生懸命で、充実してて幸せです。しかしながら、周りからはそのような目でしか見られていないことに落ち込みます。
大分ですか。地方ですと、結婚に対するプレッシャーも強いでしょうから、周りの目を気にするなと言っても大変でしょう。けど、ご自分の充実を感じられているのであれば、もうそれでいいのではないでしょうか。自営業ということで、いろんな人とのつながりがこれから増えると思います。人生まだまだ折り返しにも達していないわけですから、たくさんの人とつながって自分自身を活性化していただければと思います。お仕事がんばってください!
白狐さん(男性・51歳・京都府)
今日のお話を聞いて・・・お一人様は決してひとりぼっちになってしまうことではなく、一人の人間として精神的に独立していられる状態。個として確立された人間となること。そうして社会とつながっていけること。どんな選択をしようと、それらが自然に受け入れられるようになれば、ソロハラのようなことにはならないでしょうね。
おっしゃる通りです。言いたいことをご理解いただきありがとうございます。誰がなんと言おうと、これから社会は個人化していきます。それがいいとか悪いとかではなく、そうした環境に適応していくのは、群れとして対応ではなく、個としての適応力です。結婚して子を育てる人はいなくなりませんが、未婚で子無しの人も果たすべき社会的役割はあります。結婚するとかしないとか、子がいるとかいないとか、そういったくだらない二項対立論こそ不毛だと思います。
藍色の猫(44歳・千葉県)
他人とうまく繋がれるからひとりでいられる母がひとりで出かけて旅行先でたくさん友人を作っていたのを思い出します自分にはなかなかできない技です…(汗)
お母さん、すばらしいです。まさにそれこそ「ソロで生きる力」です。
かかしさん(54歳・女性・茨城県)
シングルマザーで子育ても卒業し、名実ともにおひとりサマです。以前はひとりで動くことが多かったのですが、子育てを終えて、一人で旅などするようになり思うに、美味しいものを食べたとき、美しいものをみたときに一人でいることが残念な気がするのです。共感できる誰かと一緒なら楽しいのに、と思ってしまうこの頃。歳のせいでしょうか?
おいしいものを食べた時、きれいなものを見た時、その場に一人だったとしても、今ならネットでそうした「感情の共有」ができます。女性であれば、インスタとかがおすすめです。ネットでつながった人たちとリアルに会うために一人旅をするということもいいと思います。
ソロ婚さん(57歳・女性・東京都)
ソロ充体質の男性と結婚して数十年経ちましたが、結婚生活を振り返ると私自身孤独感を感じる日が多かったですね。人との距離感を居心地の良いように保ってあげられればソロ充も結婚生活も上手くできるかなと思います。
ああ、なるほど。そういう方もいますよね。配偶者や家族だけに唯一依存することなく、広くつながりの視野を広げてみてほしいと思います。まだまだ、新しい人との出会いでどんどん新しい自分自身が作られていくと思います。
うろおぼえさん(60代・女性・東京都)
お一人様で一番不安なのは親の介護です。結婚してしまった姉妹にはそれぞれの家族があり、お一人様が背負う可能性が高まり、実際仕事をやめて一人で面倒をみるという立場に立たされます。お一人様はお気楽というのは大きな間違い。お一人様向け親の介護サービスは是非充実してもらいたい。もちろん、自分自身の介護のためにも。。
家族が家族しか頼れないという現状の「家族自己責任システム」は改善されていくべきだと思います。ひとつだけ言いたいのは、親の介護のために離職されることは、親子共倒れのリスクもあります。仕事はやめずに、介護のアウトソーシングを図ってください。それが結果として、親も自分をも助けることになります。
額田のやすきよさん(男性・73歳・愛知県)
私は妻と2人で仲良く生活していますが寮の自治会みたいにお互いに干渉しないよう気をつけています。食材の買い物も殆ど私が一人で行きます。おまかせソロ充です。
素敵ですね。江戸時代の夫婦も互いに共働きで、別財で、人生を共に歩むパートナーとしての関係性でした。日本人にはその方が向いているはずだと僕は思います。
サウスポーさん(25歳・大阪府)
ソロハラなどでいつも思うのですが「結婚したら?」だのという人は、「人の生き方に口を出してコントロールしようとする権利は自分には無いし、失礼だ」という意識はないのでしょうか。ジェネレーションギャップかなー。
僕は結婚教という言い方をしていますが、彼らは決して悪意ではなく、「結婚はいいもんだ。信じれば救われる」的な思考で言ってくるだけです。そういう人に「私は宗教なんか信じません」と言っても平行線だし、角が立つだけです。「ありがとうございます」とかわしていればいいのでは?
最後に、通常なら難しいテーマにあえて取り組んでいただきましたNHK「ごごラジ! 」のスタッフの皆さんに、心より御礼申し上げます。ありがとうございました。